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詩集⑥

選ばれないって辛いよな

作者: 桜ノ夜月
掲載日:2018/07/27

「選ばれないのが辛いんだ」って、ずっと昔に君はそう言って泣いたね。


選考対象外の人にだけ返却されたポスターを、ぐしゃぐしゃに丸めて、君は声を殺して泣いていた。



ああ僕は、あの頃君が泣いていた気持ちが、痛い程によくわかるよ。



選ばれないって辛いよな。


君がアイデア出しから何からを、とても長い時間をかけて考えて、描いていたのを見ていたよ。


誰よりも真剣に、夜遅くまで描いて、描いて、描いて。「今年こそ」って笑っていたよね。


君のお母さんが君のこと、心配するくらい真剣に描いていて。僕はそんな君が、酷く誇らしかったんだ。


今年こそ君が、って、僕も思ってたんだ。僕は君の絵が、本当に大好きだったから。


でも、選ばれて名前を呼ばれたのは君じゃなくて。


するすると感情を失っていく君を、見ているのが辛かった。


なんで、君じゃなかったんだ、って。今年こそ君が、って、叫び出してしまいたくなった。


あの日、君は本当に落ち込んだ顔をしていて。僕も、「次があるよ」なんて言えなかった。



僕らは、三年生だったから。



一年が経って、君は就職して、僕は美術系列の大学に進学した。



君は本当に毎日忙しそうで、それでも、「楽しい」って笑ったね。



恋人が出来て、仕事もだんだんと覚えてきて、先輩も優しいって。毎日が充実しているって、君はそう笑った。



それが嬉しくて、でも、同じくらいに憎かった。



ねぇ、僕は、あの頃持っていた「何か」を頼りに、ここまで必死に歩いてきたのだけれど。



どうやらその「何か」を自分が持っていることすら、幻想だったみたいだ。



僕の「何か」はきっと、「あの頃」の基準で飛び抜けていただけ。


今回の課題こそ、って思っているけれど。毎回毎回、選ばれずに処分されてしまう。


嗚呼、あの頃の君の気持ちが、本当に痛い程によくわかるよ。


選ばれないって辛いよな。


素敵だって言われないのって辛いよな。


努力したのに、見て貰えないのは辛いよな。



痛い程によくわかるよ。



嗚呼、「何か」が羨ましくて、「持っている誰か」への嫉妬で狂いそうだ。


描いても、描いても、描いても身に付かないのは、やっぱり「才能」だったのかな。


嗚呼、苦しいよ。苦しくて、羨ましくて、おかしくなりそうだ。



こんな気持ちだったんだね。



ねぇ、僕は、僕自身が酷く嫌いになったよ。


酷く嫌いになって、憎くて、そして、失望した。


才能は喉から手が出るほど欲しかったし、描いても描いても選ばれない自分に苛立って、「嗚呼、もう居なくなってしまいたい」って、嫌になるくらいに思ったよ。


君が幸せなことが嬉しいのに、それを聞くのが煩わしいと思ってしまうような、そんな醜い人間になってしまったよ。


嗚呼、もう、苦しくて、羨ましくて、悲しくて、どうしようもないな。



選ばれないって辛いよな。




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