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僕が好きなのは  作者: そると
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ガチャーーー


静まり返る家の玄関から

そーっと忍び足で

自室まで上がる海桜。


部屋に入って電気をつけて

なんだか無性にフワフワした気持ちで

叫びたくなるのを抑えて

ベットに転がっていた

蒼空が誕生日にくれたぬいぐるみを

ぎゅーっと抱きしめる。




海桜「蒼空くん、

ちゃんとお風呂入ったかなー」




チラっと窓を見る。


窓を開ければ

隣の家の蒼空の部屋が見える。


まだ電気は着かない。





海桜「さ、私もお風呂入って寝よー…」





そう呟いた後は

蒼空に抱きしめられた感覚を

思い出しては

一人ニヤニヤとしていた。


















翌朝になって身支度の途中

浮足立つ中で

海桜は燐斗に昨夜

言われた事を思いだした。




海桜「あ‼」




鈴花さんの結婚の話とか

蒼空くんとの突然の寄り道で

すっかり忘れてしまっていたことに

今更気づいて落ちこむ海桜。




海桜「ど、どうしよ〜…

まだ渚ちゃんにも話してないし…

燐ちゃんと普通に会話できるかな…」
















不安にかられながらも

悩んでいても始まらないので

とりあえず準備を勧めて

大学に向かう。


ドキドキしながら電車に揺られて

いつもの改札口を通る。


いつもと違っていたのは

待ち合わせた訳でもないのに

いつも駅の改札口の前にいて

笑顔で迎えてくれていた

燐斗の姿が今日はなかった。





海桜「いる訳ないか…」





と、海桜が改札口の辺りを見渡して

溜め息をついて歩き出す。


それから大学に着いて

廊下を講義室向かって一人歩いていると

後ろから声をかけられる。




渚咲「海桜」





後ろに居たのは渚咲だった。




渚咲「おはよーう。

あれ?燐は今日は一緒じゃないの?」



海桜「う、うん。

いつもは駅で会うんだけど

今日は居なかった〜」




と空元気に答える海桜。





渚咲「そうなの?

あいつが海桜を待ってないなんて

どうしたんだろ?」



海桜「燐ちゃん来てる?」



渚咲「あー、それが…

まだ見てないから

てっきりいつもの海桜待ちなんだと

思ってたんだけど…」



海桜「そう…なんだ」





海桜の表情が少しだけ曇るのを

渚咲は見逃さなかった。





渚咲「何かあった?」





と、海桜の顔を除きこんで

様子を伺う渚咲。





海桜「んー…」





海桜は浮かない顔のままで

渚咲を見つめるだけで

話しても良いものかと悩んでいた。





渚咲「海桜?」



海桜「ごめん…

渚ちゃんに相談したい…

けど話していいかわかんない…」



渚咲「…そっかー。

私はいつでもいいからさ?

海桜の中で話せるかなって

思ったら話なよ(笑)」



海桜「うん…ごめんね?」



渚咲「じゃ、行こ」



海桜「うん」





講義室に行くと珍しく

燐斗が女子に囲まれていた。





渚咲「なんだ、いるんじゃん(笑)……燐‼」





渚咲が声をかけると

燐斗がこっちを見て返事をする。





燐斗「おはよー」





だけど何時もとは違ったのは

そのままこちらには来ずに

周りにいる女の子達と話を続ける燐斗。


そんな燐斗を見て

不機嫌な渚咲。




渚咲「なんのよ、あれは…(怒)」

















それから数時間が経っても

燐斗の周りには女の子が減らず

むしろ増え続けていた。


ブチーーーーーツーツーツー


何度も渚咲が話かけようとしても

周りに女の子が沢山いて上手く行かず

何度LINEをしても既読無視のあげくに

通話を試みるも音信不通の始末。


燐斗も何度も渚咲から

着信があるのを知っていながら

見ないふりをしていた。


さすがに渚咲も

ここまで目の前で

無視を決めこまれると

意地になる。





渚咲「なにあれ。

あーいーつーーーーー‼

燐のくせに、燐のくせに、燐のくせにー‼(怒)」





と、イライラしながら

燐斗に何度も通話をかける渚咲を見て

海桜がオロオロと必死になだめる。





海桜「渚ちゃん…もう大丈夫だから」



渚咲「でも、海桜が落ち込んでるのに…」



海桜「渚ちゃんには…

やっぱり話さないとかなー…

聞いてくれる?」



渚咲「…うん」
















それからカフェテラスに行って

長くて細かい話を全部

吐き出すようにして海桜は話した。


それをひたすら

黙って頷きながら渚咲は聞く。





海桜「………だからね

燐ちゃんは悪くなくて…

あたしが逃げちゃったから…」





泣きそうなのを我慢しているのが

見なくても分かるくらい

声が震えている海桜を

渚咲は抱きしめる。





渚咲「そんな事たろうと思ったけど…」



海桜「あたし、

きっと嫌われちゃったんだよね…

もう友達でいられないのかな?」



渚咲「んー…」





渚咲はそれ以上の言葉を

呑み込むようにしてた。





海桜「ごめんね」





海桜の言葉を聞いた後

渚咲は思い立ったようにして

その場を離れる。





渚咲「海桜、ちょっと待ってて?」



海桜「渚ちゃん?」





渚咲はズカズカと真っ直ぐ歩いていって

燐斗の元へと近づくと

声を張り上げて叫ぶ。





渚咲「無視してんじゃないわよ‼

ばか燐斗‼あんた海桜が好きなんじゃない訳⁉」





大声で渚咲が叫んでも

顔をそらしたままで

目を合わせようとしない燐斗。





その様子を見て

渚咲がわざとらしい大きな溜め息を吐いて

罵る様にして言葉を続ける。





渚咲「見損なったわ…

海桜が好きとか言ってその程度だった訳ね…

あんたに文句は言う権利ないわ…」



燐斗「……………」



渚咲「ここまで言われても

何も言い返さないのね…意気地なし‼(怒)」




それだけ言うと

くるりと方向転換して

燐斗へ背中を向ける渚咲。




燐斗「…言いたい事ばっか…

言ってんじゃねぇーよ…」




渚咲の言葉に絆されたのか

燐斗が握りこぶしを

押さえる様にして立ち上がる。




渚咲「は?」




渚咲が燐斗の言葉に

苛立って振り返ると

燐斗は糸が切れた様に話出す。





燐斗「海桜に聞いたんだろ?

俺はもう海桜にフラレたんだよ‼」



渚咲「だから何よ?」



燐斗「…だから…」



渚咲「それでも…

海桜を無視する理由には

絶対にならないわ‼」





きっぱりと渚咲が

燐斗の言葉を一刀両断する。


そして近づいて行って

唐突に渚咲が手を振り上げたあと

燐斗の頬には真っ赤な

渚咲の手のひらの跡が残る。





燐斗「…………ってぇ…な…」





そして渚咲は燐斗の頬に

そっと手を添えて

真剣な顔つきの後に

優しい笑顔で笑う。


燐斗はその笑顔に

ハッとする。




渚咲「海桜が待ってる」



燐斗「ごめん…」



渚咲「それは、海桜に言うの」



燐斗「うん…」




燐斗は頷くと

真っ直ぐに海桜の方を見つめる。

















渚咲「お待たせ(笑)」




一部始終を見ていた海桜が

渚咲の笑顔をみて安心したのか

床に膝をつくようにして

へたり込む。




燐斗「お…ッと……」





倒れそうになる海桜を

燐斗が支えるようにして

抱きかかえる。





燐斗「海桜、ごめん…」



海桜「私も…ごめん…燐ちゃん…」





燐斗の言葉に

うわーんッと子供みたいに

泣き出す海桜。





燐斗「泣くなって…(汗)」



海桜「う…ぅぅ…ごめ…ぅぅ…」




必死に涙を拭う海桜を

オロオロしながら

燐斗が見つめる。





渚咲「海桜を泣かすなんて

ほんと信じられない‼」





渚咲の追撃。





燐斗「言うなよ…(汗)」



渚咲「まぁ…

仲直りしてくれたならいいけど(笑)」





茶目っ気たっぷりな笑顔で

渚咲が笑った。


それから何だかんだと

ギャーギャー騒ぎながら

いつもの3人に戻っていった。



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