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僕が好きなのは  作者: そると
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それから時間が過ぎて

19:00を過ぎた頃に

渚咲はこの後に

用事があると言うので

海桜は燐斗と一緒に帰る事にした。




渚咲「海桜、本当に大丈夫?」



海桜「うん(笑)」




渚咲は海桜の手を取って

心配そうに見つめる。


そして、キッと燐斗を睨みつけて

念を押す様にして言う。




渚咲「いーい、燐‼

あたしがいないのをいい事に

海桜に手出したら今度こそ

通報してやるからね‼」



燐斗「分かってるよ…(笑)」



と言いながらも

そわそわと浮足だっていて

とても分かっていると言ってるようには

見えない表情をしている燐斗。


大っきな犬みたいで

今にも尻尾と耳が見えそうだと

海桜は燐斗を見て思った。




渚咲「ホントに大丈夫かしら…(汗)

とにかく、海桜は危ないと思ったら電話してね?」



海桜「うん(笑)」



燐斗「しねーよ、ほんとに(汗)」



海桜「渚ちゃん、約束に遅れちゃうよ(笑)」



渚咲「あ、うん‼じゃーね海桜♡」




手を降って渚咲を見送る海桜と

べーっと舌を出して笑う燐斗。




燐斗「じゃ、行くか?」



海桜「うん」




燐斗が先に歩き出す。


いつもは渚咲がいて

2人で歩く事なんてなかったからか

後ろから燐斗をマジマジと見て

何だか少しドキッとした。




海桜「2人で帰るのってはじめてだっけ?」



燐斗「うん、そだね。

いつもは渚咲がうるせぇからな(笑)」




脈略の無い会話をしながら

燐斗の後ろを歩く海桜。




海桜「燐ちゃんて、結構背高いよねー」



燐斗「そう?」



海桜「何か男の人って感じ(笑)」



燐斗「俺は男ですよー海桜さん?(笑)」



海桜「そうなんだけどね(笑)」




クスクスと海桜が笑うと

燐斗の顔がうつ向いて曇る。




燐斗「…………」



海桜「燐ちゃん?」



燐斗「やっぱり俺は、男じゃねぇーのな」




そこには何時もの

おちゃらけた燐斗は居なかった。


その声は妙に

男の子っぽい低い声で

少しだけ怖かった。




海桜「燐…ちゃん?」




何時もとは違う燐斗に戸惑う

海桜の声が震えているのに気がついて

ハッとする燐斗。


慌てて振り返って

くしゃくしゃと海桜の頭を撫でると

顔を隠す様に背中を向ける。




燐斗「……ごめん」




一言だけ言うと

無言でまた歩き出す燐斗。




燐斗「海桜………俺はさ…

アイツの代わりでもいいって思ってたけど

流石に限界かもしんない…

ごめんな…」




と、笑顔を作って

今にも泣き出しそうな声の燐斗。




海桜「燐ちゃんは燐ちゃんだよ?」




海桜の言葉が聞こえているのに

頭では理解していても

言葉は口をついて出てきてしまう。




燐斗「なんでアイツなの?」



海桜「え?」



燐斗「アイツは…他にも女がいるよ?」




燐斗が言う女性(ヒト)には

心当たりがあった。




海桜「えっと…もしかして…鈴花さんの事?」



燐斗「…知ってたんだな」



海桜「お花見の時にね、会ったから…」




あの時の光景を思い出して

表情が沈む海桜。




燐斗「あの花見の後も

2人で夜中に会ってたのも…知ってる?」



海桜「あ…そう…なんだ…」




海桜の目尻に

涙が浮かぶのが見える。


だけど燐斗は

海桜を真っ直ぐに見直して

話し続けた。




燐斗「たまたまコンビニの帰りに

バッタリって感じで2人に会ったけど

蒼空さん家の方向じゃなかったし

鈴花さんの家まで行ったみたいだったよ?」



海桜「へ…へぇ…そうなんだ…ね…」




と、振り絞るような声で

涙を堪えながらも

必死に笑おうとする海桜を見て

自分の言動に嫌気が指すのに

気持ちを抑えられない自分がいる。


いつもの冷静な自分でいられたら

こんなバカな真似はせずに

おちゃらけて笑えたのだろうか?と

自分に問いかけるのも虚しく

言葉は止まらない。




燐斗「俺にしとけよ…」



海桜「…………」




海桜は困っているのか

口をキュッとつぐんで

何も答えない。




燐斗「俺は海桜だけが好きだよ?」




こんな事言っても

きっと海桜は蒼空の事が好きだと

頭では分かっていた。


それでも今伝えなければ

この恋は始まらないままで

終わってしまうと悟っていた。




燐斗「ごめんな、勝手だよな?

でも俺は海桜の事は本気だからさ…

やっぱり男として見てほしい…

返事は今じゃなくてもいいから

俺が居ること忘れないで?」




燐斗が言う。


海桜は戸惑いを隠せないまま

その空気に耐えられなくて

明らかに嘘だと分かる嘘をついた。




海桜「り、燐ちゃん‼

………ごめん、

私、コンビニ寄って行かなきゃ‼」



燐斗「海桜‼」




呼び止める燐斗の言葉を

遮るようにして

その場を慌てて逃げ出す海桜。




海桜「また明日ね‼燐ちゃん‼…」




と、走り出す海桜を

強引に追いかける事はできたけど

それ以上足が動かなかった。




















タッタッタッタッタ…………

全速力で走る海桜。




(海桜「燐ちゃん…なんであんな…」)




走っている途中は無我夢中で

方向も何も気にしていなかった。


曲がり角を曲がった所で

一度止まり

上がっている息を整える海桜。




海桜「…ハァ…ハァ…ハァ………」




そこで誰かに声をかけられる。




鈴花「海桜…さん?」



海桜「え?………ハァ…ハァ…ハァ

…鈴花さん…」




顔を上げると

鈴花が目の前で

心配な顔をしていた。




鈴花「何かあったの?警察呼ぶ?」




夜も遅い時間帯だと言う事もあるし

息も絶え絶えになる程に焦って

走っていた様に見えたので

鈴花は周りを見渡して

怪しい人物が居ないかと目を凝らす。




海桜「大丈夫です」



鈴花「本当?別に遠慮しなくていいのよ?

蒼空にも連絡してあげるし‼」



海桜「あ!や!本当に、大丈夫…です。

ただ、友達と喧嘩しちゃって…

それで…誤魔化すみたいにして

逃げて来ちゃった…って言うか…」




その言葉を聞いて

安堵の表情を浮かべる鈴花。




鈴花「そう?それなら良いんだけど…」



海桜「はい!」




と、笑顔を作った海桜だけど

さっき燐斗から聞いた事を思い出して

本当は今この人に1番会いたくなかったと

思っていた。




鈴花「ところで海桜さんのお家って

蒼空の家と同じ方向よね?」



海桜「隣なので…そうですね?」




初めはピンと来なかったけど

辺りを見渡して気づく。




海桜「え…?…ここ何処?(汗)」



鈴花「やっぱり(笑)」



海桜「完全に迷子ですね…アハハハ(汗)」




苦笑いの海桜。




鈴花「ここ、家の近くなの。

終電も終わってるし、ちょっと来て?」




スタスタと歩き出す鈴花。




鈴花「こっち(笑)」




と、手招きされて

海桜は仕方なく鈴花の後に続く。


大通りまで出て

綺麗なマンションにたどり着くと

オートロックのキーを解除して

手なれた手つきで扉を開ける。




鈴花「ちょっと待ってて?」




部屋の前に着くと

扉をそーっと開けて

中の様子を伺う。




鈴花「ただいまー?

ごめんなさい。ちょっと人を上げてもいい?」



??「ん?誰?蒼空?」



鈴花「蒼空の幼馴染みちゃん(笑)」




誰かと会話している様子で

相手は野太い声の男性だった。


何となく気になって

耳をそばだてていると

蒼空の名前が出た。




??「え、なんで?

めっちゃ気になるんだけどー(笑)」



鈴花「まぁ後でね。

海桜さん入ってきていいわよ?」




急に声がかかってドキッとして

思わず声が上ずる海桜。




海桜「は!はぃい‼(驚)」



鈴花「海桜さん、紹介するわ。

俊輝(シュンキ)よ」



海桜「お邪魔しまーす…」




リビングに入ると

中性的で優しそうな短髪の黒髪の男の人が

ソファーの上で缶ビールを片手に持って

あぐらをかいて笑っていた。




俊輝「あ、どもー。

コレが噂に名高い

蒼空の幼馴染みの海桜ちゃんかー♡

おいでー♡♡」




と、手招きをされて少し近づくと

俊輝は海桜をグイッと引っ張って

自分の膝元に座らせた。



海桜「え?」



鈴花「もーちょっと‼俊輝‼

海桜さんに手出したら

蒼空に殺されるわよ?(笑)」



俊輝「いやー♡

だって小さいよ⁉蒼空のだよ⁉

触り心地とか色々知りたいじゃん‼」




お酒のせいか

少し興奮気味で

俊輝は上機嫌だった。




俊輝「ねーねー?

蒼空っていつも海桜ちゃんの前だとどんな?

やっぱオタク?」



海桜「えーっとぉ…」




聞きなれない

[オタク]と言うワードに

驚きながら俊輝の質問の嵐に

戸惑っている海桜。




鈴花「海桜さん?

蒼空に連絡しといたから

もうすぐ来ると思うわ(笑)」



俊輝「え⁉蒼空来るの⁉♡♡」




蒼空が来ると言うワードが出た瞬間に

俊輝のテンションがもっと上がる。




俊輝「蒼空がくる〜♪蒼空がくる〜♪

あ‼やばい‼蒼空が来るならおめかししなくちゃ‼」



と、小躍りしながら喜ぶ

上機嫌な俊輝のその様子を見て

驚きを隠せないでいると

見兼ねた鈴花が

海桜に声をかける。




鈴花「ごめんね?騒がしくて(笑)」



海桜「いえ、別に…」



鈴花「ふふふ(笑)

あ、ちなみにだけど俊輝とは

もう同棲してなんだかんだ…

10年かな(笑)」



海桜「え....⁉」



鈴花「蒼空は優しいからさ…

俊輝と喧嘩する度に別れてやるーッて

大学時代から言って悩んで泣く度に

側に居てくれたの。

だから勘違いって言うか…

それで告白したんだけど

完全に玉砕だったんだー(笑)」




思い出として

鈴花は笑って話す。




鈴花「実はこの間のお花見の時もね。

実は俊輝に海外に転勤になるって言われて

ついつい不安になっちゃってて…

でも蒼空とは告白して以来

そのまま何となく疎遠みたいになっちゃってて

でもあそこで偶然蒼空を見かけて

ついつい声をかけたら

やっぱり蒼空は優しくて

また勘違いしちゃってさー(笑)

でも、もう大丈夫たから‼」




と、笑う鈴花。




鈴花「実はあたしね、プロポーズしたの(笑)」



海桜「え‼」



鈴花「来月からイタリアで生活(笑)」



海桜「じゃ、じゃあ‼」



鈴花「そう。

まだ蒼空には言ってないんだけど(笑)

結婚します♡」



海桜「えええええええ!?」




と、思わず海桜が大声で叫ぶ。




俊輝「ん?なんだ?なんだ?」




ヒョコッと顔を出す俊輝。




海桜「おめでとう御座います‼(笑)」



俊輝「うん?ありがとう(笑)」




なんでお祝いの言葉を言われたのか

分かっていたのか聞こえていたのか

それは分からないけど

素直に受け止める俊輝の笑顔と一緒に

ぎゅーっと俊輝に抱きしめられる。




海桜「わー‼俊輝さん⁉(笑)」



鈴花「蒼空にはまだ内緒よ?(笑)」



海桜「はい!(笑)」




さっきまで勘ぐって

嫌な想像ばかりしていたのに

自分は本当に単純で

もう自分の事みたいに

鈴花の結婚を喜んでいる海桜。


そこへインターホンが鳴る。


ーーーーピンポーン♪♫




鈴花「はーい。鍵は開いてるから入って?」




と、すぐにオートロックの解除をして

部屋の鍵を開ける鈴花。


数分後に

すぐに部屋のドアが開いたのと同時に

蒼空の慌てた声が鼓膜に響く。




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