04
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徒歩で数分の場所だった。
入り口を抜けてすぐに
赤いベンチがある場所に
うつ向いて座る鈴花の姿。
蒼空「…鈴花」
声をかけると
すぐに顔を上げて
満面の笑みを浮かべて
立ち上がる鈴花。
鈴花「蒼空ぁ…」
蒼空「どうした?」
鈴花「う"ーーーー…」
顔を見た瞬間に駆け寄ると
蒼空の着ている服の胸元を掴んで
子供みたいに泣きじゃくる鈴花。
蒼空「お前、相変わらずそうやって泣くのな(笑)」
そんな鈴花の姿を
懐かしそうに見て笑う蒼空。
鈴花「うぅ"ーーーーぐっ…うぅ……」
蒼空「ほら、俺の胸で泣いていーから
服引っ張んな」
と、蒼空から鈴花を優しく抱き寄せる。
鈴花「…うぅ…ぐすっ……う"ーっ…」
蒼空「昔もこんなんばっかだったな」
泣きじゃくる鈴花を見て
大学時代の思い出がふと蘇ってくる。
蒼空「よしよし(笑)」
鈴花「子供…あつかいしないで…」
蒼空「してない(笑)」
すっかり、
大学生に戻ったような
そんな感覚の中で
思い出話に花が咲く。
蒼空「そう言えば前にさ、
こうやって夜中に呼び出されて
お前待ってるって言ったくせに
どこにも居なくてさー(笑)
すっげぇ探した事あったっけなー(笑)」
鈴花「それは、蒼空が違う公園に行っちゃって
全然来なかったからでしょ‼」
蒼空「そうだっけ?(笑)」
鈴花「う"…ぐず…っそうよ‼
それで迎えに行こうとして
でも途中で家知らない事に
気づいたんだもん…」
蒼空「そう言う所は、抜けてるよな(笑)」
鈴花「うるさい」
蒼空「まぁ、そう言うとこ
嫌いじゃなかったけどな(笑)」
鈴花「ふふ(笑)」
蒼空「ってか、涙、止まったな」
鈴花「あ、ほんとだ」
いつもそうだった。
蒼空と話してると
いつの間にか笑っていて
なんで泣いてたのか思うくらい
スッキリできてる。
蒼空「帰るか?」
頭をくしゃくしゃと撫でて
優しく笑う。
蒼空はいつもこうやって
突然呼び出されて
鈴花が泣いてても
自分から口を開くまで
理由も聞かずにただ側にいた。
鈴花が笑うまで。
鈴花「……あと、1分だけ………」
と、抱きつく鈴花。
蒼空「仕方ないな(笑)」
鈴花が見上げると
またくしゃっとした笑顔で
蒼空が笑う。
なぜだか昔から
この笑顔を見るだけで
凄く安心できた。
鈴花「あたし、蒼空が好きよ」
蒼空「…うん」
鈴花「蒼空は、あたしが嫌い?」
蒼空「ハハハ、そう言う言い方は
選択肢がないだろ(笑)?」
鈴花「そうよ?あたしは、ずるいの。
選択肢なんか与えないわ…」
蒼空にも
伝わるくらい緊張してるのか
鈴花の体温がすごく熱い。
蒼空「まーったく、お前は(笑)」
鈴花「ねぇ、蒼空」
蒼空「ん?」
お互いに向かい合って
目と目があった瞬間に
鈴花の唇から漏れた濡れた吐息と
緊張でドキドキと胸が高鳴って
上がった体温が蒼空へ近づく。
蒼空「こらー(笑)」
冷静に鈴花の唇を両手で塞いで
ストップをかける蒼空。
鈴花「ダメ?」
蒼空「ダメに決まってるでしょー」
と、蒼空から一喝される。
蒼空「お前は、俺なんか
好きにならないでしょー(笑)」
鈴花「あたしは昔から…っ‼」
蒼空「し。好きじゃないよ(笑)」
無理矢理押さえ込むみたいにして
鈴花の言葉を遮って
その体温を振りほどくと
背中を向けて歩き出す蒼空。
蒼空「行くぞ」
その態度で痛いほど分かる。
どんなに好きでも
手の届く事はないんだと。
蒼空「鈴花?」
鈴花「………うん」
2人の影を
月明かりがぼんやりと
照らしていた。
距離を取って歩く
鈴花と蒼空。
しばらく無言のまま歩いて
鈴花の家の近くまできたところで
不意に声をかけられた。
燐斗「げ…‼」
失礼にも取れる声に反応して
蒼空が顔をあげると
燐斗がジャージ姿で
コンビニの袋を下げて
目の前に立っていた。
蒼空「おー」
鈴花「こんばんわ」
鈴花が燐斗に向けて
軽く会釈をする。
燐斗「こんばんわ…えーっと?」
鈴花「鈴花です。」
蒼空「大学時代の友人」
燐斗「ふーん、まぁ良いけどさ。
海桜だけは泣かすなよ」
端から信用していないと言う雰囲気で
決めつけた様なものの言い方をした燐斗に
鈴花が口を開く。
鈴花「あなたも海桜ちゃんが好きなの?」
燐斗「だったら何?」
なんとなく質問の糸が見えた気がして
ムッとして答える燐斗。
鈴花「蒼空も大変だなって思っただけよ(笑)
あなた、番犬くんって感じだから(笑)」
燐斗「俺は海桜だけだから」
蒼空を睨みつける燐斗を見て
笑う鈴花。
鈴花「ふふふ(笑)
私はとっくにフラレてるわ(笑)
大学時代に人がせっかく告白したってのに
そっちのけで幼馴染の女の子がーって
夢中になって話してたんだから(笑)」
蒼空「昔の話だろー…////」
燐斗「ふ、ふーん…」
鈴花が昔話を煽ると
自分からフッた話題なのに
反撃をくらったみたいな
ダメージだった。
そんな顔を見てか
鈴花が釘を指すようにして言う。
鈴花「あなたも複雑ね(笑)
海桜ちゃんの幸せを考えるからこその悩みか…
でも辛くなる前に諦めて違う恋を探すのも
ありだと、思うわよ」
燐斗「分かってるから…」
鈴花「後悔しないでね?」
燐斗「………………」
それ以上は何も言う事も
反論する態度の1つも
取れなかった。
鈴花「それじゃーね」
翌日。PM 15:09
燐斗「…………」
海桜「燐ちゃん?今日は元気ないね?」
海桜が何時もと違う
燐斗の沈黙に耐えきれずに
声をかける。
海桜「りーんちゃーん?」
燐斗「……え?あ、ごめん‼どうした?」
海桜「今日はカフェでお茶しながら
課題やっちゃおうって
渚ちゃんと話してたんだけど
燐ちゃんも来るでしょ?
って思ったんだけど…」
燐斗「あー課題な‼ 勿論。
海桜が行くなら行くぞー♡」
渚咲「何?なんかあったの?」
燐斗「なんもねぇよ(笑)」
それからは
何時も通りの笑顔…
とまではいかないものの
無理矢理テンションを上げているのか
何時もよりもずっと
口数が多くなる燐斗。
本当なら
聞きたい事は沢山あったけど
燐斗の気持ちを知っているからこそ
海桜もいるしと割り切って
あえてそれ以上の話を
渚咲も突っ込まずにいた。
海桜「あ~もう、疲れたーーーー…」
燐斗「だなー」
海桜「とかなんとか言って
燐ちゃんが課題を真面目にやってたなんてー…」
燐斗「ハハハ(笑)」
海桜「裏切り者ー」
渚咲「本当。意外と燐って秀才なのよねー。
なんでかしら?」
燐斗「なにが?」
渚咲「彼女いないじゃない?(笑)」
海桜「あ、確かにー(笑)」
燐斗「え?海桜まで……
ってか、いーの!
俺は海桜一筋だから♡」
海桜「燐ちゃんはいっつも
そうやってすぐ茶化すんだから(笑)」
燐斗「俺はいつも本気だよ♡」
チャラさ前回で
いつも決まった緩さで
この関係が壊れない様にと
自ら茶化して誤魔化す燐斗。
燐斗「チュー♡」
テーブルを挟んでても尚、
お構い無しの燐斗。
海桜「やっ、も、ちょーーっ‼(笑)」
燐斗「んーーー♡」
そしてまた
燐斗を静止させるのは
渚咲の言葉だった。
渚咲「燐斗♡」
燐斗「あ?なに、今忙しい」
顔を歪めて振り返る燐斗。
渚咲「…ゼロ♡通報します♡」
燐斗「え、や、渚咲ーーーーー‼(泣)」