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僕が好きなのは  作者: そると
1/9

〜好きなのに

01



幼い物心がつく前から

ずっと当たり前に側にいたから

気づかなかった。


私は蒼空(ソラ)くんの全部を

知ってるつもりだった。















春、桜が舞う並木道を歩いてると

立ち止まって動かない

見覚えのある背中を見かけて

声をかける。


PM 16:48…




海桜「蒼空くん」




私が声をかけると

すぐに気がついて

優しく微笑む蒼空くん。




蒼空「あ、海桜(ミオ)、今帰りか?」



海桜「何してるの?」




蒼空くんが見ていた方を覗き込む。




蒼空「しーッ。ほら、あれ」



海桜「ん?」




蒼空くんの視線に合わせる様に屈むと

自然と顔が近づく。




蒼空「気持ち良さそうだったからさ」




と、蒼空くんが指を挿したのは

桜のはなびらの中で

きもち良さそうに

スースーと寝息をたてている

黒猫だった。




海桜「黒猫ちゃん?」



蒼空「そう。黒猫」




何時からこうしているのだろうか

蒼空くんはじーっとただただ見つめている。


気持ち良さそうに

寝ている黒猫が羨ましく思えてくる。




海桜「猫は気楽そうでいーよねー」



蒼空「そうでもないかもよ?」



海桜「ん?」



蒼空「多分だけど、あのこは野良みたいだよ」



海桜「そうなの?」



蒼空「うん、最近よく見かけるんだけど。首輪もしてないし、まだ触らせてはくれないんだ」




触りたくて

うずうずとしている姿が

何とも大人の男性っぽくなくて

可愛いらしい(笑)




海桜「蒼空くん、触りたいの?(笑)」



蒼空「あれ、分かっちゃった?」



海桜「そりゃーね。

さっきから蒼空くん動かないし(笑)」



蒼空「あ…////」




と、耳を赤くする蒼空くん。




海桜「ふふふ(笑)」



蒼空「あ、そろそろ行かないと」




急に立ち上がって

時計を見ると

慌てた素振りで

その場を去ろうとする蒼空。




海桜「仕事?早くない?」



蒼空「んー、今日は仕事じゃないよ」



海桜「そうなんだ?」



蒼空「うん」




何となく気になって

そうであって欲しくないと言う願いも込めて

思い切って聞いてみる。




海桜「で…デート?」



蒼空「うん(笑)」



海桜「え?…」




即答で返ってきた言葉に

思わずドキッとした。




蒼空「うーそ♡(笑)」




その後すぐに

イタズラをした後の子供みたいな

笑顔と一緒に返ってきた言葉に

安堵の表情が漏れる。




海桜「バーカ…」




不意にポンポンと

頭を撫でられて

頬が熱くなる感覚を感じて

見透かされないように隠した。




蒼空「じゃーな?」




だけどいつも

なんでも見透かされている様に思えて

少しだけ蒼空くんが憎らしく思える。




海桜「うん」




蒼空くんの背中が

角を曲がって見えなくなるのを

あたしは見つめながら見送って

完全に見えなくなってから

歩き出すと不意に

着信音が鳴る。


ーーーー♪♫*#~ーーーーー


ピッ…




海桜「はーい」



燐斗(リント)「海桜ーー♡」




着信の相手は

大学のサークルで出会った

男の子だった。




海桜「なんだ…燐ちゃんか」




と、思わず

本音のトーンが出てしまう。




燐斗「あ、待ってた?(笑)」




燐ちゃんはいつも

他の男の子なら絶対言わない様な

歯の浮くような台詞を日常的に

サラッと言えちゃう様な性格と

色白で童顔で綺麗な顔つきと

栗色のクルクルした猫っぽい髪質が可愛いと

結構女の子には定評のある

俗に言うモテる体質の人だった。




海桜「いや、全然」




私はと言うと

全く興味がなかった。


だから最初に声をかけられた時も

そう言う下心が全くなくて

燐ちゃんにはそれが凄く

新鮮だったらしい。



燐斗「相変わらずツレナイねー(笑)」



海桜「だってさっき別れたばっかじゃん」



燐斗「まーねー(笑)」



海桜「何か用事?」



燐斗「んー、別に(笑)」




その言葉を聞いて

思わずため息が出る。




海桜「はぁ…燐ちゃんは暇なのね」



燐斗「海桜だって暇だろ?(笑)」



海桜「…う…」




不意に確信を突かれて

胸が痛む。




燐斗「行ってもいーい?」



海桜「は?」



燐斗「渚咲(ナギサ)誘って行くな♡」




……ブチッ………ツーツーツー


返事をする間もなく

通話が切れた。




海桜「え⁉燐ちゃん‼」
















それから1時間後

ピンポーン…

先に来ていたのは燐斗だった。




燐斗「なーなー。いーだろ?」




猫撫で声を出している燐斗。


他の女の子なら

喜ぶんだろうなと思う。




海桜「やっ‼ 駄目に決まってるでしょ‼」



燐斗「なんで?」



海桜「もう‼だッ……め‼」




必死に抵抗するも

やっぱり男の子なだけあって

簡単に負けそうになる。


燐ちゃんが来ると

いつもお決まり事の様に

何故かベットの上にいて

いつの間にか組み伏せられている。




海桜「きゃーーー‼」




と、タイミングを見計らう様に

インターホンが鳴る。


ピンポーン。


そしてすぐ様ものすごい勢いで

階段を駆け上がってくる足音。


ダダダダダダダダ…ガチャ‼




渚咲「……この愚民‼ 海桜から離れなさい!」




慌てて入って来たのは

渚咲ちゃん。


黒髪美少女とは

渚ちゃんの為にあるんじゃないかって程に

長く綺麗な黒髪と透き通る白い柔肌で

女の私からしても美少女だと本当に思う。




燐斗「ちッ」



渚咲「この変態 ‼ 通報するわよ‼」




と、[110]と打ち込んである

スマホの画面を見せつける渚咲。




海桜「本当に通報されちゃうよ?(笑)」



燐斗「や、ちょ、、あ‼♡」




慌てて避けようとして体制を崩すと

海桜の胸に少し手が触れた。


その瞬間渚咲が

にこやかに言う。




渚咲「ゼロ♡」



燐斗「や、いきなりゼロって早いぞ渚咲ー‼」



渚咲「問答無用♡」



燐斗「や、ちょ、まっ」



海桜「あははは(笑)」



燐斗「助けてーー」




この三人が揃うと

いつもこんな風に笑いでいっぱいだ。


そうして数時間過ごしていると

誰かが転びながら階段を上がってくる。




海桜「ん?誰か来た?」



渚咲「誰?」



海桜「ちょっとまっててー」




と、立とうとした瞬間に

燐斗の元へと引き寄せられて

ちょうどよく燐斗の腕の中へと

すっぽりと収まる。




燐斗「あ‼だーーめっ‼」



海桜「わぁ‼」



燐斗「誰かもわかんねぇのにあぶねぇだろ」




と、そこにノックも無しに

ドアがガチャっと乱暴に開かれる。




蒼空「海桜ぉ♡」



海桜「え、蒼空くん?ちょ、燐ちゃん離して‼」



燐斗「え?知り合い?(汗)」



海桜「うん、隣のお兄ちゃん(汗)」




海桜が側に行くと

倒れる様にしてもたれ掛かかる

蒼空の体を支え切れなくて

そのままベットへ倒れてしまう。




海桜「わ?」



蒼空「かまえー♡」




と、蒼空が海桜の上に覆い被さったまま

いつもとは違う雰囲気で顔を近づける。




海桜「蒼空くん酔っぱらいすぎ(笑)」



蒼空「おー♡」



海桜「もー(笑)」




いつもの蒼空くんとは違って

甘えて抱きついてくる腕に緊張しながらも

何だかふわふわした感情があふれる。




海桜「可愛い♡…あ、いや、////」



渚咲「ふふふ(笑)

あ、あたし水貰ってきてあげる」



海桜「ありがとう、渚ちゃん」



渚咲「いーのよ(笑)」




渚咲がリビングへと

階段を降りる。




蒼空「渚ちゃん?」



海桜「友達(笑)

あ、ねぇ燐ちゃん助けて(笑)」



燐斗「あ、うん」




と、男の子の声がした途端に

蒼空の表情が一変する。




蒼空「…だれ?」




今まで過ごしてきて

一度も聞いたことの無い

蒼空くんの低いドスのきいた声と

さっきまで甘えた声を出して

ふにゃふにゃしてたとは

到底思えない程の腕の力で

抱き寄せられていた。




海桜「……蒼空くん?」



燐斗「あ、えーっと…」




燐斗も急な態度に

少し戸惑っている。




海桜「蒼空くん?この人も友達だよ?」



蒼空「友達?」



海桜「そう、燐ちゃんだよ(笑)」




海桜の言葉を聞くと

腕の力をいっそう強くして

抱きしめられた。




蒼空「燐…ちゃん…」



燐斗「あ、燐斗…です(汗)」




と思い出した様にして

既に完全に据わっている目を更につりあげて

燐斗を睨みつける蒼空。




蒼空「あ、お前‼」



燐斗「なんすか?」



蒼空「いーーーーーっつも、

俺の海桜にハレンチな事しようとする奴だろ!」




と、そこに渚咲が

タイミングよく部屋に入ってきて

相づちをうつ。




渚咲「間違ってないわね(笑)」



燐斗「え⁉や、ちが…」




慌てて否定をしようと口を開くも

既に遅かった。




渚咲「さっき私が来る前だって…(笑)」



蒼空「……なにしたんだ?」




今にも飛びかかりそうな蒼空を

海桜が必死に押さえ込む。




海桜「そ、蒼空くん、大丈夫‼

スキンシップって奴だよ!ね?燐ちゃん?」



渚咲「そうだったかしら?(笑)」



海桜「渚ちゃんも、もー、やめて(笑)」




と、笑っていると

突然に電池が切れた子供みたいに

フッと寝落ちる蒼空。




蒼空「……俺の海桜がぁ……………」



海桜「あ、落ちた(笑)」



渚咲「いつもこうなの?」



海桜「本当はもっとカッコイイ(笑)」




と、顔を見合わせて笑いながら

渚咲は部屋にあった時計をふと見て

終電の時間が迫っている事に気づく。




渚咲「あ、もう22時過ぎてるじゃない‼」



燐斗「え‼」



渚咲「ほら、行くわよ」




と、慌てて

身支度をする燐斗と渚咲。




海桜「渚ちゃん後でLINEするー♡」



渚咲「うん、あたしも家に着いたらするね♡」



燐斗「え、海桜、俺は?」



海桜「燐ちゃんは私から送らなくても、

LINEしてくるじゃん(笑)」



燐斗「そーだけどさー(泣)」



海桜「それよりもう遅いし

渚ちゃんの事ちゃんと送っててよね?」



燐斗「ふーい」



海桜「じゃあ、またねー?」



燐&渚「またね(なー)」
















それから、

部屋に戻ってスースーと

寝息をたてて無防備な

蒼空くんの寝顔を眺めていた。




海桜「ずるいよー」




それから1時間後、

お父さんか帰ってきて

部屋に入ってきた。




父親「蒼空が来てるのか?」



海桜「うん、酔っぱらって(笑)」



父親「酔っぱらって?珍しいな(笑)」



海桜「そうなの(笑)」




お父さんが

寝息をたてる蒼空くんに

声をかける。




父親「蒼空ー起きろー」



蒼空「ん"ーーーーヤダー」



父親「帰るぞー(笑)」



蒼空「ヤーダーーーーー…」



父親「海桜手伝え(笑)」



海桜「うん(笑)」




と、蒼空くんの腕の方に回ると

そのまま何故か腕の中に

引っ張りこまれる。




海桜「え?」



蒼空「海桜と寝るのー」




ぎゅっと抱きしめられて

そのまま蒼空くんに身を委ねる。




父親「あーもうダメだな(笑)」



海桜「え?」



父親「このままでも大丈夫だろ?」



海桜「や、ちょ、え⁉」



父親「小さい頃は毎日一緒に寝てたんだしな。

じゃーおやすみー」




と、なんの心配もせずに

出ていく父親の背中に唖然とする。




海桜「そうだけどでも

…あの、や、まっ………はぁ…」




ため息をつきながらも

少しだけこの状況に顔がにやける。




海桜「もー。なんで、こんなに酔って家に来たんだか……」

















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