八話
『ゴブリン』の群れに襲われている村から、生き残りを避難させる『緊急依頼』から一週間が立った。
「渡辺・・・いいかげんに『週末だ! 『 異世界』にゴブリン狩りに行こうぜ』と
誘うのは止めろ! 」
苦々しい表情を浮かべながら、ゴンザレスが告げた。
「あまり喚くと、声が響いて『ゴブリン』が寄ってくるぞ」
ナナシが周囲を見渡しながら応えた。
ゴンザレスとナナシがいる場所は、拠点としている街から40分ほど西に移動した所にある
岩場に来ていた
範囲が見渡す限り岩塊と岩丘の原野で、それらの間の低い場所に土がたまって、潅木や雑草の草地になっている。
さらにその先の方には、黒緑色の葉の雑木林が見えた。
「本業の仕事も暇じゃないんだっ! 週末だから休めると思うな」
ゴンザレスが声を落として告げる。
「手野武装警備株式会社
の武装警備員として、真面目に仕事はしているだろ」
ナナシが応えた。
「俺とお前がいる部署は、特殊課だ」
ゴンザレスが告げた。
2人が務める『手野武装警備株式会社』は、警備業法、武装警備業法並びに武装警備会社法に基づいて設立された武装警備会社だ。
『武装警備』とは、武装警備業法によれば、『別に政令で定める銃器類、艦船群、航空機その他火器を所持し、各号に該当する業務であって、他人の需要に応じて又は地方公共機関より要請を受けて行うもの』とされている。
その行動範囲は、主に公共の地となっているが、個人警護も行っている。
通常、一般に行われる業務は、通常の警備業法による警備業務と変わらない。
2人が配属されている『特殊課』は主に紛争地域に設置されている手野武装警備株式会社の子会社から、
『緊急要請』で派遣される、軍隊で言うところの特殊部隊の様な存在だ。
そのため『修羅場』と『荒事』には事欠かせない。
「そう派遣される事はないだろ? そんな殺伐な事を心配するよりは、『異世界』でゴブリン狩りを
楽しまないか?」
ナナシが呑気に告げた。
「・・・お前・・・」
ゴンザレスが何か言おうとしたが、言葉が出なかった。
「それでは、いつも通り『召喚』してくれたまえ」
ナナシが告げた。
「・・わかったよ 『召喚』してやるよ!」
ゴンザレスが、何処か自棄じみた声で告げて両眼を閉じ、短く詠唱を唱える。
ちりちりと焦げるような電流が空間一帯に広がると、空間が陽炎のように揺れて弾けた。
ぶれるような残像が、一つの物質を結像させるまで一瞬の時間もかかっていない。
現れたのは、黒の背広に黒ネクタイ、黒の革靴を履いた『異質』な集団だ。
「ギルドで調査してもらった通り、人員も増えて新しく『召喚人』が4人も増えているな。
前回は1人だけだったが・・・前回の影響だな」
ナナシが、その集団を見て告げる。
「・・・改めて凄いな・・・」
ゴンザレスが応える。
『ブルース・ウイルス隊』、『ロバート・デニーロ隊』、『キアヌ・リーブス隊』 『ドルフ・ラングレン隊』の人数が増えていた。
5人編成から10人編成となっている。『同じ貌』が10人だ・・。
「ゴンザレス・・・新しく『召喚人』もやはり・・・」
ナナシが新しく召喚されている集団に視線を向けながら尋ねた。
そちらも10人編成だ。
「そうだ・・・。少しくらいお前は映画とか見ろよ」
ゴンザレスは、呻くように告げた。
その4つの集団も有名な映画俳優だった。
1人目は、1960年代から1980年代初めにかけ美男の代名詞的存在、『アラン・ドロン』
2人目は、フランス人の映画監督の作品に多く出演している俳優『ジャン・レノ』
3人目は、アカデミー作品賞を含む5部門に輝きプロデューサーとして脚光を浴びた、
『マイケル・ダグラス』
最後の4人目は、日本でも人気が高く、さまざまな映画作品に出演している
『トミー・リー・ジョーンズ』
『同じ貌』で、全員が黒の背広に黒ネクタイ、黒の革靴を履いていた。
「手野武装警備株式会社」は、交流させていただいている尚文産商堂先生の許可をいただきました。