六話
この石造りの建物は、アニメやライトノベルで登場している有名な組織の拠点だ。
この近隣で活動を行う『冒険者』に対しての依頼の紹介や、『冒険者』として登録などが行える
『冒険者ギルド』の建物だ。
ナナシは、冒険者ギルドの男性職員に連れられて、一階フロアを見渡す事が出来る様にしてある関係者以外立ち入り禁止の扉を潜っていた。
階段を辿るように上階へと進むと、『ギルドマスター』の執務室前に到着した。
冒険者ギルドの男性職員は、扉の前に立つと軽く三回ノックする。
「 『ギルドマスター』 冒険者のナナシ様をお連れしました」
短く告げた。
「――――入れ」
扉の奥から響いてきた声を確認すると、冒険者ギルドの男性職員は扉を開けた。
「失礼します」
ナナシは、一言声をかけてから入室する。
迎えたのは執務机で書類らしきものに眼を通し、眉間に皺を寄せている男性だった。
眼光鋭い氷蒼色の瞳、金髪を乱雑に切り分けた短髪、精悍な顔立ちだ。
やや着痩せして見える身体だが、冒険者ギルドの責任者としては、しなやかな筋肉を纏っている。
「帰ってきたばかりなのに、呼びだしてすまない。まぁそこに座ってくれ」
部屋の中央に用意されたソファに座るよう促され、ナナシも腰掛けた。
丁度、テーブルを挟んで対面になるように『ギルドマスター』も腰掛け、その後ろにここまで案内してくれた冒険者ギルドの男性職員が無言のまま控えた。
『ギルドマスター』は、テーブルに置かれている書類とナナシを眼を細めながら交互に視線を移す。
「もう一人・・・アサキは?」
『ギルドマスター』が尋ねてくる。
「・・・彼は、まだ吐いてますよ。 少し時間がかかりますね。それと、できれば『あちら』の苗字で言うのではなくで、『こちら』で登録させてもらった名前で言ってもらうと助かります。いくら事情に詳しい関係者がおられてもです。『ギルドマスター』 」
ナナシは、穏やかな声で告げた。
「・・・そうだったな・・・さっそくで悪いが、
報告によれば『黒いゴブリン』を駆除したのか」
『ギルドマスター』が書類に眼を向けながら尋ねた。
「その通りです。実の所、まさか群れの中に『黒いゴブリン』がいることは予想だにしてませんでした。
てっきり単なる群れだろうと、俺もゴンザレスも思っていました
からね。
ところが、現着してみると『黒いゴブリン』がひょっこりといた。
しかもすでに大量に増やしていました。もし、高度な統制能力のある
『蒼いゴブリン』がいたら時間も犠牲も出てましたよ
いなくて幸いでした」
ナナシが応えた。
「何処かの2人は、『蒼いゴブリン』の駆除経験もあったと思うが」
『ギルドマスター』が書類に眼を向けながら尋ねた。
「いったい誰やら・・・それはさておき、
間違いなくあのまま放置していたら―――――俺たちが『こちら』にきた直後に
巻き込まれた『ゴブリンの行軍』が発生していたのは間違いないです」
ナナシが応えた。