六十二話 異界⑫
最初に召喚人達の前に立ち塞がる障害は、丸太で組まれた一本橋だった。
両脇は周囲から流れる小川を引き込み小さな池になっていた。
近くには―――――――
『苦痛を 苦悩を 絶望を愛せ!!』と書かれた板状の掲示物が取り付けられ
ていた。
両脚に二十キロずつの鉛の棒を括りつけた召喚人で、『ドナルド・サザーランド』
『デニス・ホッパー』 『ジャック・ニコルソン』貌の召喚人などがバランスを崩して、
池に落下している
『落チタウジ虫ハ、順番待チノ最後尾二並ベ!』
『石丸謙二郎』貌の訓練教官が怒声を発し命じる
底の泥がかき回されて沼と化した水の中で、落下した召喚人達は歯を食いしばり喘ぎ声と
共に口に飛び込んできた泥水を吐き出しつつ、必死に並び直す。
その障害の先には、塹壕を模した深い空堀に背丈ほどの塀が連続して
存在していた。
体力を使い果たしている召喚人達は幽鬼の様な貌で、大きく息を吸い込み低い壁を
乗り越えようと藻掻く
両脚に括りつけている鉛の棒の重量がかかっており、余計に体力を
奪われている。
『100億年ノ物理学、10億年ノ進化、ソシテ『無』ノ中カラ生マレテ出テキタノハ
オ前達ミタイナ 惨メナ生キ者ダ!!無意味ナ生命体ダナ!!』
『いかりや長介』貌の訓練教官の声が響き渡る
『シッカリシロ!!』
『マシュー・モディーン』貌の召喚人が、塀の上でがっくりと頭を垂れていた
『ヴィンセント・ドノフリオ』貌の召喚人に怒鳴りつける
泥水で汚れている『ヴィンセント・ドノフリオ』貌はぐったりとして動かなかった
『馬鹿っ!! 眼ヲ開クンダっ!!』
『マシュー・モディーン』貌の召喚人が再び怒鳴る
『ヴィンセント・ドノフリオ』貌の瞼が痙攣した
『気ヲ失ッテハ駄目ダっ!! 『無』二戻ッテモ知ランゾ!!』
『マシュー・モディーン』貌の召喚人が、『ヴィンセント・ドノフリオ』貌の召喚人を
軽く揺さぶりながら怒鳴る。
『ヴィンセント・ドノフリオ』貌の召喚人は呻き声を漏らして、真っ赤に血走った眸を開く
『シッカリシロ!! 苦シイダロウケド、身体ヲ動カスンダ!! コノママ眠リ込ンデ
シマッタラ、『無』二戻ルゾ!!』
『マシュー・モディーン』貌の召喚人が叱咤する
『ア・・アリガトウ・・・・』
『ヴィンセント・ドノフリオ』貌の召喚人は、弱々しい声で呟いた




