五十六話 異界⑥
小隊区画に戻ると、『安岡力也』貌の召喚人がハリウッド貌召喚人をまたもロッカーの前に気をつけの
姿勢で立たせる。
「今日ハコレマデ」
『安岡力也』貌の召喚人が言う。
「ドウシテマダ誰モ失格ニナッテイナイノダロウカト不思議ニ思ッテイルノカモシレナイガ、答エハ
簡単ダ。
訓練ハマダ始マッテモイナイカラ、オ前達ハ落伍スルチャンスガ与エラレテイナイカラダ、シカシ、明日カラハ違ウ。
今カラ十分デ、小隊区画ノ奥デ個人的ナ頭部ノ保守管理ヲスマセロ!!
ソシテ二一〇〇時キッカリ二、支給サレタ寝間着ヲ着テ再ビロッカーノ前ニ並ベ―――ハジメ」
太くて低い凄味のある声で告げる。
広いバスルームの片方の壁にはトイレが、反対側の壁にはシャワー区画が並び、中央にステンレス製洗面台が円形に配置されている。
プライバシーはほとんど考慮されてなく、トイレとシャワーにはドアも壁もない。
召喚人は命じられた通り、身づくろいをして支給された寝間着に着替える。
だぼっとした蒼い寝間着だ。
『安岡力也』貌の召喚人の命令に従い中央通路に全員が集合する。
ハリウッドの代表する俳優貌の召喚人が、集合する光景はそれだけでも一つの映画作品のワンシーンを彷彿とさせる。
「就寝ノ時間ダ」
小隊をざっと点検した『安岡力也』貌の召喚人が告げる。
「ベット二入レ。明カリガ消エタラ口ヲキクナ。今夜ハ私ガ、自分ノ部屋デ寝ル。誰ガガ眼カラ血ヲ流スマデ邪魔ヲスルンジャナイゾ?」
召喚人がベッドに入って支給品の毛布にくるまると、天井のLEDが減光して消える。
部屋が暗くなり、聞こえるのは音は召喚人の息づかいと部屋を二十度に保ち空気中の不純物を濾過している環境システムの音だけになった。
きっかり朝の五時に、天井のLEDがいきなりついて、『安岡力也』貌の召喚人が小隊区画に勢いよく
入ってくる。
「クズ共っ!! サッサトベッドカラ出ロ!!」
『安岡力也』貌の召喚人が怒鳴る
「緑ト青ノ服ニ着替エロ!! 斑模様ノヤツダ!! グスグススルンジャナイゾ――――点呼用意!!」
『安岡力也』貌の召喚人が太くて低い凄味のある声で口を切る。
太くて低い凄味のある声がき渡る頃には整頓を終えていなければならないのか、起床した召喚人は
起床して真っ先に寝間着から斑模様の服に着替え、寝台の毛布と敷布を一本の皺もなくピッシリと畳む。
短時間で整頓を終えた召喚人は、ロッカーの前に整列した。




