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五十三話  異界③

 


 召喚人は命じられた通りに行動する事で、奇妙な解放感を覚えた表情を浮かべている。

 命令を忠実に実行していれば、『安岡力也』貌の召喚人を怒らせる心配がないためだろう。

「ペンヲトッテ眼ノ前ノ書類ニ記入シロ。終ワッタラペンニキャップヲハメ、書キ終ワッタラ書類ノ上ニ

 置ケ―――ハジメ!!」

『安岡力也』貌の召喚人は、睥睨しながら低い凄味のある声で告げる。

 それは『漆黒の銃士隊()()()()()()()()だ。

 召喚人は五段階にわたってみっちりと記さている文章に眼を通し、契約書に署名をする。

 この場にいる召喚人には、()()()()()()()()()

 全員が記入し終えると、『安岡力也』貌の召喚人は書類を回収し部屋の前に置かれている台に置く。

「オメデトウ。タダイマヲモッテ、オ前達ハ公式に『漆黒ノ銃士隊』ノ一員トナッタ!

 ()()()基礎訓練ヲ修了スルマデハ試用期間ダ」

『安岡力也』貌の召喚人が言う。

 式典も、入隊宣言も、華やかな行事も何もなく、契約書類に署名すれば銃士隊の一員というわけだ

 だが、少なくとも拒否れば『()()』する点に関しては『漆黒の銃士隊』は一貫している。




 ―――()()はほとんど立って待ち続けるだけだ。

 ()()()()が、4人の医師系の召喚人が全体を診る。

 その召喚人の貌を見れば、映画をよく見ている人物なら唖然とすることだろう。


 香港出身の映画俳優、映画監督、アクション監督、脚本家、映画プロデューサーで、アクション俳優として武術指導をを行っている『サモ・ハン・キンポー』

 コミカルで明るい作風のカンフー映画を送り込み、一躍アジア圏で有名であり、ハリウッドにも

 進出し数多くの映画に主役として出演『ジャッキー・チェン』

 アクションスターから演技派の俳優として幅広い世代からの認知を得ており、日本を代表する

 俳優である『真田広之』

 映画監督・映画プロデューサー・そして俳優であり、その名が世界中に知れ渡っている日本を

 代表する俳優である『三船敏郎』


 有名すぎる貌をした医師系の召喚人が、おおざっぱなスキャンと、最後の瞬間に薬物類を

 過剰摂取していないかを確かめるための血液検査、そして異なる注射を6回、立て続けにする。

 診察を受けている召喚人は、それらに関して一言も質問をしない。

 どっちみちに、注射を辞めてくれる事は思えないからだろう。



 健康診断のあと『安岡力也』貌の召喚人は、召喚人を他の場所へ連れていく。

 そこで列を組んで立ち、他の小隊が行進しながら次々と中に入っていくのを見守る。

 同じ貌の集団が行進していく姿は、一種異様ではあるが・・・残念ながら、ここにいるのは

 召喚人だけなので、その異様な光景に口を挟む者はいない。

「食事ノ時間ダ」

『安岡力也』貌の召喚人が告げると、この場所に着いて以来の笑みらしい表情を召喚人が浮かべる。

「一列二ナッテ食堂に入レ! 入ッタラ給食ノ列ノ手前二積ンデアルトレイヲトレッ  

 食イ物ハドレモ許可ヲ求メル事ナクトッテモカマワナイ。トレイ二食イ物ヲ盛リ終エタラ、空イテイル

 席ヲ見ツケテスワレ。

 着席シタラ食イ始メロ。席二ツイテイル間ハ、仲間ノ新兵ト会話シテカマワナイ。

 私ガオ前達ノ小隊番号ヲ呼ンダラ食事ヲ終エ、会話ヲヤメ、トレイヲ出入リ口ノ脇ノ回収ラックニ戻シ

 マタ食堂ノ正面ニ整列シロ」



 召喚人の全員は、()()()()()()()()()()()()()()()()

 整列している召喚人の貌がぱっと明るくなったのも無理はない。

「イイコトヲ教エテオイテヤル。食イスギル癖ヲツケルナ 体力ヅクリガハジマッタラ、ゲロヲ

 吐キ散ル ハメニナル。腹八分目ニ抑エテオケ」

『安岡力也』貌の召喚人は、食堂に案内する前に告げる。



 大食堂は、食卓につくことを許された召喚人達がかわしている、声をひそめた会話ですでに

 ざわついている。

 食堂とキッチンを仕切っているガラスの向こうに、食品が盛られている大きな金属製トレイが

 並んでいる。

 いい匂いがする素晴らしい景色を眼にして、何人かの召喚人が唾を飲み込む。

 眼の前のトレイに盛られているのは本物だ。

『卵かけご飯』、『お茶』、『味噌汁』、『塩おにぎり』がある。

 全員がトレイに大量の食品をとる。

 空いている席に座ると同時にガツガツと食べ始める。

 喋っても構わないのだが、最初の数分間、召喚人達は夢中になって口に食べ物を詰め込み続ける。

「癖二ナリソウダ」

 長テーブルの席に座っている、『トム・ハンクス』貌の召喚人がようやく言う。



 他の召喚人は、顎を外す事無く可能なかぎり多くの食べ物を口にする事に没頭している。

 あとで食べた分だけの汗をかかされるのはわかってはいる事だろうが、今は食事を楽しみ、

 吐く寸前までカロリーを腹に収める事に専念する。

 この食事だけでも『漆黒の銃士隊』に契約した価値があり、もしも銃士隊の食事がいつもこうなら、

 どんな地獄でもくぐり抜いてみせてやる・・とこの場にいる召喚人は心に誓った。

 ――――『()』に戻りたいと思う召喚人は、この場には誰もいなかった。


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