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五十二話  異界②



『安岡力也』貌の召喚人は、バス内にいる召喚人達が命令に従うと決まっていると確信しているかのように、振り向く事なく降りていく。

上下灰色の訓練服を着込んだ召喚人は、席を立ち、列をつくってコンクリートの駐車場に降りる。


そして路面に並んでいる黄色い足形の上に立つ。

訓練服を着込んだ召喚人が不ぞろいな列をつくりおえると、先ほどバスに乗り込んできた召喚人は

寄せ集め集団の召喚人達の前に回り込んできて作業服の前をさっと引っ張って直し、両手を背中で

組んで足幅に開く。

「ホタテマンダ。私ハオ前達ノ訓練教官デハナイカラ、私ノ貌ヲ覚エル必要ハナイ。

私ノ任務ハ、事務処理ノタメノ最初ノ時間デオ前達ヲ始動シテ隊ノ訓練教官ニ引キ渡セルヨウニスルコトダ・・・。イイカ?」

と『安岡力也』貌の召喚人は、太くて低い凄味のある声で繰り返す。

訓練服を着込んだ召喚人の精神力的、肉体的にいまこの瞬間に集中させようとしているのか、それとも注意を惹く以上の意思があるのかのような言葉の強調の仕方だ。



「  『漆黒の銃士隊』二オ前達ハ受ケ入レラレ中二入ッタ。ダカラ自分ハ特別ダとオ前達は

思ウダロウ。ダガソンナ事ハナイ!!

銃士隊ハ自分達ガ銃士二ナレルヨウ、個人的ナ弱点ヲ克服シテクレルヨウ配慮シテクレルダロウトオ前達ハ思ウダロウ。ソンナ事ハナイ!!

新兵訓練ハネットワークで観る様ナモンダトオ前達ハ思ってイルダロウ・・・・違ウ!!

教官ハオ前達ヲ殴ッタリ虐待シタリ、差別シタリシナイ!!

何時命令ト指示に従ウ事ノヲヤメテモ構ワナイ。

命令二従エナカッタラ失格ダ。

一ツデモ審査ヤ実技試験デ及第点ヲ取レナカッタラ失格ダ。

同僚ノ新兵ヤ上官ヲ殴ッタラ失格ダ。

盗ンダリ嘘ヲツイタリ態度ガ悪カッタリシタラ失格ダ。

ソシテ、教官二ハ、イカナル理由デアッテモ、オ前達ヲ失格サセラレル絶対的権利ガアル!!

失格シテモ、何モ心配スル必要ハナイ。


()()()()()()()()()()()()()()()()()()

隊ハ()()ヲ破棄シ、コノ場二イルオ前達ハ無二戻ルダケダ。

隊ハ、消滅シタ分ダケ新シイ契約ヲスル。

()()()()()()()()()()

基礎訓練デ新兵ノ半数ガ失格シ、終了証を手二スル事無ク、()()ヲ破棄サレ消滅スル

今、ココニハ百名イルガ、基礎訓練を修了デキルノハ()()()ダケダ!!

ソレガ気二イラナイナラ、今降リタバス二モウ一度戻レ。

バスデ元ノナニモナイ()()二連レ帰ッテモラエル。

私ノ話ヲ聞イテ軍務に就キタイトイウ考エガ変ワッタノナラ、オ前達自身ト教官の手間ガ省ケル訳ダカラ

遠慮ナクバスヘ戻レ」



『安岡力也』貌の召喚人は言葉を切って落伍を予期している眼で、訓練服を着込んだ召喚人達を

眺め渡す。

しかし、誰も列を離れようとする召喚人はいなかった。

そこには何か凄まじい覚悟をしている召喚人達がいるだけだった。

「本気デ言ッテイルンダゾ? コノ場二残ルオ前達ハ()二戻ルヨリモ修羅ノ道ヲ選ンダトイウ事ダ

コレモ本気ダカラナ。サア、一列二ナッテアソコノドア二入レ!!

中ノ部屋二机ガアルカラ、追ッテ指示ガアルマデ着陸シテ静二待テ―――デハ、ハジメ!!」




その部屋には、ガタが来ている机と椅子が数列並んでいるだけだった。

同じ貌の百名の召喚人は椅子に座っていく。

『安岡力也』貌の召喚人が例のスピーチを終えるまでに外の黄色い脚形の上に立っていた人数と丁度

同じ数だけ席が用意されている。

机には黒のサインペンだけが置かれている。

数人の召喚人―――『ドナルド・サザーランド』貌、『トム・ハンクス』貌、『ジャック・ニコルソン』

貌の召喚人が、サインペンを手に取ってキャップを外すが、部屋に入ッテキタ『安岡力也』貌の

召喚人は、それを見て立腹する

「ペンヲ手二トレトハ一言モ言ッテナイゾ!! 着席シテ静カニ待テト言ッタンダ!!」

叱責された召喚人は慌ててサインペンを机に戻す。

その違反が失格の理由になるのではないかと思っている絶望的な表情を浮かべて、『安岡力也』貌の

召喚人を見る。

「サア、キャップヲ外セ! 左手の甲に、サインペンデコレカラ言ウ数字ヲ書ケ」

召喚人は、その命令に従い、手の甲に数字を書いていく

「ソレガオ前達ノ小隊番号ダ コノ番号ヲ頭二叩キ込ンデオケ!」

『安岡力也』貌の召喚人が太くて低い凄味のある声で告げる。

全員が書き終えるのを確認すると、紙の束を取り出し、眼の前の『マイケル・ケイン』貌の召喚人に置く

「一番上カラ一枚トッテ隣ノ新兵二回セ 書類ハ、私ガ開ケト言ウマデ机二伏セタママ二シテオケ」

書類の束ガ部屋をぐるりと回る。


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