三話
「生存者はこれだけかっ!!」
ギルド職員が尋ねながら、怯えた様に一か所に固まっている村人に尋ねた。
そこにいる村人は貌は汚れ、衣服はぼろぼろだった
老人、子供、乳飲み児を抱かえた女達だった。
「一列に並んで、馬車に乗ってくれ!」
冒険者ギルド職員はそう告げた。
村人達はゆっくりと立ち上がって馬車に乗り込んでいく。
『(この村を襲撃した『ゴブリン』の数は、明らかに多すぎる)』
ゴンザレスは、その様子を見ながら思った。
この『異世界』へと持ってきている携帯型無線機を使う。
「 「ナナシ」へ こちら『ゴンザレス』 状況を知らせてくれ オーバー」
ゴンザレスが携帯型無線機で尋ねる
『 こちら『ナナシ』 現在、村の井戸水付近にて元凶と思われる『黒いゴブリン』一体を発見! アウト』
携帯型無線機から、雑音混じって興奮した声が返ってくる。
「こちら『ゴンザレス』 「ナナシ」ヘ !! 何としてでも仕留めろ!! 必要なら応援を回すっ オーバー」
ゴンザレスが怒鳴る様に言い返す。
『 『ゴンザレス』へ! 『ウィルス隊』か『デニーロ隊』から何人かを
右側側面に回してくれ!! 逃げ遅れた村人を発見した!! アウト』
携帯型無線機から、早口で返ってくる。
ゴンザレスは、携帯型無線機から聞こえた状況を聞くと、小さな口笛で
合図をした。
警戒態勢の『ウィルス隊』と『デニーロ隊』が気づいて、ゴンザレスを見た。
手信号で合図を行うと、『ウィルス隊』から1人、
『デニーロ隊』 から1人、親指を立て周囲に視線を向けながら集団から立ち去っていく。
「 『ナナシ』へ いま『ウィルス隊』から1人、『デニーロ隊』から1人送り出した
『黒いゴブリン』は仕留めたか!? オーバー」
携帯型無線機に向かって尋ねた。
『 『ゴンザレス』へ 今仕留めた! 繰り返す、いま仕留めた!! これで『ゴブリン』の数は増えないはずだっ!! アウト』
興奮した声が携帯型無線機から返ってくる。
ゴンザレスが何か言おうとした時、周囲を警戒していた『ウィルス隊』と『デニーロ隊』が
ホルスターからコルトM1991A1を抜き、撃鉄を起こして銃撃をする。
どうやら忍び寄っていた『ゴブリン』の群れに銃弾を撃ち込んでいる様子だった。
「ギルド職員のニコライさん!! いつでも避難できるように
しておいてください!! ――――――『ナナシ』ヘ! 逃げ遅れの住民を保護したら急いで
戻ってこいっオーバー!」
ゴンザレスは、冒険者ギルド職員に告げ、そして携帯型無線機で――――――
『ナナシ』に連絡した。
ナナシは、十人の『召喚人』を引き連れて、『ゴブリン』の群れに銃弾を
浴びせる。
ナナシの左手は『黒いゴブリン』の頸を持っていた。
胴体は、地面に横たわり緑色の液体を傷口から噴き出している。
「 『リーブス隊』 『ラングレン隊』 引き上げるぞ!! 殿は任せる」
ナナシが怒鳴る様に告げながら、右側側面にある建物に視線を向けた。
そこから、『世界一ついてない男』と『イタリアマフィア』が、それぞれ少年少女を抱き抱えて出てくるのが見えた。
「『漆黒の銃士隊』が道を拓く! 行くぞ!」
ナナシが大声で告げる。
『オウ!』
『リーブス隊』 『ラングレン隊』は、短く片言の日本語で返答すると、『ゴブリン』の集団に
銃弾を浴びせながら後退を開始する。