二十九話
――――――無限に広がる大海原を20隻の鋼鉄の巨獣が、ルイトリア島に向かっていた。
鋼鉄の巨獣の群れは、この『異世界』では高度な開発技術は発達もしていないため、存在すらしていない鋼鉄の巨獣だ。
山脈にも比肩する巨体は――――――――――――『航空母艦』だ。
島がそのまま移動しているかのような圧倒的質量の航行、それだけでも壮観無比の光景だ。
オルテガが『召喚』した大型戦略爆撃機『B29スーパーフォートレス』による
ルイトリア島爆撃は、最初の40機から最後の600機の『召喚』まで、島内の
ゴブリン活動領域に連日爆撃を行った。
襲撃する時間、高度も決めていなかった。
昼間の強襲もあれば、夜間の爆撃も行い、一度に100機近く投入もあれば、30機投入という
事もあった。
だが、これで島内にいるゴブリンを根絶できたとはゴンザレス達は思ってもいなかった。
20隻の鋼鉄の巨獣が、ルイトリア島近海に到着したのは昼過ぎだった。
1隻の『航空母艦』の甲板上にナナシとゴンザレスの姿があった。
「ここで見る限り、忌々しいゴブリンは一匹残らず挽肉にしただろうと思えるんだけどなぁ。
上陸すると今までの鬱憤を晴らす様に飛び出してくるぞ」
ゴンザレスは忌々しいそうに、ナナシに視線を向けながら言う。
「派手にやったが、花火みたいなもんだ。泥臭いゴブリンどもは地下深く潜って潜んでやがる」
ナナシはそう言い捨てる様に応える。
「・・・予定通り上陸するぞ。 ナナシ、お前も新しく追加されたのを使えよ」
ゴンザレスは、そう告げると離れていく。
「へいへい」
ナナシは短く応えた。
20隻の鋼鉄の巨獣の周囲一帯を乳白色の薄霧が漂い始めた。
そして嵐の前に鼻をつくすオゾンの臭いと、空気が電荷を帯びているような電流が空間一帯に広がる。
乳白色の薄霧の中から、人影の姿が見え始めた。
その数は13人。
全員が海面をゆっくりと歩きながら姿を現す。
13人は、ライトノベルや異世界系アニメなとで登場している西洋系の甲冑姿だった。
簡素で無骨、そして、フード付きマントを羽織っている。
そのどれも、闇よりも深い漆黒で統一されており、平均の成人男性より一回り大きい巨体だ。
時折フードから見える貌は―――――ありえない素顔だった。
その13人は、『元の世界』では、超大国米国の歴代大統領と同じ貌だった。
第32代『フランクリン・ルーズベルト』を筆頭に、『ドワイト・D・アイゼンハワー』
『ハリー・S・トルーマン』、『リンドン・ジョンソン』、 『ジョン・F・ケネディ』
『リチャード・ニクソン』、『ジェラルド・R・フォード』、『ジミー・カーター』
『ロナルド・レーガン』、『ジョージ・H・W・ブッシュ』、『ビル・クリントン』
『ジョージ・W・ブッシュ』、『バラク・オバマ』・・・・・。
『元の世界』では、恐らくだが知らない人は居ないことだろう。
13人の歴代大統領の
主武器は、1メートルほどの漆黒の長剣だ。
「ゴンザレス『召喚剣士』を呼び出したぞ!」
ナナシがその光景を見ながら、怒鳴る様に告げた。
―――――それが合図であったかの様に、乳白色の薄霧の中から無数の上陸舟艇が現れはじめた。
上陸舟艇内はすし詰めにされた『召喚人』の姿があった。
全員が、黒の背広に黒ネクタイ、白いワイシャツ、黒の革靴といったいつもの服装だ。
上陸舟艇内は、初期の『召喚人』、『ブルース・ウイルス』
『ロバート・デニーロ』 『『キアヌ・リーブス』、『ドルフ・ラングレン』で占められていた。
同じ貌の集団が、眉間に皺を寄せて一言も言わず、身動き一つしていない。
そして、今回は人数が恐ろし程多い。
「これが追加された『アビリティ』だ・・」
ナナシの横に戻ってきたゴンザレスが、そう告げる。
「 『増員』という新『アビリティ』がこれか・・・で、どんだけなんだ」
ナナシが、その光景を眺めながら尋ねてくる。
「一つの隊に、10000から20000の増員だ」
ゴンザレスが応える。
「全体じゃなく? 」
ナナシが驚いた表情を浮かべて尋ねる。
「一つの隊だ。 だが、『黒いゴブリン』や
『蒼いゴブリン』を相手にするには、これでもキツイ闘いなることは、覚悟しとけよ」
ゴンザレスは、険しい表情を浮かべながら応えた。




