二十三話 迷宮③
―――――最下層七十一階層と続く下り階段には、『この先進む者 一切の望みを捨てよ』と
刻まれたメッセージがある。
最深部百階層から絶え間なく妖気が流れており、階層に出現する魔物は何らかの形で影響を
受けているためか、攻撃力より、防御力において眼を見張るものがある。
そして妖気の影響か、そこにはRPGゲーム系では最終ダンジョン、ライトノベル系では終盤で登場し、RPGゲームプレイヤーを苦しめ、ライトノベル読者を興奮させる強力で様々な魔物が遠慮なく
うろついている地獄のような世界だ。
そのため、この階層で命を落とす上級冒険者が多数存在している。
『漆黒の銃士隊』を待ち受ける魔物は―――――、 巨大な角と蝙蝠の翼を持つ悪魔の様な魔物を筆頭に、太った腹を揺らし地軸を揺らしながら現れる魔物、不死生物系の魔物の王、異常な瞬間
再生能力を持つ魔物、 骨だけの死骸となって尚魔術で使役される魔物、 亀のような風貌の
超巨大な魔物などなど・・・・。
待ち構えているのは、恐ろしい魔物ばかりではなく、『暗闇地域』、『隠された扉』、
『落とし穴』といった仕掛けが『漆黒の銃士隊』の行く手を阻む。
だが、驚異的な魔物や厄介な罠も、『漆黒の銃士隊』を阻む事はできなかった。
中層階層から特別編成した『混成隊』―――
『特殊班』と『漆黒の銃士隊』の脳内に、ゴンザレスの声が囁く様に響いた。
『最下層の魔物が守備を固める前に徹底的に殲滅してください』
この命令により『特殊班』と『漆黒の銃士隊』は結束をより一層強め、戦意を
高揚させ、統率のとれた進撃と圧倒的な火力で魔物を追い詰めていく。
強い魔物を倒した暁には素晴らしい品物が手に入る事が多く、冒険者が羨む武器を手に入れ
装備面を改善した『漆黒の銃士隊』もいた。
特に『特殊班』は、地上から見ているゴンザレスを戦慄させるほどの活躍を
みせた。
狂猛な魔物の群れに風の様に忍び寄っては寝首をかき、または『漆黒の銃士隊』と連携して、
魔物の群れを分断し、そこから包囲して猛烈な火力で殲滅を繰り返した。
唯一、苦戦したのは最下層で待ち受けている『迷宮主』だ。
最下層を隅々まで探索した『漆黒の銃士隊』は、最後に階層の中央の部屋へと脚を踏み入れた。
部屋の中には、頭部から角を突き出している青白き一角竜がいた。
その翼竜が、『迷宮主』だった。
戦闘は唐突にはじまった。
最初に部屋に入ったのは、『特殊班』だった。
青白き一角竜が無数の光の玉を出現させると、無数の光の雨を『特殊班』に向かって砲弾弾雨の
如く降らす。
そして無数の光の雨に翻弄される『特殊班』の元に、人懐っこい笑みを浮かべた『ロナルド・ウィルソン・レーガン』隊を筆頭に、不敵な笑みを浮かべた『ジェームズ・ディーン』隊、必死の表情を
浮かべる『マイケル・ビーン』隊が、続々と駆けつけてきた。
光の雨が降り注ぐ中、部屋内を縦横無尽に駆け巡り蒼白き一角竜に銃弾を浴びせる。
青白き一角竜は、大気を震わすほどの力を込めた咆哮を上げ、『特殊班』を含めた『漆黒の銃士隊』に
光り輝くブレスを吐いた。
凄まじい轟音と吹き上がる火炎。
上級冒険者でもまともに受けると命を落とすが、『召喚人』の銃士隊にはそれほどダメージはない。
おそらく、『アビリティ』の影響もあるのだろう。
ファンタジーバトル漫画の衣装を着込んでいた
『チャック・ノリス』が、熱と黒煙と炎が覆う中を烈風となって突っ込んでいく。
その手には、銃器ではなく一振りの長剣が握られおり、圧倒的な存在感を漂わせていた。
この最下層で手に入れたその長剣は、中世の騎士道物語や、昨今のRPGゲーム及びアニメに登場している伝説の聖剣だ。
『チャック・ノリス』は、伝説の聖剣を握っていた。
蒼白き一角竜の横腹に、伝説の聖剣を突き刺し、縦横に振るう。
凄まじい咆哮が響き渡る中、さらに前後左右から『特殊班』を含めた『漆黒の銃士隊』が
襲い掛かり、 銃弾を撃ち込まれ、または斬り刻まれ、息絶えた。
ごろん、と蒼白き一角竜は床に転がった。
今回の『迷宮主』は、『漆黒の銃士隊』に倒された。
『迷宮主』にとって今回の不幸は、『漆黒の銃士隊』と闘ったという一点につきる。




