二十二話 迷宮②
「・・・」
ゴンザレスは『迷宮』には潜らずに、 『迷宮』入口付近にある『冒険者ギルド職員詰所』にいた。
詰所の奥で一つのバケツを両手で挟みながら、椅子に腰を下ろしている。
ゴンザレスの視界には幾つか『窓』が開いていた。
開かれた『窓』に映し出されているのは、『迷宮』内で戦闘を繰り広げている『漆黒の銃士隊』が
映し出されていた。
この『機能』は、最初の時から解放されている。
「戦闘能力が一段と上がっている・・・」
ゴンザレスは映し出されている情景を見ながら、ぼそっと呟いた。
『漆黒の銃士隊』は、現在迷宮中層にあたる四十一階から七十階層を徹底的に探索を始めていた。
『アビリティ』機能がなければ上層階層以上に仕掛けられていた『落とし穴』、『隠された扉』、
『暗闇地域』の対策は困難を極めていたかもしれない。
加えて待ち受ける魔物も、上層階層と比べると手応えが違った。
数こそは少ないが受けた傷を回復する魔物を筆頭に、催眠、毒、麻痺、石化など特殊攻撃をしてくる
魔物の数が段違いに増えた。
上層階層で遭遇した魔物もいたが、ほとんどの魔物とは初顔合わせだった。
この『異世界』の冒険者が苦戦する魔物が徘徊してい|た《・
――――『漆黒の銃士隊』は、手応えが違う魔物の襲撃をものともせず、遮二無二反撃を繰り返す。
ある『銃士隊』は、十数匹のオーガ系の魔物、ライオンの頭と山羊の胴体、毒蛇の尻尾のキメラ系の魔物、そして無数に現れたリザードマン系の魔物及び獣人系魔物の襲撃を受けていた。
『ケビン・コスナー隊』 『ジーン・ハックマン隊』 『カート・ラッセル隊』は、その魔物の群れを
相手に暴れ回っていた。
『ケビン・コスナー隊』は、M203 グレネードランチャーを装着した『M16A1』、対テロ用マシンピストル『ベレッタM93R』を吠えさせて、二足歩行で歩くタイガー系獣人魔物に銃弾とグレネードランチャーの
洗礼を浴びせる。
少し離れた場所では、オーガ系の魔物が手にしていた棍棒で、 『カート・ラッセル隊』の1人に
殴りかかっていた。
『カート・ラッセル隊』の1人が、それを『M16A1』で受け止めた。
オーガ系の魔物は低い唸り声を発して、再び棍棒で殴る。
『カート・ラッセル隊』の1人が、鼻で笑いながら再び『M16A1』で受け止めた。
オーガ系の魔物はいらついた様に、棍棒で殴る、殴る。殴る。殴る。殴る。
一つ一つの攻撃が鋭く速いが、防御を続ける『カート・ラッセル隊』の1人は防御を続けた。
しかし、最後の方で『M16A1』と棍棒が同時に折れた。
オーガ系の魔物と『カート・ラッセル隊』の1人の動きが一瞬だけ止まったが、先に動いたのは
『カート・ラッセル隊』の1人だった。
平手をオーガ系の魔物の腹に撃ち込み、床に倒した。
憤怒の表情を浮かべて、攻撃の手を辞めずに倒れたオーガ系の魔物を素手で殴る。殴る。殴る。
オーガ系の魔物が息絶えるまで殴り続ける。
『ジーン・ハックマン隊』は、キメラ系の魔物と闘っていた。
キメラ系の魔物が毒蛇の口から放つ毒霧を掻い潜りながら、不意の猫パンチを貰わないように
正面を避け、『コルトM1991A1』の銃弾を叩き込む。
『ジーン・ハックマン隊』の中には、『迷宮』で冒険者が捨てた武器を持って攻撃を続けている。
槍、長剣、鈍器・・・持っている武器はかなり傷んでいる。
だが、武器は傷んでいるが『漆黒の銃士隊』には武器だ。
『ジーン・ハックマン隊』の槍、長剣、鈍器による速さは、人間でも魔物でも反応ができない音速を超えるスピードだ。
獅子頭を傷んで今にも折れそうな槍で突き刺し、山羊頭をこれも折れる寸前の長剣で切り刻み、
真後ろに密着して、これも今にも使用が出来なくなる鈍器で打撃を与える。
キメラ系の魔物が付近の空気を震わせるほどの咆哮を発しながら、近距離正面にいた
『ジーン・ハックマン隊』の1人に素早い猫パンチを加えた。
並みの冒険者なら吹っ飛ばされているが、標的は『召喚人』。
標的にされた『ジーン・ハックマン隊』の1人は、猫パンチを軽々と受け止めて、舌をチッチッと
鳴らす。
魔物の群れに苦戦をしている所に、別の『銃士隊』が駆けつけてきた。
その『銃士隊』は、黒の背広に黒ネクタイ、黒の革靴という従来の服ではなかった。
駆けつけてきた『銃士隊』の面々は、『ドルフ・ラングレン』 『チャック・ノリス』 『キアヌ・リーブス』の混成隊だ。
『混成隊』全員が、いつもの服ではなく、ファンタジーバトル漫画に登場する衣装を着込んでいた。
登場している道具は身に着けてはおらず、その代りに銃を収めたホルスターを
腰や肩から吊るしている。
どうやら、今回から衣服の変更機能も追加したようだ。
そして、この『混成隊』の面子は何かしらの武術
経験者で構成している。
『混成隊』は、リザードマン系の魔物及び獣人系魔物に向かって隊列を組み、ホルスターから
ドットサイトを搭載した『デザードイーグル』や『S&W M29』を抜き、狙いを定めながら突撃する。
リザードマン系の魔物及び獣人系魔物は次々と銃弾を浴びて吹き飛ぶが、中には『混成隊』に
向かっていく魔物もいた。
殴られ、蹴り飛ばされ、または背負い投げを受け、その後に至近距離から『S&W M29』や『デザードイーグル』の銃弾を撃ち込まれて絶命する。
魔物の群れとの戦闘終了後、『混成隊』と入れ違う様に『ジーン・ハックマン隊』が隊列を組んで、
移動する。
周囲を警戒しながら、移動した先には上層部へと戻る階段があった。
その付近には、『銃士隊』が集まり一時的なキャンプを張っていた。
毛布に包まって仮眠をしている『召喚人』、銃器の手入れを行っている『召喚人』、周囲の見張りをしている『召喚人』の姿があった。
キャンプ場には、折り畳みテーブルと折り畳み椅子も存在している。
そこでは『召喚人』が食事をしていた。
別に妙なものを食している様子はなかった。
『召喚人』が食しているのは、卵を生のまま用いて主食の飯と混ぜて食べることなどから、日本特有の
食文化とされる『卵かけご飯』をむしゃぶる様に食べているだけだ。
食べ終え一息いれた『召喚人』は、お茶を啜っている。
その様子も地上から観察しているゴンザレスは、微妙ともいえる表情を浮かべている。
「うーーん・・・変ではない。変ではないと思う・・・・」




