十七話
一つの『ゴブリン』の巣を、何処で手に入れたか不明なプラスチック爆弾で吹き飛ばすという荒業で粉砕してから数週間・・・。
冒険者ギルド内の関係者以外立ち入り禁止区域のギルド職員休憩室に、ナナシとゴンザレスの
姿があった。
2人の近くには、長身痩躯の闇夜よりも濃い漆黒の色で統一した軽装姿の人物の姿があった。
それは動きやすく音の立たないように身体にぴったりと合っている。
両手を黒い革手袋で覆い、フード付きのマントを羽織っていた。
フードから覗ける貌の所には、素顔を隠すためか仮面を被っている。
能楽や一部の神楽で用いられる仮面を被っており、『嫉妬や恨みの篭る女の顔』としての鬼女の
能面・・・
『般若』の面を被っている。
その姿の人物は、ルービックキューブを弄っている。
そうした異様な光景を眺める余裕は、ナナシが言った言葉で無くなっていた。
「念のためにもう一度聞くが、『長期休暇』が受理されただと・・・」
ゴンザレスは、絞り出す様に尋ねた。
「だから、オルテガもいるじゃないか」
やれやれとした表情を浮かべながら、ナナシが応えた。
「その理由が、『異世界でゴブリンを根絶やしするため』って・・・・そんな意味不明な事で、なんで
受理されるんだっ!? 窄頭っ、お前も何か言えっ」
ゴンザレスがそう言いながら、視線を『般若』の面を被っている人物に向ける。
「何も言う事はないよ。それ処かいつも自分を除け者にしてゴブリン狩りを楽しんでいた事に不満がある。 それと、『ここの世界』では、名前はオルテガだ」
『般若』の面を被っている人物―――――オルテガが低く渋みのある声で応えた。
「ほれ、オルテガもこう言っているだろ。 あ、『長期休暇」の方は、俺が根回したからな。 感謝したまえゴンザレス君」
ナナシがニヤニヤした表情を浮かべながら告げる。
「いったいどんな根回しをしたんだっ!?」
ゴンザレスは、視線を再びナナシに向けて応える。
「そのあたりは気にするな。まぁ、真面目に俺達の班は、派遣された先々で暴れに暴れまくっている
から、その筋の関係者の中に、俺達の貌を
知っている者が出てき始めているため、『長期休暇』が受理されたというのもあるが」
ナナシが告げた。
「・・・・」
ゴンザレスは、無言で疑いの表情を浮かべながらゴンザレスを見る。
「同僚を疑うのは良くない」
ルービックキューブを弄っているオルテガが横から、口を挟んだ。
「そうだぞー 良くない事だぞー」
ナナシが、何処かお道化る様な声で告げる。
「窄・・・オルテガ、お前は信用できるのか!?」
ゴンザレスは、視線を再びオルテガに向けながら尋ねた。
オルテガは、ルービックキューブを弄っていた手を止めると、貌に被っていた『般若』の面を取った。
仮面の下から露わになった貌は――――――――――。
眼・鼻・口もなく、凹凸がない平らな状態の素顔が現れた。
それは、古くから落語や講談などの怪談話や妖怪絵巻に登場してきた比較的有名な日本の妖怪を
彷彿とさせ、小泉八雲の『怪談』の「貉」に登場する妖怪で知られている『のっぺらぼう』だった。
「『この世界』に転移して、なぜか自分だけがこんな貌になってしまった
よりは、十分信用できる」
何処から声を出しているのかはわからないが、低く渋みのある声で告げると、再び『般若』の面を
被った。
「・・・・あー、うん。お前も大変だな・・・」
ゴンザレスは、同情した声で告げた。
仮面を外して出歩けば、この異世界だと確実に討伐対象となることは間違いないだろう。
「戦闘後に金貨を吐き出し、『銃士系召喚魔法士』という意味のわからないジョブの
お前には言われたくはないだろ」
ナナシが、口を挟んできた。
「オルテガならどうなる!? 『航空機召喚魔法士系回復士』って何なんだよっ!!」
ゴンザレスは、オルテガに指を指しながら尋ねた。
「航空機を召喚できて回復が出来る最高の支援ジョブだ。ハリウッドスターを召喚出来る
ゴンザレスの方が摩訶不思議なジョブだぞ」
ナナシは応えた。
――――――この3人目は、『元の世界』での名前は、窄頭英夫。
彼も2人と共に『元の世界』から転移してきた人物であり、『航空機召喚士系回復士』というジョブだ。




