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第三十九話 蠢(うごめ)く肉塊


 

 「第二ラウンドって、妙な表現するわね」

 「生きてこいつと対峙するのは、これで二度目だからな」


 目の前にいる(うごめ)く肉塊の正体は、五賜卿アルデンテが生み出した化け物、もしくは本人。しかし“ニセモノ”の魔女は生き物である事自体を否定する。


 「あれが“生き物”だなんて思っちゃいけない。聖剣による破壊と不死性による再生を三日三晩繰り返し、暴走してしまった──言わば『屍だったもの』よ。今もなお絶えず自壊と修復が行われているようね。私の服や髪に忍ばせておいたいくつかのクスリも呑み込んでいるはずだからかなり不安定な状態ね。存在が安定しない以上、何をしてくるか想像もつかない」

 

 さすが魔女並に人里離れた森に籠って研究してきただけのことはある。場所や時期を考慮すればアルデンテが原因なのは大よそ検討はつくが、暴走やその原理までも見抜いてしまうとは恐れ入る。

 あい変わらず冷静であるようだ。とりあえず変なクスリとやらをいっぱい飲まされないで良かったと思おう。


 彼女の考察はそれだけじゃ終わらなかった。

 

 「あの肉塊は恐らく、足りない魔力を外部からかき集めて屍を産み足しながら巨大化を繰り返しているようね。このまま放っておけば大変なことになるわよ」

 「流石だな先生。でもあんたの知恵があれば楽して勝てるんだろ?」

 

 足を肩幅に開いて剣を握りなおす。

 皮肉混じりの"先生"に、楽しそうに目を細めながら彼女が言う。

 

 「あら、褒めたって逃がさないわよ」

 

 研究熱心でそれを最優先する彼女だからこそ、冷静な分析には信用が置ける。これ程頼もしいオペレーターはそういない。

 

 「どうすれば止められる」

 「暴走によって歪んだ召喚をされた屍たちが、更なる暴走を助長している。本体を倒さない限り止まらないわよ、あれ」

 「その本体は何処に……。あの中か?」

 「そこまでは分からない。確かめて見ないとなんとも」

 「だったら確かめるまで」

 

 聖剣で塊を切り開き、中を調べればいい。

 そう息巻くように踏ん張りを入れた瞬間──。

 不意に力が抜けた。

 

 膝が地面に押し返されて立ち上がれない。

 妙だ。頭がすっきりしない。身体は異常な気怠さを訴え始め息が持たない。いつの間にか体力をごっそり持っていかれた気分だ。

 

 「睡眠薬が効いてるのね……無茶はしないで」

 

 彼女は片時も肉塊から目を離そうとしなかったが、言葉の端に気遣いを感じとれた。

 

 ──なるほど、通りで。

 

 身体は熱を帯び初め、冷たい汗をかかせる。長くは持たなそうだ。

 

 「だからって、おちおち寝てられるかってんだ……」

 

 時間が無いなら、早々に決着を着ければいいだけのこと。

 

 気合いを入れて今度こそ全力で駆け出す!

 

 「はぁぁああああ」

 

 蠢く肉塊に詰め寄り聖剣を深く突き刺した。図体がデカいだけあって動きは鈍い。ど真ん中を抉り貫く。

 

 蠢く肉塊は穿たれた中心部を飛散させ蒸発する。

 流石に身の危険を感じたのか、中心に空洞が生まれてやっと全体がノロノロと後退し始めた。


 「いた! いたぞ! アルデンテだ!」


 中心には人影が確認出来る。小柄な体躯を見ればそれがアルデンテである他ないが、肉の膜は瞬時に修復され顔は確認出来なかった。そこへ、彼女からの声が飛ぶ。

 

 「意識はありそう?」

 「いやっ、感じない」

 「そう。だとしたら肉塊を衣のように纏って内側で力を蓄えてる線は無さそうね……。その賜卿は暴走する肉塊のコアに過ぎないわ! 叩き斬っちゃいなさいキクミネ!」

 

 方針が決まった。

 中心にいるアルデンテを倒せばアレは止まるらしい。ならばそうするまで!

 

 意識が万全じゃない今の俺に、単純でわかり易い作戦はありがたい。ここに於いては誰よりも彼女は信用できる。

 

 「なんだ……?」

 

 逃げに徹していただけの肉塊が動くのを止め、表面を白い何かで満たし始めた。骨にしては液状過ぎて、滲み出る脂にしては透明感がない。細胞を包む膜のような壁が現れる。白ペンキはじわじわと全身を覆っていき巨大化が収まった。しかし諦めたという様子はなく、聖剣でつついてみるとゴムように硬い材質であることが分かった。

 それでも聖剣の斬れ味のまえでは無に等しい装甲。肉塊が水中を切る感覚なら、白いのはバターを切る感覚に似ていた。

 

 「硬く、ないか……」

 「骸で外骨格を形成している……?」

 

 考え込んでいた彼女が、表情を一変させる。

 

 「早急に決着を付けてッ!! あれがもし『防衛本能』による目覚めだと仮定するならば、次にくる目覚めは攻撃性──」

 

 彼女の言ってることは今の俺では理解に及ばないことだが、何やらやばいらしい事だけは分かる。

 外骨格の隙間から触手のような巨大な肢体が六本はえた。その足で自重を支えるようにして蠢く肉塊は歩きだす。それは何故か、迷わず俺の方へとやって来る。

 

 どちらが前で後ろなのか分からない。いや、無数の目を見るにどちらでも無いのだろう。

 

 「──すなわち『闘争本能』」

 

 彼女の予感は的中する。

 突然振りかぶる一本の足。その足の先端を切り飛ばす。狙いは俺。聖剣で溶かされるより前にその質量で潰しに来たのだ。

 

 瞬間的な質量までは聖剣で防ぎ切れない。だが事前に警戒していた分、何とか避けられた。大振りで予備動作もわかり易いのが功を奏した形で助かる。

 

 問題は次。

 横なぎに襲いくる二本目に俺は反応しきれなかった。

 

 「ぐは……ッ!」

 

 軽くあしらわれるように吹き飛ばされ、“ニセモノ”の魔女の傍へと転がる。

 

 それ程痛くはないが唇を切るくらいには効いた。

 皮肉にも "目の覚める一撃" だった。同時に焦燥する。想像以上に危険だと。

 これ以上進化する前に片付けなければ。

 

 飛ばされた聖剣は戻ってきて空中で回収する。

 手を伸ばせばそこに来るという感覚が、ふと思えば染み付いている。

 

 「一人で逃げれるか?」

 「……ゴメンなさい。魔力をたくさん持っていかれた所為で暫く動けそうにないの。援護も無理だけど指示は飛ばせるから、従ってくれたら……その、嬉しい」

 

 俺の袖を掴み、(しお)らしくお願いされた。こうも弱ったニセ魔女を見るのは初めてで、何だか調子が狂う。

 

 「ならオペレーションは任せた」

 

 蠢く肉塊がこちらに肉片を飛ばしてくる前に行動を起こす。

 

 「回避は単純で大丈夫。偏差撃ちするまでの頭脳体はまだ無いはずだわ」

 「わかった」

 「それを踏まえて、懐に飛び込めない時は足を重点的に削りなさい」

 

 言われた通りに動く。簡単だ。

 

 「上よ! 避ければチャンス」

 「……くっ!」

 「全身が連動してるなら威圧が効くはずよ」


 試す。


 「止めても油断しない! 足の付け根から切込みを入れる」


 斬る。


 「聖剣は両手で持つことを意識して!」

 「はあああああ!」

 「右! 後ろ!」

 「うおおおおおお!」


 雄叫びを上げる。眠気を覚ますために。


 「鈍い! 今がチャンスよ!」

 「……ッ!」

 「甘い! 踏み込みが。だから」

 「こうか!」

 「そう! そのまま押し切って!」

 

 その的確な指示は聖剣の扱い方にまで及び熾烈を極めた。

 


 

━━━━━━━━━━━━

 

 ---別視点---

 

 

 

 交代の時間がやってきた。なのにいくら待っても物見櫓から見張りが降りてこない。

 もうすぐレクムの開店時間だというのに何をやっているのか。心配した保安兵の一人が梯子を登り物見櫓の上へと向かう。

 

 「おい、交代の時間だぞ。いつまで見てるつもりだ。もしかして……寝てるんじゃないだろうなぁ?」

 

 保安兵は返事が無いことを疑問に思いつつ、先に見張りをしていた兵を探す。

 

 「お、おい! どうした、何があった!」

 

 すぐに見つかった。だが保安兵は意識なく横たわっている。

 

 「おい! 返事をしろ! おい……!」

 

 倒れていた兵を男は抱きかかえ何度も頬を叩く。

 やがて瞳を揺らしながら保安兵は目を覚ました。

 

 「……ああ……うっ……」

 「おーい! 誰か来てくれー!」

 

 意識は取り戻したが混濁した様子の見受けられる男は、数人係で櫓から降ろされ近くの詰め所へと搬送された。簡単な処置を済ませ寝かされた男の元に、男の妻が駆け付けた。

 

 「あんた! いつまで寝てるつもりだい! 何があったか、みなさんに分かるように説明しな!」

 「……女の子が……女の子に……背後から、不覚を……」

 「はあ? 女の子?」

 「……墓にいると、思ったら……いつの間にか、……後ろに居て」

 「ずっとこの調子なんですよ。デネントさん(・・・・・・)

 「本当だ、信じてくれ」

 

 保安兵でありながら、〈お食事処レクム〉のいち亭主であるその男は、妻に目で必死に訴えかけた。

 

 「……どんな子だったんだいその子は」

 

 デネントは長年連れ添ってきた勘で、夫が変なウソをつくとは思えずとにかく質問した。

 

 「何処かで見た事ある風貌をしていたよ。髪の白い女の子だったことは確かだ」

 「他には?」

 

 夫は両手で目を覆い考え込む。

 

 「……耳だ。耳が頭上に生えていた。獣人族の女の子で間違いないよ」

 

 獣人は獣人大陸に住む。可能性はゼロでないにしても、ここ、亜人の大陸ではそう出逢える種族ではない。それを知る周りの保安兵達が呆れた表情を見せる中、デネントだけは険しい表情を見せる。獣人族。白い髪。女の子。その情報がデネントに思い当たる人物を連想させたからだ。

 

 「墓はどうなってるんだい」

 

 デネントは夫と向き合うのを一旦辞め、後ろに居た夫の同僚に話しかけた。

 

 「はっ、現在は元々交代予定だった保安兵が監視に付いてます」

 「そうじゃなくてだね……。誰も墓を見てない時間があったんだろう?」

 「というと……?」

 

 そこにいる保安兵全員がピンと来ていない顔をする。

 

 「全く危機感の足りない連中だねぇ。誰も見てない時間に遺体を盗まれてたらどう責任取るつもりだい! 早く墓を確認してきな! 今すぐにッ!」

 「「「は、ハイッ!」」」

 

 最も近くにいた保安兵が自ら敬礼し詰め所を飛び出した。それを流し目で見送ったあと、今度は別の者に目を付けたデネント。

 

 「ちょっと、そこの。いいかい?」

 「はい! 何でしょうか!」


 五賜卿討伐パーティーの際、レクムやエナムと共に給仕を手伝っていた二人の女の子がいた。その二人がまさに白い髪の獣人族だったことをデネントは思い出した。


 その二人を連れてデネントに紹介した人物がいる。その人物なら何か知っているに違いない──。

 

 「かなみのお嬢ちゃんを探して来てくれるかい? あの子に、聞かなきゃいけない事が出来た」

 

 


━━━━━━━━━━━━

 

 ---珖代視点---

 

 

 

 重りにしかならない事を悟ってか、蠢く肉塊は鎧を脱ぎ捨て機動性を重視したフォルムへと進化を遂げた。

 

 「ダメだ……! キリが無い……」

 

 それだけじゃない。足の数が十二本に増えている。削っていこうにも次から次へと増えていったら終わりが見えない。

 

 脳みそは既に考えることを放棄したがっている。

 瞼が重い。思考が鈍い。途絶しかける意識は、唇を噛んで呼び覚ます。こんな精神状況じゃ一瞬の隙を衝いて本体を攻撃するなんか、砂漠に落ちた針を探すより困難。先程のようなアドバイスが欲しいが彼女も長らく喋っていない。

 

 助けを求めるように後ろを振り向いた瞬間。

 



 「……」

 



 彼女がいないことに気付いた。

 



 もたれかかっていた木に姿がない。いつからだ。

 一人では移動出来なかった筈にも関わらず、何処にもいない。

 

 「……クローフくんか?」

 

 返事はない。クローフくんが安全な場所に運んだという線は無くなった。

 

 となればどこに──。

 また一つ考えなきゃいけない事が増えた。

 蠢く肉塊は今もなお勢力を強めている。

 

 ──いや待てよ、どうして勢いが衰えない……? 五本も六本も足を切り落としても、まるで何処からか魔力の供給が成されているみたいに足が増えて……まさかッ……!

 

 “ニセモノ”の魔女が忽然と姿を消した事実から逆算する。

 

 どうしてこんな単純な事に気付けなかったのか。どんどん鈍くなっていく自分の思考に腹が立つ。

 彼女の居た木の根元まで移動すると肉塊の攻撃は激しさを増す。

 

 間違いない。

 蠢く肉塊は何らかの方法で彼女を隠し、魔力を奪っているのだ。そして、彼女を奪われまいと攻撃してくる。という事はつまり、──近くにいる。

 

 ふと見上げた木々の間に、導線のようなくだを発見した。そのくだを追って目を移すと、木の上で吊るされている彼女を発見した。彼女は外套を脱がされ、腕よりも細い幾つものくだに巻かれていた。下から見るに、意識があるように思えない。くだは幾つもの木の上を電線のように張り巡らせており、全てが蠢く肉塊にまで繋がっているように見えた。くだを通して彼女の魔力を吸っているものと考えていい。通りで力が衰えないハズだ。

 

 俺は聖剣を投げ飛ばしてくだを切断し、落ちてきた彼女を奪い返した。得体の知れない液に塗れていたニセ魔女は気を失ってはいたものの、息はしていた。捨てられていた外套をもう一度掛けてやる。

 窒息させるためか魔力吸収のためか知らないが、くだを口に突っ込まれていたようだ。通りで声も出せなかった訳だ。

 

 肉塊の供給源は絶った。このまま反撃に転じたいところだが、彼女を放っておけばまた同じことの繰り返しになる。ここは、奴の目に届かない場所へ一時避難するのが良さそうだ。

 両手にニセ魔女を抱えたまま、俺は遠くへ逃げる事にした。何処でもいい、どこか遠くの見つからない場所へ。

 

 「ダメか……!」

 

 逃げようにも肉塊(アレ)には三百六十度見渡せる無数の目が付いている。出来るのはせいぜい木を背にして視界から外れる程度のみ。

 

 上手いこと木で隠れられたが、迂闊に動けばバレるのは必至。無数の目を持っていても一度見失ってくれれば、気持ち的には有利になる。彼女を木の裏に隠して座らせ、再びこの身一つで蠢く肉塊の前に飛び出した。

 

 「こっちだぁ!! 魔力を奪いたきゃ来い!」

 

 蠢く肉塊にとって聖剣を持たない俺は突然現れたご馳走の様なもの。一瞬、外套を剥ぎ取って彼女に成りすまし近付く作戦も考えたが、女性から衣類を剥ぎ取るのは後々自己嫌悪に陥りそうだったのでやめた。


 一斉に全ての目がこちらをむく。思った通り、たくさんの足を絡ませながらドバドバと肉薄してくる。


 「な、しまった!」


 思っていた以上にスピードの速い無数のくだに足を取られ、拘束されてしまう。しかも背後には木。逃げ場がない、潰されればお終いだ。

 

 激しい大移動をしながら大地を枯らす疫病神の大突進──。そこに聖剣が割り込むように飛来し、俺に巻き付いていたくだを全て切って手に収まる。

 

 勢いに乗ったヤツはもう自力では止まれない。聖剣に気付いていようがいまいが最早関係のないこの距離。

 

 ──残念だが俺に魔力は欠片もないんだ。食わせてやれるのはコレくらいさ。

 

 蠢く肉塊に矛先を向け、腹に据える聖剣。


 ドドドドドド──!!


 俺を押し潰す勢いでやってきた計り知れない質量……! 衝撃で木が、森が、大地が揺れる。



 やがて、直撃した。


 

 酷い悪臭──。

 全身はチミドロ。眠気もかなり吹き飛んだ。

 


 肉塊は聖剣に触れた瞬間からキレイに真っ二つに別れ、威圧でも食らったかのように急停止。理由は分からないが、中心にいた少年の腹に聖剣が刺さった瞬間だったと思われる。

 

 ドロドロと肉塊は崩れ落ち、中にいた少年は意識を取り戻したのか、一歩、また一歩、後退していく。


 アルデンテの腹の風穴は漆黒。貫通はしていないが血の一滴も流れ出さない。完全に切り離された肉塊は行き場を見失い、うねりながらやがて蒸発して消えた。

 

 全貌が露わになった少年は前と少し外見が違っている。上裸姿で全身力なく痩せこけている。それに、見たことがない黄色い耳としっぽが生えていた。

 透明な液にまみれた少年はうつむき加減で乾いた唇を震わせる。

 

 「……まさか、キミに助けられるとは、ネ……」

 「それが、妖狐ほんらいの姿か」

 「なんだ……。そりゃ、知ってるか。分かるかイ? ただ生きてるだけで、他と違うというだけで、罵られ小石をぶつけられる人生。どれだけ見繕ってもどこまで行ってもボクはたち(・・・・・)は理解されない。何故なら人ならざるものだから──。これがその “人外の証” さ」

 

 アルデンテはふらふらとしっぽを掴んで優しい手付きで撫でている。

 

 「キミたちに戦乙女(リア)を理解できる日は来ない。苦悩も価値も、考え方だってそう。だから、ちょうだい。あの子をちょうだい」

 「今から死ぬお前に、あげるものなんてない」

 「だまれ……リアはボクのものダ。あの子を理解してあげられるのはボクたちだけなんダ。だから、殺してでも奪い取る」

 「お前が殺し従えてきた多くの屍のためにも、消えてくれラッキーストライク」

 「その名でボクを呼ぶなッ! ……あいつの汚した名を、ボクは引き継ぐつもりは無い」

 

 突然取り乱した理由は分からないがどうでもいい。終わらせる為に歩み寄るとアルデンテは尻もちをついた。

 

 「ひぃ! 頼むよ、今回だけは見逃してヨ!」

 

 無様に命乞いをする。

 

 「お前は命乞いするヒトたちを見逃して来れたのか? 違うよな」

 「お願いだァ! 死にたくなァい!!」

 「お前が死ねば二十万もの魂が解放される。もう、死者たちを眠らせてやってくれ」

 

 必死に後ずさるアルデンテ。数歩で追い付いて、また後ずさる。

 

 「もう、絞りカスも魔力が残ってないんだ! あやまる、あやまるから許して! ねぇって! ねってば!」

 「カクマルやスケインも、これで安心して眠りにつけるってもんだ」

 「痛いのはイヤなんだぁあぁ!!」

 「苦しみながら死ね」

 

 

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