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第三十七話 一難さって人攫い

後編スタート。


 ---珖代視点---


 


 ……突然だが、こんな状態について考えてほしい。

 

 もしも自分が聖剣に選ばれた英雄で、その聖剣を抜きに行く必要があるとした場合──。

 城の最奥で台座に収まる聖剣と、森の最奥に違和感なく鎮座する聖剣、どちらを取りに行きたいか。

 

 その場合、俺は森派と答える。

 

 自然に取り残された人類の叡智、希望の標(メインウェポン)が森に溶け込み眠る姿は想像に事欠かない神秘の芸術。どれだけ時が流れようと主を待ち続け、動物達の憩いの場と化した森と共存していくヒトのチカラ。カミのミワザ。そこだけ世界が切り取られたような、そんな空間が聖剣を中心に広がっているシュチュエーションを想像するだけでロマンが溢れて止まらない。

 

 そして──、今まさに思い描いた光景(ロマン)が起きようとしている。

 まさかそんな場面を自らが体験する日が来るとは。夢にも思わなかった。

 

 カッコつけて勇者と別れたが、実を言うとあの時からずっとソワソワしている。それは必ずしも聖剣だけが原因ではなくて、ピタのお礼というのが無くなり、実質ユイリーちゃんと二人きりで過ごすことになった休日をどう過ごせばいいのか悩んでいる節もあった。

 そうこうしているうちに〈枯れない森〉に足を踏み入れる。


 風に揺らぐ木の葉。柔らかな日差し。この森は荒野にあるにも関わらずなぜか枯れない。癒される。

 

 ここは森の最奥。

 頬を撫でる乾いた風、光。

 木々のさざめく音、匂い。

 ゆったり流れる空気、時間。

 うっすら聴こえる鳥の(さえずり)

 その全てに導かれるように無機質で優雅な聖剣を見た。


 うん、思った通り。

 ロマンは目の前に広がっている!

 

 信じらない。ウソみたいな一枚絵。おとぎ話でもゲームでもなく、実際に俺の前に展開されている。とくに準備もせずやって来てしまったが、後悔は消し飛んだ。ただ写真を撮っておけないのが本当に悔やまれる。


 「よし、やるか」


 感傷に浸るのはこれくらいにして、俺はこれから聖剣に挑む。

 聖剣の下の盛り上がった土に埋まるアルデンテはどうなっただろう。今さら気にしていてもしょうが無い。と、俺は聖剣に近付こうとして──、

 


 「うおおゥっ!?」

 


 ──そこで罠に引っか掛かった。

 


 「……う、う」


 弾みで頭を打ちつけ一瞬気を失っていたが、自分が宙吊りで逆さまなのは分かった。


 気分は最悪。上げるだけ上げて一気に落とされた気分。現状は吊し上げられている訳だがテン下げだ。

 

 冗談はさておき。

 今は抜け出すことを考える。

 

 右足に縄が巻き付き、逆さ宙吊りにされてしまっているこの始末。おそらく地面に設置してあった罠を迂闊にも踏んでしまったのが原因だろう。左足と両腕が自由で助かった。逃げ出すには縄を切る他なさそうだ。


 「しまった、こんな時に置いてくるなんて……」


 〘トクホーク〙があれば造作もないことだが、縄を切る為の武器を俺は持参して来なかった。

 

 誰か居てくれたら良かったのだけど、今は一人。

 仕方がないので腹筋だけで起き上がり縄を解こうと何度も試みるが、固く結ばれていてなかなか解けそうにない。暫く縄と格闘するも、腹筋を全て使い果たし起き上がる事もできなくなった。そんな様子を見かねたように木の影から人が現れる。

 

 刹那、脳裏によぎる危機感。

 

 これは動物を狩るためではなく、ヒトがヒトを貶めるための罠だったら? それも聖剣の前に仕掛けられていたことを考慮すると、俺や勇者を狙った犯行に違いない。

 命を狙われるような節は……まあ意外とあるが、最悪のパターンはアルデンテ側の報復という可能性だ。もしそうなら、俺は手も足も出ずに素焼きにされてお終い。ジ・エンド。

 と、思ったが現れたのは予想もつかない人物だった。

 

 「あら、ケツ刺しの英雄サマ。昨晩はどうしたのかと思えば、こんな所に居たのね」

 「お前はっ……! “ニセモノ”の魔女っ! おい。これっ……、お前のワナか! どういうつもりだ」

 「あら、たまたま偶然通り掛かっただけのワタシが犯人だとでも言いたげね」


 知り合いで少し安堵したものの、偶然通り掛かったにしては出来すぎている。どうしてこんなことを……。


 「他に誰がいる、俺が掛かるまでその辺の木に隠れて待ってたんだろっ! じゃなきゃタイミングが良すぎる」

 「……ほん。まあ誰も居ないようだし隠す必要もないわね」

 

 女は勿体ぶるように自分の髪をかきあげる。金髪に隠れた片目がチラリと見えた。

 

 「これから、アナタを誘拐します」

 「はぁ!? 誘拐!?」

 「お仲間はみんな強いものねえ? だから、アナタが一人になるこの瞬間をずっと待っていたの」

 

 この発言から確信する。

 これは俺だけを狙った犯行なのだと。

 

 「まさか、昨日は俺をさらう気で宿に連れ込もうとしてたのか……?」

 「『連れ込もう』なんてひどい言い方。でもその通りよ。まさかハニトラ回避(すっぽか)されるとは思わなかったけど、原始的で単純な罠には掛かるおマヌケさんで助かったわ」

 「な、……おろせっ!」

 

 助けを呼ぼうにも周囲にヒトがいない場所で大声を出しても意味が無い。となるとベルを取り出したいが、目線を外させるための咄嗟の言い訳が思い付かない。

 

 「森の外れにクローフが馬車を停めて待ってる。だから大人しく、ね?」

 

 ──クローフくんを従わせてまでこんな事を?

 

 「……どうして俺にこだわる」

 「前にも言ったでしょ? アナタが欲しい……って」

 

 そう言って彼女は近付いて、俺の顔を優しく包み込むように触れた。顔を固定されたら見たくなくても目が合ってしまう。向こうのペースに乗せられてはいけない。精神面だけでも優位でいなければ要求を呑まされてしまいそうだ。

 

 「そんな目で見ても、助けてあーげないっ……」

 

 

 その瞬間。

 

 

 お互いの唇が触れ合う感触があった。



 「……っ…ん……!」

 

 

 一秒か十秒か一分か──、時間の感覚は判らない。

 


 触れ合う熱と溶け合う甘さ。自然と視界は狭くなる。

 

 

 とにかく、切なさに息が詰まりそうだった。

 

 

 永遠にも感じた刹那はやがて終了した。

 

 

 (とろ)けた脳に酸素が送られ、満たされていたモノが糸を引いて消えていく。

 そして我へとかえった。

 

 「ななななな、なにすんだよっ……!」

 「………こ、こんなことでいちいち驚くなんて、お子ちゃまなのね……アナタは」

 

 腕を組んで見下そうとしてくる。

 動揺を隠しきれないのはお互いさまに見えるが……そうじゃないと言いたげだ。

 それよりも何か違和感があった。唇を優しくこじ開けられ……感じたことの無い何かが押し込まれ喉を通るような、そんな違和感。

 

 思えばキスなんて初めてだ。しかもこんなにも濃密でシビれるヤツをいきなり……。それとも俺が知らないだけで、これが普通のキッスなのか。

 

 「……き、気持ちは嬉しいが、その気持ちには応えられない」

 

 相手からのキス……これは告白とも取れる。だからしっかりと目を見て伝えた。

 

 俺には色恋沙汰よりやるべき事がある。

 行方不明者達を探し出し、償い、世界を救うという壮大で大切な使命が。決して彼女が出来そうにないから諦めているとかそういうのでは無いのだ。決して。

 

 悲しませたくないが男として、ここはスパッと断らねば。

 

 「ファーレン村で二人のんびり暮らすのも悪くないけどそれは今じゃない。ごめん」

 「……は、……はぁ?」


 ちょっと間があってから、彼女の顔が徐々に赤みを帯びはじめた。プルプルと震えだしている。

 泣かれてしまうと困るがなんと言えば傷付けずに済んだのだろうか。

 

 「ば、ばかじゃないのぉ!? 研究対象のクセに調子乗ってんじゃないわよねっ……! いい? ワタシはねぇ、能力研究の一環としてアナタが欲しいだけなんだからねーっ! ねーっ!」

 

 前髪で隠れた片目が何度も見てしまうほど、取り乱す慌てよう。俺の知ってる彼女にはないギャップに思わず見入ってしまう。

 

 攫う理由は研究のため。つまり告白は俺の勘違いだったと……。震えていたのは泣くのを我慢していた訳ではないということか。うん、勘違いしていたと思うと急激に顔が熱くなるぞ。

 

 「じゃ、じゃあ今のキ、キス……はなんなんだよ!」

 

 逆さ吊りの影響もあってか、顔の熱さは触れなくても分かる。異常だ。

 俺の質問に彼女はすかさず反論する。

 

 「いいい今のは、睡眠薬を口移しで呑ませただけなんだからキスの内に入らないわよっ。……入らないわよね?」

 

 しらん。自信無さそうに聞き返されても困る。ドキッとして困る。

 

 「睡眠薬? なんでそんな物──」

 「暴れられても困るものだし?」

 

 さっき感じた違和感の正体は恐らくそれか。

 キスで俺の思考を鈍らせて、口をこじ開け、睡眠薬を流し込んだのだろう。

 

 一体いつから睡眠薬を含んでタイミングを見計らっていたのか。遡って考えていくと、ある不自然な行為に思い当たる。さっきの髪を触る仕草は忍ばせたクスリを取り出して自分の口に入れる為の行為だった訳だ。


 「てか普通に飲ませれば良かっただろ!」

 「う、うるさいわねぇ!! バレちゃいけないと思って、思わず自分の口の中に隠しちゃったのよ……! ま、まあ? その甲斐あってか、いとも容易く飲ませられたから間違いだったとは思わないわ。け、怪我の功名ってやつね! ただ、一つだけ教えて欲しいのだけど……」

 

 小さく縮こまる彼女が上目遣いに聞いてくる。いや、景色が逆さまの今は下目遣いと表現するのが正しいか。

 

 「キスってそのぉ……減るものではないわよね?」

 

 減る、とは……何が? 俺に聞かれても分からない。なんせした事が一度もないのだから。思わず彼女の艶やかな唇に目がいってしまう。

 

 「さ、さぁ……?」

 

 普段通りを心掛けても、答えながら咄嗟に目を逸らしてしまった。

 

 「アナタ、もしかして……」

 

 怪訝な顔で“ニセモノ”の魔女は俺を覗き込む。

 

 「しょ、しょーーがないだろ! こんな顔じゃモテたことないしキスなんかした事ないっての! 悪いかよー!」

 

 これは単なる逆ギレだ。勢い余って、『年齢=彼女いない歴』をぶちまけた怒りと悲しみの発言。

 考え無しにとんでもない事を口走っていることだけは分かる。残るのは虚しさだけだ。それでも抑えること出来なかったこの想い──、プライスレス。

 

 「なら、キスカウントの消費はなかったことにしましょう。その方がお互いにとって都合がいいでしょ。いい? 忘れなさい」

 

 ──消費ってなんだ? ……キスって制限があるものなのか?

 この世界では……いや、キスには世界関係なく代償がつきものなのかもしれない。

 迂闊にしてこなくて良かった……。

 

 「にしても、どうしてこんなことするんだ」

 「だからもう忘れなさいってぇ……!」

 「いやそっちじゃなくて。俺を連れて行きたかったんなら他にやりようは幾らでもあったんじゃないか?」


 魔女は自分の早とちりだと気づくと俺をポコポコ殴ってきたので、両手をつかみ取る。


 「だって……注射器は勿体ないし、刺す時暴れられたら危ないじゃない」

 「いやだから、眠らせ方でもなくてだな……。話し合いとかあったろ?」

 「だって、相談してもファーレンに来てくれないと思ったから」

 

 彼女は子供のように拗ねてしまった。

 要するに、相談は無駄だと思ったからなるべく俺を傷付けずに連れて行く為に睡眠薬を使おうと考えた訳か。気を使う所が間違っていないか?


 今さら考えてもしかたない。俺は心を決めた。

 

 「……行けばいいんだな」

 「え!? ……んん、……本当に問題ないのかしら?」

 「その前にかなみちゃんにだけ連絡させて欲しい。期間はどのくらいなんだ?」

 「十年」

 「そうか十年………十年!? いくら何でもそれは──」

 「そう言うと思ったから攫うことにしたのよ」

 

 呆れて反論も出来なかった。……というか、話し合いが無理なら強行手段に打って出るというのは、発想まで至ってもなかなか出来るものじゃない。むしろあっぱれだ。

 

 ──そろそろ頭に血が集まり過ぎて思考が定まらなくなってきたぞ。まずい。

 

 「……とりあえず、一旦降ろしてくれないか? ずっとこのまま吊るされてるのはさすがに」

 「それもそうね」

 「じゃあ、切ってくれ」

 「……?」

 

 彼女は首を傾げる。おかしな事は何一つ言っていない。

 

 「ロープをだよ……まさか、切るものは?」

 「ないわよ。最初の罠に引っかかると思わなかったし」

 「幾つもあったのかよ……罠」

 

 罠はたくさん用意してあっても、ナイフの一本もない? 驚きを通り越して頭を抱えるしかない。

 

 計算高くスグ実行に移すクセに、何処か抜けていてそもそもがズレている。薫さんのように鋭く見えて実のところ、緊張している時のユイリーちゃんみたいなポカを平気でやらかす。ユイリーちゃんと違うのはそれを悪いと思っていないとこだろう。いや、気づいてすらいないとこだ。

 普段からこうなのだと思うと、クローフくんの気苦労は絶えなさそうだ。本当にどうして付き従っているのか不思議に思えてくる。

 

 「……そこに、ちょうどいい聖剣(はもの)が突き刺さってるから持ってきてくれないか」

 

 指で方向を指し示してさらりと頼む。

 

 「ムリよ。あれ、聖剣じゃない。扱えるのは選ばれた者のみでしょ」

 「まあ重いかもだが、持ってくるだけなら誰でも出来る。抜いたら俺に渡してくれるだけでいいから」

 

 叶うなら聖剣は自分の力で引き抜きたかったが……これしか方法がない。ここは、聖剣がさっそく役に立ってくれるとこに感謝しておこう。

 

 「切ってスグ逃げたりしないわよね?」

 「俺と目を合わせなきゃ大丈夫だ」


 自分の仕掛けた罠に注意を払いつつ“ニセモノ”の魔女は聖剣を抜きに行った。

 聖剣の鍔に手を掛け、テコの原理を利用するような風情のない抜き方を試してみせる。

 

 それを見て、ちょっとだけ未練がある自分を感じてしまう。本来ならあの聖剣を抜くのは俺なのに……。ただ落ち込んでる場合ではない。

 

 ──今だ。今しかない。

 

 「……ふぁあ〜眠くなってきたなぁ」

 

 睡眠薬の効いてきたフリをしながら俺は懐からベルを取り出し、向こうから見えない位置で激しく振った。

 

 〘選好の鐘〙を聴かせる対象は勿論かなみちゃん。俺にすら鳴っているか分からない。

 まだ朝の早い時間。寝ている可能性は大いにあるが、一番頼れる人物にSOS警鐘を響かせる。

 

 緊急時の対策を考えていなかった為に失敗した前回を反省し、かなみちゃんには鐘が聴こえた場合に取るべき行動を予め指定しておいてある。

 

 まず始めに、俺の日記を読む事を許可。一日の終わりに次の日の予定も書いてある日記だ。日記は常に部屋に置いてあるのですぐに確認してくれる筈だ。それでも俺の居場所が掴めなかった場合は┠ 叡智 ┨の使用もお願い済み。万が一それでもダメだった場合は、情報屋の顔を持つ〈レイザらス〉が総力をあげて探してくれる事になっている。

 要するに、かなみちゃんに鐘の音が届いた時点で俺の身の安全はほぼ保証されたも同然ということだ。

 だから力の限り振りまくる。

 

 ──届け、鐘の音っっ!!

 

 


━━━━━━━━━━━━

 

 ---別視点---

 

 

 

 起き抜けに眠気眼を擦る少女はパジャマ姿のまま、まくらを小脇に抱えた状態で男の部屋をノックする。

 

 「珖代、入るよー」

 

 中には誰もいない。男は外出中のようだ。

 

 キレイに整頓された机の上には男の私物と思われる日記が目立つ位置に置かれていた。少女は手順に乗っ取り日記を手に取ると、小脇に抱えたまくらと入れ替えるようにして自室へと持ち帰り、急ぎ身支度を済ます。

 

 他人の部屋にいきなり入って日記を持ち出すとはなんたるデリカシーのない少女か、というのは誤解はしないでほしい。少女は自分にしか聴こえない鐘の音を目覚まし代わりに聴いて訪れたのだ。その音色は〘選好の鐘〙以外には有り得ない。それを聴いた時点で、事態を窮する何かが男の身に起こったことを意味する。少女はその事態を解決する手段として、やむなく無断で部屋に押し入ることにしたのだ。

 

 これは不運な男を助けるための必要な手順であり救済の第一歩である。準備を終え、リビングに出た少女は台所で料理する薫に話しかけられた。

 薫は少女の母親にあたる人物だ。

 

 「かなみ、そんなに急いでどうしたの?」

 「ベルの音を聴いたの。珖代に何かあったかもだから、行ってくるね!」

 「朝ご飯はいいの?」

 「うん、あとで食べる。じゃ行ってきまーす!」

 

 自室から母娘のようすを見守っていた髪ボサボサ寝起き悪魔外道解毒済み元女神は少女を見送ろうとサンダルを履き玄関へ移る。

 

 「カナミーン! 探しに行くなら、┠ 瞬間移動 ┨を使った方が速いですよ〜」

 

 うっかりしていたとかなみは顔に出すと、顎を引いて頷いてスキルを使用した。

 

 「馬車には気を付けてくださいね〜……!」

 

 そう告げて手を振るリズニアに行ってきますと手を振り返し、少女はスっとその場から姿を消した。

 

 少女は日記に目を通して、そこに関連する場所へ向かった。少女の手にした日記の最新部分にはこう記さている。

 

 

 ──《明日の予定》──

 

 ・朝の日課は休み

 ・早朝からカクマル、スケインの墓参り(カクマルにサングラスを渡す)

 ・勇者に会いにいく(朝のうちに)

 ・ギルドに顔を出す

 ・マスターママのいるバーで新・威圧派生の有無について訪ねる

 ・正午まえにピタ、ユイリーちゃんと中央広場で待ち合わせ

 ・からの三人で食事、もしくは街巡り(デートではありません)

 

 ────── ・ ───────

 

 最後の一文に少しだけ鼻が疼く。

 男の一日の行動を追うように蝦藤かなみは移動する───。

 

 先ずは二人の勇敢な騎士の眠る墓へ。

 

 

 

────────────

 

 

 

 「ん? なんだ?」

 

 物見櫓(ものみやぐら)に立つ保安兵は突如として荒野に現れた人影を見逃さなかった。双眼鏡を使い、二人の墓の前に立つ人物の正体を探る。そして、それが少女であることに気付いた。

 

 「あれは、一体……」

 

 背丈から見て、およそ十才前後と思われる少女……あのネコミミ、どこか見覚えがある。

 

 何も無い荒野にふっと沸いたように現れた少女は、キョロキョロと辺りを見渡し双眼鏡を覗く保安兵とバッチリ目を合わせた。


 「気付いたのか?」

 「こっちこっち」

 「え? うわぁぁぁ」

 

 恐怖に背後を貫かれるように、保安兵は後ろを振り向き倒れた。

 

 たった今、双眼鏡の先にいたネコミミ少女がすぐそばに立っている。

 

  

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