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第二十四話 魔王の会議も多分こんな感じ


 ~ピタ・トメサイド~




 「なんだ……この奇妙な傀儡は?」

 「ワタクシ達には目もくれずに、まっすぐ向かっていますわね」

 

 遺体を安全な場所へ移したあと、勇者を探しに街を出た二人の少女は、目の前で隊列を組みながら行進するおもちゃの兵隊さん達を不思議そうに眺めていた。

 

 兵隊さんは足を揃えてアンデッドの群れに向かい進んでいる。行列の最後尾にピタは目を向ける。

 

 「向こうの岩陰から来ているようだな」

 「ピタ、何かのマークのようなものがありましてよ」


 二人はありの行列を見守る子どものようにしゃがんで兵隊さんを観察する。


 「これは、レイザらスのロゴマークだ! 珖代にもらったトランプやクマちゃんにも同じモノがあったから間違いない」


 ピタは思い出したようにそのマークを指差して言った。


 「よく分からんが、これもレイザらスのおもちゃみたいだな……」

 「なんにせよ、敵の兵器でなくて良かったですわ」

 

 そっと胸を撫で下ろす二人の前に突如、ボロボロの兵隊さんが数体、転がり込んできた。どれも斬られたような跡があり完全に動きを止めている。

 

 意図的に破壊されたものだと二人は悟る。

 行き着く疑問さきは誰が壊したか。

 その正体はスグに知ることになる──。

 

 「そこなお嬢さん方、この傀儡を造りし人口召喚石の在り処を知らないか」

 「ウソついたら怒るから、ちゃーんとホントのこと話すよーに」

 

 腰にぶら下げた刀に手をかける男とふんぞり返る獣耳ケモみみ少女は、虎視眈々と獲物を狙う獣のような目を向け訊いてきた。ピタ、トメ、警戒する。

 

 「見ず知らずの不審者に、おいそれと教えるほどワタクシは優しくありません」

 

 トメはそう言って道を塞いだ。ピタも無言で並ぶ。

 

 「それならそれでいいけど。ねぇ? モテゾウ」

 「ああ。立ちはだかるとあれば、鶏が如くクビを撥ねるのみ」

 

 

 長身痩躯(ちょうしんそうく)の男の手元が一瞬輝いた。


 その閃光は真っ直ぐトメの喉に向かう。

 

 

 ガキィンッ────!!

 

 

 ピタが光速にも届きそうな刀に肉薄し受け止める。

 

 最初からピタは大剣ではなくダガーを使用していた。それは彼女が本気である事を意味する。相手がそれほど危険であるという証拠でもある。

 

 「ほう。〝視えた〟か。鷹のような目を持つ女は嫌いではないぞ」

 「ふん、当たり前だ。何が目的かは知らんが、お前達を通す気は完全に失せた。いいぞ、付き合ってやる」

 「ならば誓いを立てよう。永遠の殺し合いを、死がふたりを分かつまでッ──」


 剣戟の応酬が始まった。




━━━━━━━━━━━━━

 

 ---珖代視点---

 

 

 

 俺は今、薄暗いレクムの中にいる。

 緊急事態という事もあってレクムには様々な有識者が集まって作戦会議をしているのだが、俺は勇者が置かれている現状について話した。

 最も反応が大きかったのは聖剣の所有者についての話で──。

 

 「な、なに!? では勇者殿は聖剣が使えないというのか……!」

 「……はい」

 「そして最悪なことに、所有者に選ばれたコーダイさんも聖剣をすぐには使いこなせないと?」

 「聖剣が一年やそこらで所有者を変更するなど前代未聞じゃないか」「では一体、五賜卿は誰が倒すんだ」「やっぱり、追い払うしかないんじゃないか?」

 「そうだな」「それがいいか」

 

 仕方ない事ではあるが、お偉いさん達がざわつき始めた。

 作戦会議とは名ばかりで、最初から全て勇者に任せるつもりだったからだ。

 

 重鎮たちの頼みの綱だった勇者は病み上がりですぐに戦える状態にない。おまけに聖剣が選んだのは剣術を少しかじった程度の俺。攻略に聖剣が必須だとしたら、倒すのはまず絶望的に厳しい。アルデンテを追い返す方針を取ろうとするのも頷ける。

 

 陽射しが当たっているのは俺の席だけなので皆から俺は見えているが、俺からは誰が誰と話しているのかよく分からない。リズが見てたアニメで、敵の幹部達が暗がりの中、円卓を囲むシーンがあったりしたのを覚えているが、こう体験してみると不便にしか感じない。

 ユールに人が居ないと思わせる為の策だと言うが、さすがにカーテンは閉め切らないでよかったと思う。

 

 ──レクムにも電気、通しておくべきだったかなぁ……。

 

 今は席の順番と聞こえてくる声で判断するしかない。

 

 

 席順はたしか──、

 

 

 上座、第一席 【ユール町長】

 テッペン・トッタス



 上座、第二席 【ユール元貴族領主】

 カークン・ハート・ワトシン



 上座、第三席 【王都視察隊隊長】

 レオナルド・ブラックスリー



 上座、第四席 【ギルドマスター】

 オウルデルタ・バスタード(兄)



 上座、第五席 【交易商会会長】

 代理者出席中



 上座、第六席 【ユール保安兵士団団長】

 オウルデルタ・ガードナー(弟)



 上座、第七席 【薬品商工会ユール代表】

 アモンド・オシモンド・スキー



 上座、第八席 【金物商工会会長】

 代理者出席中



 上座、第九席 【きのこ商会会長】

 オカモニア・タッチポット



 上座、第十席 【S級(・・)冒険者】

 ワイルド・ソール・メン・ダットリー


 

 

 それから──、


 

 

 下座、第一席 【レイザらス会長】

 レイ



 下座、第二席 【観光協会会長】

 代理者出席中



 下座、第三席 【織物商会ユール代表】

 ウルゲロ



 下座、第四席 【お食事処レクム女主人】

 デネント・ファイヤーランド



 下座、第五席 【れいザらス本店店長】

 中島茂茂(しげしげ)



 下座、第六席 【勇者】

 水戸洸たろう



 下座、第七席 【セントバーナード】

 瀬芭栖(せばす) 陽姫(ひなひめ)


 

 そして町長との対面位置に座る、


 下座、第八席〖聖剣使い代行〗の俺がいる。

 

 ──師匠の名前、まんま過ぎるけど、逆から読むとタバコみたいだな……。


 下座三席より位の高い人の後ろには、秘書や補佐官、用心棒などが立ち並んでいる。代理者は名前も分からないが、上座に座る数人を除けばほぼ知り合いで固まってる。これなら俺の発言も少しばかり力がありそうだぞ。

 

 「しかし、どう追い返すというのだ! 相手はあの五賜卿(ごしきょう)だぞ!」「ええい、誰か、術は知らんのか!」

 「向こうの戦力次第ではいけるのではないか?」「何を持ってそう断言できる……!」「断言などしていない!」「どちらにせよ使えるものは全て討伐にあたらせるしかあるまいて」「何を仰る。ここを死守する者も必要ですぞ」「そもそも、やつ自身の強さはどの程度なんだい」

 

 顔が隠れているので余計な貫禄がにじみ出てた重鎮達も、これだけ混乱していると小物感が急に出てくる。


 コンっコンっコン──。

 

 会議の流れに一抹の不安を感じていると、町長が自分の杖で床を三回小突いた。

 

 途端に場は静まり返る。

 

 「落ち着きなさい。まずは状況を整理することが大切です。なにか、共有しておく情報がある者は?」

 「……でで、ででしたら、私から五賜卿について分かっていることを……幾つか、よろしいでしょうか」

 

 そう言って手を挙げた? のは声からして中島さんだ。大舞台で震えているようだ。是非がんばって欲しい。

 

 発言を認められた中島さんがイスを引いて立ち上がる。

 

 「こ、荒野にて現れたのは、魔王に異形な力と兵を下賜された賜卿のひとり──『屍の卿』グレイプ・アルデンテであります、はい」

 「『(しかばね)の卿』、その名を聞くのはずいぶん久しいな」

 「確かぁ、ラッキーストライクという名では無かったか?」

 「え、ええ、あはい。おそらく、皆さんが知っているのは、アルデンテの先代かと。寿命以外では死なないとウワサの妖狐族の父と、ネクロマンス最強一族出身の母から産まれた、半不老不死のハイブリッドネクロマンサー。それがグレイプ・アルデンテです。アルデンテは母親であるグレイプ・モリスマキナの姓を騙っているようですが、代替わりが正当なものであれば彼がラッキーストライクの名を継承していると思われます。……はい」

 

 喋り方がしっかりしてきた。中島さんもだいぶ落ち着いてきたようで安心だ。


 「またしてもグレイプ家から生まれてしまったか」

 「しかも不死者とのハイブリッド。厄介だな……」

 「すいません、先代のラッキーストライクというのは?」

 

 声からして質問を投げかけたのは勇者だろうか。俺も聞きたかったのでありがたい。

 それに誰かが答える。

 

 「五十年ほど前に存在した『屍の卿』だ。当時は国が土葬禁止令を敷き、火葬したあとの骨も各家庭で保管するように御触れを出したくらい、恐れられた男だ」

 「そうまでして徹底しなければ死者がところ構わず蘇り、ラッキーストライクの操り人形にされてしまっていたからな」

 「“ラッキーストライク”自体は、ネクロマンサー最強の称号のようなものさね」

 

 ──ラッキーストライク、どこかで聞いたことあるような……。

 

 「本題に、戻ります。アルデンテ軍の最大兵力はおよそ二十八万で──」

 「二十八万!? ……すいません続けて」


 中島さんがあまりにも淡々と報告するものだから驚いてしまったが、驚いていたのは俺だけだった。どうりで、戦うことより追い返す話しばかりするはずだ……。皆の気持ちがやっと分かった。


 「──その全てがアンデッドのため、基本的に倒しきることは出来ません。本人を倒す以外方法はありませんが、アルデンテ本人が妖狐族を名乗っている点を考慮すると、倒すには聖属性魔法か魔力吸収系の武具が必須だと思われます」

 

 さすが〈レイザらス〉の諜報部隊を取りまとめる隊長代理の中島さんだ。短い時間で有益な情報をたくさん手に入れて来てくれたようだ。

 

 「敵大将が妖狐族……。これ以上に不利なことはないな」

 「しかし聖剣ならば、妖狐を倒す条件のどちらにも当てはまる……」

 「聖剣に期待を込めるのはやめましょう。所有者以外には能力を発揮出来ませんし、なによりコーダイさんが可哀想だ」

 

 俺を心配するこの声は、きのこ商会代表のタッチポットだ。きのこ商会の創設時にはかなみちゃんも関わっている──というか今もズブズブの関係なので、俺との距離感もおかしくなっている。

 信頼してくれていると言った方が聞こえはいいかもしれない。

 

 「なら他に適任者がいるのか?」

 「うーむ」

 「……なら、オレが行こうか」

 

 そう言って師匠が立ち上がった。

 それを慌てて誰かが止めに入る。

 

 「ま、待て待てっ! お主の聖属性魔法はここいる我々を守る最後の砦として使ってくれ!」

 「……そうか」

 

 それに納得したのか、師匠は席に戻った。

 俺としては師匠がS級冒険者だった事で驚きっぱなしなのに、聖属性魔法なるものまで使えたとは知らなかった。

 聞いている限りだと不死者特攻の魔法のようだが……。

 

 「他に、聖属性か魔力吸収に心得のある者はいないのかい?」

 「……居ねぇみてぇだな」

 

 場に静けさが戻る。

 するとまた床を小突く音が鳴った。町長だ。

 

 「ガードナー団長、死傷者の数はいかほどですか」

 

 保安兵は街の見回りから門番、賞金首の清算までやってくれる街の安全に欠かせない人たち。そのリーダーが答える。

 

 「はい。死亡者は現在二名。負傷者は八名。先ほど二人組の女性から二人の男性の遺体を回収しました。鎧を纏った男とガタイの大きな色黒の男です」

 「それってまさか……」

 

 勇者が周りに聞こえるか聞こえないか分からない程度に反応する。

 

 「女性達の話では死因は五賜卿との戦いによるものだろうということでしたが、検死したところ、抵抗した跡があるのは色黒の男だけで鎧を着た方は無抵抗で殺されたものと推測されます」

 

 暗さに目が慣れてきて、近くにいる者なら表情が見えてきた。勇者の何やら考え込む姿が見える。

 

 「勇者?」

 

 一応体調も気遣って声を掛ける。

 

 「……角丸さんには腕に傷がありましたが、スケインさんの身体には傷が一太刀だけ。あのスケインさんに限って不意打ちを食らうのは有り得ないと思うんです。しかも真正面から……あくまで個人的な考えですが」

 「チートスキルを使おうとしてたんじゃないか?」

 「チートスキル……? スケインさんは異世界組じゃないですよ」

 

 意外な答えが勇者から返ってきた。

 

 「え、違うのか? 俺はてっきりカクマルもそうだから、そうだとばかり」

 

 師匠の過去を聞いたあと、俺は師匠に自分達のことを語った。その中には勇者達にも触れる部分があり、ついでに勇者もこの世界での歩み方を少し話してくれた。そのときにカクマルとスケインは転移や転生に理解があるように聞こえたのでてっきり勘違いしてしまった。

 ちなみに、カクマルが┠ 石化 ┨を使えたのは女神からチートスキルを貰ったからだというのもそのとき分かった。

 

 「彼は自分のことを多くは語らず、黙ってついてくるタイプでした。知ってることと言えば小国で騎士を務めていたことくらい。だから、スケインさんが別世界から来た可能性は否定できませんし、何かしらの秘策を隠し持っていた可能性も十分ありえるとしか……僕からは言えません」

 「何かを使おうとして殺されたのか、使ったせいで殺されたのか。あるいは別の理由があったのか──とにかく今は攻略を考えよう」

 

 憶測だけならなんとでもいえる。今は会議に集中するべきだろう。

 

 また勇者の顔色が悪くなった。知らなかったことに責任でも感じているのだろうか。

 

 会議は続く。終わりは長い。

 

 「ちょっと待ってくれ。話に出てきた二人組の女ってのはどこに行ったんだ」

 

 声と位置からしてガードナーに問いているのはオールバックの金髪が特徴のレイだ。

 

 「まだ探しものがあるって街の外へ出て行ったよ」

 「止めようとはしなかったのか」

 「したが、聞かずに出ていった」

 「うん、よく分からんが、そいつらは敵ではないだろうな?」

 

 少女たちに警戒する重鎮向かって勇者が応える。

 

 「おそらく、その二人は僕の仲間です。彼女達には何も伝えられていないので、もしかすると僕を探しに出たのかも」

 「それは心配だ。うちの暇してる連中を捜索に当たらせよう」

 

 そう名乗りを上げのはギルドマスターのバスタードさん。連中というのは冒険者のことだ。

 

 「助かります」

 「ボスっ、少しよろしいでしょうか」

 

 突然、正面入り口から男が一人入ってきて、レイに耳打ちをする。レイが頷くと男はそそくさと退場した。

 

 皆の視線がレイに集まる中、町長が口を開く。

 

 「レイ代表、何か伝えるべきことはございますか」

 「たった今、送っていた斥候から情報が届いた。現在、敵大将アルデンテと『きのこ狩りのリズ』が交戦中。また()兵力はおよそ三千五百で現在も増加中。それをおじょ……エビトー・カナミの召喚するカラクリ兵およそ二千体が食い止めている状況だ」

 「うむ、かなみ殿のお陰でどうにか凌げている状況か……」

 「きのこ狩りも随分貢献してくれているようだな」

 

 ユールに住むもの達はかなみちゃんの強さをある程度知っているので状況を呑み込めているが、会議のためにわざわざ呼ばれた代理者や王都からの視察隊はその凄さが分からず納得していない様子。

 

 「有り得ない。実質二人で五賜卿を抑え込んでいるとでも? この街も見ない間に随分と力を持つようになりましたなぁ」

 「どちらも聞いたことのない名だが、そこな勇者の仲間でもなさそうだな。信用できるのか?」

 「心配いらないさね。あの子達はすんごく強いんだ。あたし達も、命張るぐらいの覚悟持って作戦考えるよ」


 カラカランッ──!


 デネントさんの言葉に気持ちがひとつになりかけたタイミングで、裏口の方からビンの転がるような音が聴こえた。

 

 「誰だっ!!」

 

 ここには戦士が多くいる。全員がその声より早く振り向き、半数が警戒態勢に入っている。ギルドマスターと王都視察隊隊長が剣を半身抜いており、師匠が既に剣を構えた状態で前に出ていた。

 

 ゆっくり物陰から現れたのは、見覚えのある青い髪の少年。

 あれは確か──、

 

 「──レクム、くん……?」

 「あ、……ど、どうも」

 

 引き攣った笑顔を見せながら、弟のエナムくんと一緒にレクムくんが出てきた。



~~~~~~~~~~~~~



 二人は申し訳なさそうにしながらも、デネントさんによって二階に連れていかれた。上からはデネントさんの怒鳴り声が聴こえる……『どうして逃げなかった』だとか『父ちゃん達は知ってるのか』とか……『いてぇっ!』とか。

 

 仕方が無いのでデネントさんを抜いたメンバーで会議は再開された。さっきまで冷静で頼りになった町長が少しだけ冷や汗をかいている。

 

 「……では本題に戻ろうか」 

 「本気で追い返すのであれば、リスクを背負う覚悟でダットリーを向かわせるしかあるまいて」

 「それは最終手段だ。今はコーダイくんに任せてみないか? 彼なら何とかしてくれるだろう」

 「コーダイ殿を信じたい気持ちは分からなくもないが、今から修行でもさせる気か?」

 「そんな時間はあぁりません。もちろんですがね……ヒヒヒ」

 

 この一年半。

 かなみちゃんを中心に街への経済的貢献をしてきたことで、俺への信頼も上がってきているらしい。

 この街にもだいぶ馴染んできたんだと実感できる。とはいえ今は『聖剣が手元にあるから』というのが大きい。

 期待されるからには応えたいが──さて、どうしたものか。

 

 町長が質問する。

 

 「……他に、案のある者は?」

 「穴を掘って、五賜卿を生き埋めにするというのはどうか」

 「岩盤のように硬い土地をどう掘れというのだ」

 「だったら、結界でもつくります?」

 「維持できる人数がおらんじゃろ。そもそも結界技師もいないのにどう生成するおつもりか」

 

 まともな案は一向に出そうにない。これじゃ堂々巡りだ。


 「コーダイさん、何か意見はありますか?」

 「うーーーん」


 ひとつでもいいから案をひねり出そうと思い、聖剣を活かせないかと腕を組んで考えてみるが──思いつかない。

 

 薫さんの"究極カウンター"なら、アルデンテを物理的に追いやることは可能だろう。しかしアレは身体に大きな負担をかけるワザでもあるし、薫さんを攻撃してくれないと直接的な解決にはならない。

 

 ──┠ 威圧 ┨でヤツの動きを止めて、その間に聖剣を突き刺せば行けなくもなさそうだけど、目は合わせてくれないだろうし┠ 囲嚇 ┨で止めるしかないか……?

 

 ┠ 囲嚇 ┨なら相手の目を見る必要なく止められる。ただし、止められる時間や範囲をまだ把握してない以上、安易に提案は出来ない。


 

 奴にとって致命傷になる一撃を与えたい。


 

 何か、何かヒントはないか。

 

 

 

 ────よーーし。当たった当たった。剣って投げてみるもんだね。勝負の決め手になる────

 

 

 

 なんだ──?

 

 

 この声、このセリフ、どこかで聞き覚えがある。

 

 

 確か、アルデンテに言われたセリフ。

 

 

 「剣を投げてみる──か」

 「ん? 何かいいましたかね」

 

 心のなかで呟いたつもりが声に出ていたようだ。

 

 「いや、気にしないでください」

 

 天啓のように降って湧いてきた気もしなくもなかったが、上手くいく想像が全然でき──、

 

 「──それですよ喜久嶺さん……!!」

 

 勇者が机を叩く勢いで立ち上がった。

 

 なんだ? さっきとは打って変わって目が輝いてる。何か閃いたのか?

 

 「聖剣が使えないなら、聖剣に頼ればいいんですよっ……!!」

  「…………へ?」


 何を言ってるんだこいつは?


 

読んでいただきありがとうございます!

二章はまだまだ続きますので楽しみに!

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