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その男、凶悪な目つき


 

 気絶し、左手に包帯を巻いてるポケットはベッジとスムージーポテトに肩を担がれていた。元凶となった指輪はエナムが回収し、管理することとなった。

 

 「ベッジ。まだ勝負はついてねえぞ……」

 「異分子が街から消えてくれるなら、もう戦う理由はオレにはない」

 「なんだとぉ!」

 「はいはい。強がるのも男の子の特権よねー」

 

 アルベンクトはボロボロまま挑発するレクムの脇腹をつついた。

 

 「いってえぇー!! 何すんだよオンナァ!」

 「オカマよ」

 

 そう訂正しながら、暴れて威嚇するレクムを持ち上げ肩に担ぐ。

 

 「清々するぜ。これでもう街でお前らを見かけなくて済むわけだからな」

 「アタシには引き止めていたように見えたけど?」

 

 明日には旅に出るというのにわざわざ勝負を挑んでまで引き止める理由はあったのかと、アルベンクトは疑問を口にした。

 

 「覚悟を計る必要があった。『口先だけでした』で終わらせて、おめおめ帰ってきたらぶち殺したくなるんでな」

 「ふん。てことは認めたってことでいいんだな? 俺たちの覚悟どうだった」

 

 不機嫌なのに妙に自信ありげな態度で聞いてくるレクム。

 ベッジはユイリー、エナム、アルベンクトの目を交互に見送って答えた。

 

 「お前以外は、ホンモノだったよ」

 「てめ、やっぱケンカ売ってんだろ! 俺と戦えー! ウガー!」

 

 レクムが吠えたところで、この争いは幕を閉じた。

 

 

 

────────────

 

 ──ユール──

 

 

 

 集合場所は北の第一防壁門。

 あんな騒動があった翌日の早朝だというのに、誰よりも早くレクム、エナム兄弟は到着していた。

 

 腕を組み仁王立ちするレクムとまだ寝ぐせの残った顔でアクビするエナムの前に最初に現れたのは、アルベンクトとレイザらスの代表レイだった。

 

 四人が簡単に挨拶を済ませると、最後の参加者はすぐにやって来た。

 

 「カオウっ! ユイリー! なんだか目が赤いぞ? 寝不足か大丈夫か?」

 「う、うん大丈夫。なんだか楽しみで寝付けなくって」

 「あら、ユイリーちゃん。それ……」

 

 アルベンクトはユイリーの首に輝く金のネックレスに気付いた。

 

 「あ、これですか? なんだか無くしちゃいけない気がして。身につけることにしたんです。……似合ってますか?」

 「ええ──。よく似合ってるわ」

 

 アルベンクトは心の底からそう思って微笑んだ。

 

 「よっしゃーぁぁあ!! 全員揃ったことだし、行くぞレイ!!」

 「オレはオマエの保護者だ……。レイさんと呼べ」

 

 レイはテンションの高いレクムの頭を鷲掴みにして静かに怒った。

 

 「たく、お嬢と連絡がつけば、こんな事しなくて済んだのによォ……」

 「かなみちゃんはどの辺に居るんですか?」

 

 落ち込むレイに、ユイリーは質問した。

 

 「三日前、『エンコシという村に入る予定』という連絡があってそれから音信不通だ。もう出たのかまだそこに居るのかも分からない」

 「なるほど。ではその村に向かうんですね」

 「そういうことだ」

 「旦那ちゃん、少しの間借りてくわね。リリー」

 

 アルベンクトは見送りに来たレイの奥さんに手を振った。

 

 「アルベさん、ぜひレイのことこき使ってやってください」

 「言ったわね? そういうことなら任せておきなさぁぁあーーーい! お姉さんっ、頑張っちゃうわ♡」

 「来んなハゲ! 寄ってくんな!」

 「逃げなくてもいーーーびゃなぁあーーーーい!!」

 

 レイはアルベンクトを苦手としていて、本気で逃げ回っているが、これから旅をする仲間が打ち解けてくれていることを理解したレクムは、大丈夫、問題ないと頷いた。

 

 「よし! アルベンクトも張り切ってるな。ユイリー、エナム、お前たちも準備いいか!」

 

 ユイリーとエナムが顔を見合わせて、こぶしを掲げてみる。

 

 「「お、おーー」」

 「チームレクム、出発だぁぁーー!!」

 

 こうして、かなみたちを追いかける為に集まった新しいパーティーが冒険をスタートさせたのである。

 

 

 新しい仲間として、竜種のペリーと飼い主のクローフが加わるのは、また別のお話──。

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 エンコシ村。

 森の中にひっそりと存在するこの村は、数年前から巨大ウサギに村人が襲われる被害が続出していた。

 

 クマのような鋭い爪を持ち、カンガルーのような強烈な脚力を持った体長五メートル弱の集団。俺たちは、一宿一飯の恩義に報いるために、奴らを討伐することになった。

 

 木々の間をドスンドスン。

 標的も同じように俺たちを標的と定めたようだ。

 

 「珖代ー! そっち行ったよー!」

 

 俺の前に逃げ込んできた一匹のウサギ。

 

 俺にら勝てると思ったのか、なんのひねりもなく爪を振り下ろす。

 目のついている生き物が、真正面から襲ってくるだけなら問題ない。

 

 ──。

 

 「……!」

 

 巨大ウサギは睨まれた恐怖で動かなくなる。

 今のうちに懐に入ろうとするも、二秒ほどで拘束が解け、危うく後ろ足に蹴られかけた。

 

 図体がデカい割りに意外と小回り効くのでかなり面倒だ。一旦引いて次の手に移る。

 

 「┠ 時嚇(じかく) ┨!」

 

 目を見て時間を止める大技。

 標的は、拘束されていることも気付かず、動き出す頃には時間が消し飛んだような感覚に襲われる。

 これなら蹴られることなく死角からの攻撃が可能だ。デメリットは止まっている間、完全に無敵状態になってしまうこと。なので聖剣を振りかぶったまま動き始めるのを待つ。

 

 「しっ……し……?」

 「こっちだよ」

 

 俺を探してキョロキョロとした所で、ぶった斬って終わりにしようかと思ったが、爪を切り落とすだけにとどめた。

 ヒトの方が立場が上だと思わせて飼い慣らしたほうが、この村のためになりそうだから。

 

 「┠ 忠嚇(ちゅうかく) ┨」

 

 レベル差のある魔物や敗走する魔物のみを従わせる威圧を掛ける。

 聞いてくれる命令の内容は魔物の賢さに依存するが、──さて。

 

 「そっちですこうだい! そっちに行きましたですぅ!」

 「グオオオォオ!!!」

 

 怒りに我を忘れたように叫ぶもう一匹の野ウサギ。どうやら仲間が俺にやられたと勘違いしているようだ。

 

 目の前の大木を引き抜くと、ウサギはそれを投げ飛ばしてきた。

 

 「┠ 物嚇 ┨!」

 

 一瞬だけモノの動きを止める技。大木は空中で横になったまま静止する。

 

 「おいウソだろ……」

 

 怒れるウサギはその大木を足場に飛びかかってきた。

 

 「┠ 重嚇 ┨!!」

 

 しかも重力で足止めする威圧が効かない。前が全く見えていないのか、たたき落とすことに失敗した。

 このままだと潰される!

 

 「あっブネぇ!」

 

 飛び込むように前転して緊急回避。

 怒ウサギの衝撃で地表が割れ、地面が隆起し、大木の何本かが簡単に倒れる。

 あんなもの直撃していたら一瞬でお陀仏だ。

 

 起き上がると、また別の足音が聞こえてきた。

 

 「珖代さーん! ごめんなさーい。そっちに逃げましたー」

 「叫び声につられて来たか」

 

 前と後ろを挟まれた。

 今のコイツらは目も合わせてくれないほど怒っている。

 だったら──、

 

 「──┠ 囲嚇(いかく) ┨!」

 

 十分引き付けて放ったそれは、標的の目を見ずに止められる威圧技。だが、目的は止めることだけじゃない。

 

 周囲への威圧は目を見ずに止められる。それは──、聖剣も例外ではなく(・・・・・・・・・)、聖剣は受けた圧力を魔力と身体能力に変換する……!!

 

 「【エアロダイブ】ッ!!!」

 

 渦巻く風に煽られて、二匹のウサギが勢い良く吹き飛び大木に激突する。

 一匹はその衝撃に気絶。もう一匹は辛うじてまだ意識があった。

 

 項垂れるように座っているウサギの目の前まで歩く。いちいち大技を試して外れるのは嫌だから、まずはオーソドックスなヤツを試そう。

 

 俺はそれをウサギの目を見て掛けた。

 

 「──┠ 威圧 ┨」

 

 琥珀色に輝く瞳は、万物万象をぶっ止める。

 

 

 

 

これにて一旦おしまいです。

 ここまで読んでくださった皆々様ほんとうにありがとうございました。

 

 皆様からの感想やレビューも励みになってここまでやってこれましたが、次回からは更新未定です。

 

 本当は4章5章まで詳細なストーリーが展開できたのですが、未熟なばかりに予定より多くの時間を第二章に割いてしまいたした。

 

 3章の予告でも乗っけて終わりにしよーかなー ('、3_ヽ)_

 とかも考えましたが、期待だけさせるのも酷だとおもったので断念しました。

 

 新しいものの執筆に行き詰まったとき、もしかしたらエピローグの更新もあるかもしれません。

 あと、感想もらえちゃったら張り切って書いちゃうかもなー( ̄▽ ̄)

 

 最後に、次回作のハイファンタジーものが着々と進行中です。お披露目がいつ頃になるかまだ分かりませんが、次回作も是非読んでいただければ幸いです。

 

 それではみなさん、また次回。

 

 (o・v・o)/~


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