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第十七話 マスターママの教え


 朝。

 

 今日は放牧されているユール牛の乳搾りからスタートする。

 

 この辺りで放牧されている牛はたったの4頭。

 荒野の環境を生き抜ける半魔(ハーフ)のみ。

 遺伝が偏ってしまうクウォーターは魔物の血、牛の血、どちらが濃くても放牧には向かずまず安定しない。かと言ってハーフをつくるためには牛を魔物と接触させる必要があり、意図的に産ませることが困難かつ危険なのが現状だ。その為、牛の数が極端に少なく、この仕事をだけを生業(なりわい)とする人間がいない。

 そこで白羽の矢がたったのが俺達弟子ーズ。ここでの主な仕事はハーフ牛のエサやり、掃除、乳搾り。なのだが、ユール牛をよく似たフォルムの魔物に接触させる仕事もさせられた。ちなみに弟子ーズとはダットリーさんの弟子である俺とユイリーちゃんのことである。

 

 接触させた牛と魔物の交尾を、ユイリーちゃんと二人で見守っていたときは何とも言えない空気感になったりもしたが──。今日は乳搾りオンリー。二人で牛を捕まえて乳を絞る。魔物の革で造られた容器に牛乳を入れ、師匠の知人である農家の方に渡す。その後の牛乳がどうなるのかは知らないが、依頼としては簡単な部類だ。

 

 「こうだい、それ、終わったら、来てくれ」

 「はい!」

 

 師匠からお呼びが掛かったことでその日の作業は終了した。そして師匠に付き従って大通りから少し外れたお店に連れてこられた。

 

 最近なんでも屋のように便利に扱われている弟子ーズ。まともに言葉も教えてもらっていないが、今回も新たな活動だろうか。ダットリー師匠の後をついてお店にお邪魔すると、まず最初に目に飛び込んできたのは長めのカウンターで、ムーデイーな音楽と怪しげなムード漂う、いわゆるオトナなバーだった。

 

 前世ですらこんなバーは入ったことがない。

 若干の緊張をしつつ、その世界に踏み入れる。

 

 「あら、アナタがこうだい? 意外とかわいらしい子じゃない」

 

 声を掛けてきたのはバーのマスター……と言っていいのかママと言った方がいいのか……。とにかく体格がガッチリしていて筋骨隆々といった体つき。顔もゴツゴツしていて、まゆ毛が極太。なんだか全体的に濃ゆい印象を受ける。だと言うのに、その全てに抗うかのようなオトナの女性がするファッション……。そして、日本語で話しかけてくるとなれば条件は揃っている。

 

 俺の見当違いでなければこの方はきっと──。

 

 「あのー失礼ですが、新宿二丁目の方ですか?」

 「んー? ちょっと何言ってるか分からないんだけど、誰かと勘違いしてるならゴメンナサイね。アタシ、言語理解スキル持ってるからどんなお客さんともお話できるだけよぉ。人間限定の話だけどっ♡」


 ウインクした。


 師匠は席に座ると飲み物を注文した。

 俺もすかさず隣の席に座る。ウインクは回避した。

 

 「あのー、……なんで俺はココに連れてこられたんですかね?」

 

 同じ転生者でもないなら、師匠が俺を連れてきた理由がわからない。怖くなったがおそるおそるマスター……ママ? に聞いてみた。

 

 「あら! この耄碌もうろくジジイ、こうだいちゃんになんにも言ってなかったのね! ……まぁ、いいわ。アタシ、アルベンクト。アルベって呼んでちょうだい。アルベオネェ様でも可よ。むしろ良よ」

 「喜久嶺きくみね珖代こうだいです。その……なんの依頼でしょうか」

 「アナタのことはこの酒樽ジジイから聞いてるわ。言葉を教えるのはアタシには出来ないけどあの能力の使い方なら、教えてあげられると思って呼んだのよ」

 「あの能力って、もしかして┠ 威圧 ┨……? ていうか師匠、知ってたんですか! 俺がスキルで困ってること!」

 「ああ」

 「まずは詳しい事情を聞く前に、一杯いかがかしら」

 「えっと、では、師匠と同じもので」

 

 

 出てきたのは赤いスパークリングワイン。久々のアルコールに酔いながらもかくかくしかじか事情を話す。

 

 「なるほど。睨んだだけで魔物をね……。半魔くらいならワタシにもできそうだけど、聞いたことないわねぇ。アナタの風貌なら、確かにその辺の魔物は射殺せそうね。派生(はせい)って訳でも無さそうだし……。まっ要するにこうだいちゃんは、人を睨んで殺してしまうんじゃないかって不安な訳なんでしょ?」

 「は、はい……」

 「そうねぇ。そんなの気にしないで使っちゃいなさいって言いたいところだけど、分かったわ。まずはアナタにかけてあげるわ。ワタシの┠ 威圧 ┨をね」

 

 それは、マスターママの目を見た瞬間だった。

 

 「┠ 威圧 ┨(フンヌゥッ)!」

 

 とんでもない漢の形相。

 

 もろに食らって目以外に力が入らなくなる。

 一瞬で、震える程度にしか動けなくなった。

 

 解き方が分からずもがく。

 

 「どう? 誰かにかけられるのは初めてぇ……? 人によって効き具合とか違ってくるんだけどアタシの場合、だいたい十秒くらいだから焦らず待ちなさい」

 

 待つこと十秒程。何とか元に戻ることが出来た。

 

 「あ、あの、目の色が琥珀色になるのはどうやったんですか?」

 「どうって、┠ 威圧 ┨発動中の目の色は黄色っぽく淡く光るのよぉ。アナタも自分じゃ気づいてないだけで、淡く光っているハズよ?」

 「そうなんですか、それは知りませんでした」

 「こうだいちゃん。アナタ、┠ 威圧 ┨と殺気を一緒くたにしてない? ┠ 威圧 ┨は能力だけど、殺気は殺意という感情よ。だから人に使うときはすごく簡単な話、殺気を消しちゃいなさい。完璧無くすの。一欠片も乗っけちゃだめ」

 

 師匠は酒を飲みながらこちらに耳を傾ける。

 

 「それで、本当に……大丈夫なんですか?」

 「┠ 威圧 ┨に殺気を織り交ぜて睨むと身体が硬直するだけじゃなく、相手に恐怖心を植え付けることもできたりするの。こうだいちゃんのはあまりに殺気が強すぎて、魔物の心臓まで止めてしまってると思うの。もしくは、恐怖のあまりショック死させちゃってるのどっちか。同じような瞳力、魔眼使いの中には、こうだいちゃんみたいに悩みを抱えてる子が多かったりするわ。だから試してみる価値はあると思うわぁ。試しに私に掛けて見なさい。今は大丈夫なはずよ」

 「殺気を消す……分かりました。やってみます!」

 

 残ったお酒を一気に飲み干す。ドンとグラスを置いて睨む。マスターママの動きが止まった。


 「あの、大丈夫ですか?」

 「……。ええ! その イキ よ。こうだいちゃんがこれからも安定してリッパに使えこなせるように、陰ながら仁王立ちで応援するわねっ♡」

 

 ──バチコンッ!

 

 「…………

 …………。」

 

 「あれ、こうだいちゃーん。もしもーし、こうだいちゃーん」

 

 おかしい。

 目は光っていなかったのに、弾け飛んだ目配せに俺の身体は一瞬で硬直した。

 同時に、言い表せないほどの悪寒が全身を駆け巡った。

 

 ──なるほど……。これが殺気を込めた威圧というヤツか……。


 「こうだいちゃ〜ん、あれ? 大丈夫かしら……?」

 「おめぇが殺しかけてどうする」


  

~~~~~~~~~~~~~~~~


 「またいらっしゃ〜い」


 バーを出た。まだ太陽が威厳を示す時間。いつもより早く業務が終わって特にやることも無かった俺は、酔いが回った所為か威圧に当てられた所為なのか分からないまま、心ここに在らずの状態で宿に向かっていた。

 

 「なんだこりゃ……」

 

 すると、通りかかったレクムの前に見たことのない長い行列を発見した。

 

 「あ、こうだい、いい所に! 並びましょう行列!」

 「お、おい、なんかあったのか」

 

 どこからとも無く現れたリズに引っ張られてレクムへと続く長い行列の最後尾に並ぶ。

 

 「まぁ、入ってからのお楽しみですよ」

 

 行列を抜けた先には思わぬ人物がいた。

 

 「いらっしゃいませー、空いてるお席にどうぞー」

 「かなみちゃん?」

 「あっ! いらっしゃーい」

 

 かなみちゃんはレクムの給仕姿にかわいらしいフリル付きのエプロンを身につけて働いていた。しかもお店は大盛況で忙しそう。理由も分からないまま俺は言われた通りに空いていた席に座った。

 リズならこの状況を知っているっぽいので聞いてみる。


 「なぁ、かなみちゃんが働いているわお店が大繁盛してるわだけど、レクムで何があったんだ?」

 「デネントさんには日頃お世話になってますから、働いていて恩返しすることにしたんですって。知ってましたか? 前の宿の二週間分の宿泊代、全部デネントさんが支払ってくれてたんですよ……?」

 「本当かよ! ……でも、そうかなるほどな。宿の主人がデネントさんにはちゃんとお礼を言っとけよって言ったのはそういう事だったんだな……それじゃ薫さんは?」

 「薫さんなら、厨房に居ますです」

 

 振り向くと厨房には、料理を作る薫さんとデネントさんの姿が見えた。給仕はかなみちゃんとレクムくん、そして、二人より少し背の高い女の子の三人がやっていた。

 

 「二人とも、ご注文は?」

 

 見知らぬ女の子について聞こうとした時、かなみちゃんが注文を取りにやって来た。

 

 「じゃあ、いつもので。リズもいつものでいいよな」

 「はーい! お願いしまーすかなみん!」

 

 元気よく手を挙げるリズ、まだ渾名で呼ばれると嬉しいらしい。

 

 「分かった、いつものね」

 

 普段食べている物がだいたい決まっているので、かなみちゃんにはそれだけで伝わった。

 

 「あっ、待ってください! ──かなみちゃん、いつもので」

 

 リズはキメ顔でそう言ったあと、どうカッコイイです? という顔を向けてきた。

 

 「はいはいカッコイイですよカッコイイ……」

 

 注文した料理が運ばれ始めた頃、リズが話題を切り出す。

 

 「デネントさんの旦那さん、腰やっちゃったみたいで子供たちと切り盛りしてるんですよ」

 「それで、この客の相手は大変だな……」

 「いえ、この行列はかなみちゃんと薫さん目当てだと思います」

 「え……?」

 「ほら、あの辺の冒険者達はかなみちゃんに癒されてほっこりしてますし、厨房近くの席なんかは薫さんの後ろ姿に見とれてますよ。二人とも美人さんですから仕方ないと思いますけど、おかげで店は大忙しです」

 「そう思うなら、お前は手伝わないのかよ?」

 「手伝ってましたが、かなみちゃんに『余計な手間増やさないで』って言われちゃったんですー。皿割っただけですよ? 二枚」

 「かなみちゃんの判断は何も間違ってないな」

 

 食事をとり終わり、かなみちゃんに皿を下げてもらったあとは居ても邪魔になるだけなので俺たちふたりは宿に向かった。

 

 Eランクにも上がりかなみちゃんの高熱も無くなった今、宿は別の場所を借りている。今まで泊まっていたところより値は張るが、広々とした部屋だ。何より、ペット同伴が許可されている宿だった事がこの宿を選んだ決め手だった。

 

 借りているのは二部屋。薫さん、かなみちゃん、リズの三人部屋と、俺とセバスさんの二人部屋だ。セバスさんは気分で行き来しているので実質俺は一人部屋だ。

 

 「で、俺の部屋にいんだ。自分の部屋があるだろ」

 「まぁ、細かいことは良いじゃないですか」

 「何やってんだ?」

 

 リズニアが寝転びながら水晶テレビをいじっていた。テレビは見たことのない文字で埋め尽くされている。

 

 「溜め録りしてた今期アニメのチェックです。ちょーど、一話から三話まで溜まってますから、観るやつ観ないやつ選んでいかないと。全部観るのは厳しいですからね」

 「アニメかぁ。子供の頃はよく見てたけど最近のは良ーく分からないな」

 「じゃ、一緒に観ます? 深夜系とか案外、奥が深いものですよー。私の場合はとりあえず三話まで視聴して、今後も観ていくか決める派です! もっとも、女神だった頃はほぼ毎日暇で時間がありあまってたんで全部観てましたがね」

 

 リズは自慢げに語るが全然自慢できる内容でないと思う。

 

 「あーいいや。今から討伐依頼受けてくるから」

 「そうですか。勤勉ですねー。行ってらっしゃい」

 「何言ってんの、お前も来るんだよ」

 「私は遠慮しときます。アニメ観るのに忙しいので」

 「録画出来るならいつでも観れるだろ。それに薫さん達が働いてるってのにお前はぐーたらしてていいのかー」

 「え? 何でですか」

 「来てくれないのか……? リズ」

 「……分かりましたよっ! 貸しですからねっ! 貸し!」

 

 やはり渾名の効果は健在だった。名前を呼ぶだけで付いて来てくれるなら安いものだ。

 


──────────────


 

 Eランククエスト『ギヒアを一匹討伐せよ』

 

 この依頼を受けた理由は┠ 威圧 ┨を本来の意味で使いこなせる様にする為だ。その旨をリズには伝えてある。

 

 「あれはこの前の護送中にも倒した奴ですね」

 

 街から出てすぐ、単独行動をする標的ギヒアに遭遇した。確かにリズにかかれば容易いのだろうが、それでは意味が無い。

 

 「あのハイエナもどきを倒せばクリアだよな? 俺が動きを止めるからトドメは任せた」

 「くれぐれも殺さないようにしてくださいよ?」

 

 リズが不敵に笑いながら武器を構える。

 

 警戒するギヒア。

 リズの前に俺が出る。

 

 自然と目線が触れる瞬間。

 己に暗示をかける。

 

 ──殺気を消す殺気を消す殺気を消す……┠ 威圧 ┨!!

 

 舌をダラリと出したギヒアがピタリと動くのをやめ、立ち止まる。食らった瞬間唸り声をあげるが、身体は小刻みに震えることしか出来ない様子。それを見逃さなかったリズの強引かつ鮮やかな剣捌きによりギヒアの胴と頭が離された。

 

 「おっけーです。やれば出来るじゃないですか」

 「お前は出来すぎな」

 

 互いの健闘にサムズアップして褒め讃えた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~



 「なぁ、本当に牙一本で倒したって認めてもらえるのか?」

 「はい。ギヒアの牙は死ぬまで抜けませんからこれで十分な証明になります。一匹で大丈夫な場合に限りますが」

 

 俺達はすぐさま ユール に戻り依頼達成の報告に向かっていた。

 

 「これでこの前の奴隷盗賊さん達みたく、睨むことに躊躇うことは無くなりますね」

 「お前、気付いてたのか……」

 「人は殺したくないんだなぁってなんとなくですが、分かってました」

 

 前に『救える者ならどんな悪人でも助けたいか』と問われたとき、何故 "悪いもの" が含まれているのかと思っていたが、あのとき俺が躊躇していたことに気付いていたのであれば、なるほど頷ける。

 

 「こうだい、あれを……。試し撃ちにはちょうど良さそうな人間が居ますよ」

 

 リズだけでは無く、周りにいる人々の目線の先には巨漢な男がいた。この街には似つかわしくないほど刺繍や装飾が豪勢にあしらわれた服をジャラジャラ着た男。リズが言う『威圧を使っても問題ない人間』はすぐにこの男だと分かった。

 使っても問題ないという事はつまり、そいつは殺してしまっても(・・・・・・・・)構わない人間(・・・・・・)という事。そしてそれは、事情を知らない俺でさえ同意できる程に。

 

 「別に殺してしまっても構いませんよ? こんなヤツ」

 

 リズは男に軽蔑な眼差しを向けている。

 

 「なるほどな。試すにはちょうどいい相手かもしんねェな……」

 

 みすぼらしい服を着た首輪付きの少女の頭を踏みにじり、ゲラゲラ笑うその男に何を躊躇することがあるのだろうか。

 

 堂々とゆっくりと近づいていく。

 

 この二人の関係は恐らく主人とその奴隷──、いやそんなのはどうだっていい。街の皆が不快に思うやつを見逃す理由はない。

 

 どのような事情があったか知らないが、俺とリズの間で最もタイムリーでデリケートな問題。

 

 それを踏みにじる男に問答は無用。

 

 「──、────!」

 

 俺に気づいた男が薄汚い口をこちらへ向けて何やらほざいている。

 

 「こうだい、訳は入りますか?」

 「要らねェ。聞く価値も無ェこんなヤツ」

 「ヤっちゃってください」

 「──気持ちは分かるが、出来るだけ殺さねェようにするわ」

 

 

 余計な雑念は捨て、男の脳に直接突き刺すような視線を投げた。

 

 

 直後──。

 

 

 男はギヒアのそれを超え、瞳孔一つ動かせなくなった。

 

 

 成功した。

 だが、コイツの動きを止めてられても俺の中に溢れる火焔(かえん)の如き憤りは止められない。

 

 

 故にこの男には制裁を下す。

 

 

 この俺の手で。

  

 

 ┠ 威圧 ┨で(止めて)──ぶん殴るッ!!

 

 

 硬く結ばれた右拳に込められた怒りの全てが、男の頬を抉るように痛快に鋭く突き刺さる。

 

 

 色々なことが重なって、多少は八つ当たりの部分があったのかもしれない。むしろほぼそれ。

 

 

 それでも、乗っけられたありったけの()みに耐えかねた男が宙を舞った。

 

 

 ドサッという音と共に、男が地面に延びる。

 それを見た、周りの人間は一瞬の静寂のあと、集団で男に襲いかかった。「やれー!」とか「奴隷解放のこの街で奴隷痛めつけたお前が悪い!」とか好き放題聞こえる。やっぱりこの街の人たちは奴隷を許さないようだ。

 

 「うしっ、スッキリした」

 「ここに居る、みーんなスッキリしましたよ。一部、それ以上の感情を見せる女性陣もいますが……それは仕方のないことだと割り切りましょう」

 

 リズが自分の事のように胸を張って言う。しかし言われてみれば、助けた少女なんかは熱っぽい視線を向けてなにかを呟いている。俺を神様からの遣いだとでも思っているのかも。まあ間違いじゃないが……。

 

 想いをぶつけたからか、かなりスッキリして冷静になれた。ただいくら想いを込めたとしても、貧弱ステータスの俺の力で吹っ飛んだことが理解出来ない。

 

 「なぁ、俺のステータスって本当に貧弱なのか?」

 

 少しの逡巡を見せたあとリズは応える。

 

 「あれは……言葉のあやです」

 「ウソかよ! 結構気にしてたんだぞ!?」

 「別にウソではないですよ。一般人の域を出てないって意味で、言ったんです」

 

 リズは若干開き直って言った。その間も男はひっくり返ったままボコられ続けてる。奴隷の女の子が逆に引いてる。

 

 「なぁ、取り敢えず逃げた方がいいかな……」

 「気絶したまんまですしー……そうですね。金持ちのオッサンは何するか分かったもんじゃありませんし、トンズラこきましょうか」

 

 俺達は行き先を宿に変更して、少しの時間隠れることにした。


 「依頼達成の報告は明日にしませんか?」

 「いや、薫さん達を迎えに行かないとだから、どのみち外に出なくちゃだ」



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