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第十二話 譲れない思い(前編) ~かなみside~


 どうも、蝦藤(えびとう)かなみです。

 

 色々あって、異世界にやって来てから一週間とちょっとが経ちました。

 かなみは元気です。お母さんも、リズも、たぶん珖代も、皆んな元気です。

 

 

~~~~~~~~~



 ただ今、時刻は朝の四時半。

 

 珖代の寝ている干し草の前にかなみはやって来ている。珖代はお腹を出して寝ちゃうからそれを直してあげてから、となりで寝顔をじっくり眺める。

 

 これが、かなみの日課にしているしふくのひととき。

 

 珖代のこどもみたいな寝顔はずーーっと見ていられる。たまーにツンツンしたくなる。

 けど、もう眺めている場合じゃない。今日こそは言ってやらないと。

 

 「そんなとこでなにやってるの」

 

 物陰に隠れて馬小屋を見ている女の子に声を掛ける。

 

 「ひぇ! ……バレました!」

 「昨日も一昨日も、その前も、そこで珖代のこと見てたよね……?」

 

 万引きGメンになりきって女の子をちょっと睨みながら聞いた。毎日物陰に隠れて珖代を眺めているのはすごーく気になる。

 

 「あの人、こうだいって言うんですね……。あ、あの、妹さんでしょうか……?」

 「いえ、かなみは……珖代のお母さんですっ!」

 

 かなみは珖代のお母さんになるくらいの覚悟はある。だから胸を張って言った。

 

 「ほぇ、お、お母様……ずいぶん若いお母様なんですね……」

 「うちの子に何かご用ですか」


 少しでも大きく見せる為に腕を組んで胸を張って言った。


 「あ、えっと……お母様! 私、こうだい様のことが好きですっ! お付き合いしたいくらい好きですっ!まだ、本人とはまともに会話すら出来てませんがっ、お付き合いの許可をく、下さいっ!」

 

 顔を真っ赤にしてすごい勢いでせまってきた。

 お母さんと言ったのは失敗だったかも。

 

 この子は最近、珖代のストーカーをしている魔法使い? の女の子。珖代はつけられていることに気づいてないみたいだけど、この子は朝から晩までずーっと珖代を見て……なんと言うか、興奮してる。いい加減にして欲しいので教えてあげないといけない。そんなんじゃリズにすら勝てないと。

 

 「珖代のどの辺が好きなのか教えてもらってもいい?」

 「初めてこうだい様のお顔を拝見した時は顔の傷も相まって、なんだか怖い人なのかなーって思ってました……」

 

 さっきよりも顔を赤らめて、初めて会った時のことをもじもじしながら話し始めた。

 かなみはどこが好きか聞いたのに……。

 

 ──うーん、かなみも初めて会った時はそんな風に思ったから分からなくもないのがなぁ……。

 

 「でも、ある日の早朝、私が道具の整備の為、外にでていたら突然、笑顔で挨拶をして来てくれて……その時見た笑顔が何だかとても、暖かいなって、何となくいい人なんだろうなって思ったんです……」

 

 ──うーん、わかるーギャップだ。かなみだって珖代の笑顔を初めて見た時は、すっごく優しい人だと思えたもん! お母さんに会えなかった不安も消し飛んだもん!

 

 「ふーん、それで?」

 

 これ位の思いならまだかなみの方が勝ってる。焦る必要なんかない……。

 

 「その時まではまだ、気になっちゃう程度の人だったんですけどギルドでばったり再会したときに朝の一瞬しか会ってない私のことを覚えてて下さって声をかけてくれたんです……。嬉しいと思ったら急にいてもたってもいられなくなって胸がきゅーって苦しくなって思わず逃げてしまいました……。けどその瞬間に気づいたんです。私、あの人こと好きなんだなぁ……って」

 

 ──なにそれ!? うらやましーーー!! かなみもちょっとしか会ってない珖代にばったり再会して『前に一回お会いした、お美しいお嬢さんですね。(キラッ☆) 』って声掛けられたいぃーー!!

 

 「な、ななんで、じっと覗き見てるんですか。好きなら声くらい掛ければいいのに」

 

 ──いや、落ち着かないと。この子からしたら、ずっと一緒にいるかなみの方が羨ましいはずなんだから。

 

 「わ、私みたいな田舎娘が声を掛けるなんておこがましいじゃないですか……! それに、無防備にお腹を出して寝ちゃってて、どこかこどものようにすやすや眠るこうだい様がもう愛おし過ぎてこうやって、見ているだけで幸せなんです」

 

 ──ああ、この子はかなり解かっている。珖代の良さを魅力を……。出会い方さえ違かったら、いいライバルか友達になれたかもしれない……なんで珖代のお母さんなんて言っちゃったんだろう……ウソでも珖代の彼女ですって言っておけば、簡単に追い返せただろうに……かなみのバカッ……。

 

 「それに、この前の朝なんか、好きですっ! て言って握手を求めたら、ありがとうって言って手を握って下さって──」

 

 ──日本には『恋は盲目』なんてことわざがあるみたいだけど、本当その通り。この子は解っているけど見えていない。珖代だっていい所ばかりじゃないんだよ。悪い所も同じくらいあるんだから。

 

 「だから男の人は私の胸ばかりに視線が行くのに、こうだい様は私の目を見て話してくれるんですよ。それでも時々、胸をチラ見しているのが分かるんですが、こうだい様になら見られても本望って言うんですかぁ? 寧ろもっと見て欲し──」

 

 ──だから、嫌なところも含めて好きになんなきゃ隣に立つ資格はない! ……とか思っちゃうかなみも、リズとケンカしてる時の珖代だけは理屈っぽくて好きになれないんだけどねぇ……。ほんと、珖代はまだまだこども……。やっぱり私がしっかりお母さんしなきゃいけないんだ。

 

 「──だから将来、娘には料理とパパの素晴らしさを教えて、息子には、魔法とパパの素晴らしさを教えて、パパにはパパの素晴らしさを教えて、いつか二人は私達夫婦の元を巣立って、私達夫婦のような幸せは家庭を築いて、かわいい孫を連れて帰ってきたらその孫には──」

 

 ──珖代がリズとケンカしなくなってくれたらかなみもお母さんやんなくて良いのになぁ……珖代はお母さんになって欲しく無さそうだし。あ、そうか、リズがいるからケンカしちゃうんであれば、リズを置いていけばいいのか……。でも今は難しそうだから、この街を出る時にリズを置き去りにして旅に出よう。理由を話さなくてもきっと珖代とお母さんなら納得してくれるだろうし、よし。この方法で行こう。

 

 「こうだい様が吸った空気、こうだい様が見た景色、こうだい様が踏んだ地面、こうだい様が──」

 

 ──あ、リズの前にまずはこの子をどうにかしないとだった……。

 

 「ごめんなさい。あなたの思いは十分伝わりましたが、珖代は今、誰とも付き合うつもりはないんです。魔王を倒す為に強い仲間だけを集めている最中なんです。ですから、諦めておかえり下さい」

 「そ、そうなんですか……? まだ冒険者としても女としても半人前なのに、私、勝手に盛り上がっちゃってましたね……。ごめんなさい。帰ります……」

 

 あの子には悪いことしちゃった気もするけど、これで良かった。うん、良かったと思う。

 

 さて、皆が起きてくる前にベッドに戻らないと。

  

 

~~~~~~~~~~~~~~~~



 かなみ達は今、酒場の一角とテーブル席二つをお借りして、とある準備を終わらせたところ。っと言うもの、リズが仲間募集の広告を貼って一週間が経った。

 なので、これから新しい仲間を採用するかどうか決める面接を行うのだ!

 

 四角いテーブルを二つ並べて、珖代、リズ、かなみ、お母さんの順に横に並んで座ってる。

 今は応募者を待っている状態。ちなみにセバスはお留守番。

 

 何だかちょっとどきどきする。

 

 「もうそろそろ来てもいい時間なんですけどねぇ……日本語が最低条件は厳しかったですかねぇ……」

 「うーん、イザナイダケの件で俺達の名も少しは広がったと思うんだがなぁ……」

 

 リズと珖代が諦めかけて頬杖ついてるけど、誰かきたっぽい。気配を感じる。

 

 「珖代、来たよ」

 「え、ほんと!」

 「初めまして。君たちが日本語を話せる仲間を募っていると言うパーティー、かな?」

 

 やって来たのはイケメン──。すっごいイケメン。点を結んだら三角形になりそうな泣きボクロとかある。髪は全体的に赤いけど、毛先の方が少し黒みがかってるイケメン君。あとは、目がすごーく細い。開いてるのか開いてないのか良く分からないほどほそーい目をしてる。身長は珖代よりは高くないけど、それでも高いほうだと思う。

 

 「ええ、そうです私達です。では、さっそくですがこれから面接を執り行いたいと思いますので、どうぞ、お席に着いてください」

 

 学校のせんせーみたいなカッコーをしたリズが、メガネをクイってやりながら言った。

 

 「ご丁寧にありがとう。その前に、一つ、聞いてみてもいいかな? 君たちは "転生の間" って言葉に聞き覚えはないかい?」

 「ぬうっ!? どこでそれを……!」

 

 リズがネガネをずらすほどの勢いでテーブルを叩いて聞き返した。転生の間って前にいた暗い場所のことかな?

 

 「ああ……やっぱり、聞き覚えがあるんですね。ここに来る前、女神と名乗る人物から、少し前に転移による事故があったと聞かされていたもので、もしかしたら貴方がたがその関係者なのかなって」

 

 イケメンは爽やかにハニカミながらそう言った。そうして、席についた。

 

 珖代とは違ったいい匂いがしそう。

 

 「じゃ、別の世界から来たの?」

 「そ。だから日本語が話せるんだ。あとは英語も多少ね」

 「あれだけの数の人が異世界に転移したばかりだというのに、もう次の選定が……?」

 

 リズが小さな声でボソッ言った。かなみには聞き取れたけど、意味は良く分かんない。リズの真剣な感じは珍しい。

 お母さんは目を細めて、何かを見抜こうとしてる。やっぱり怪しい人なのかな。かなみも感情を読み取ってみようとするけど、珖代みたいにわかり易く何か隠しているような感じはない。それどころか何の感情も伝わってこない。ニッコリ笑っているのに、生き物じゃないみたいに何も……。

 

 「ええ、あなたの言う通りです。さっそくで申し訳ないですが、名前とランクをお聞かせください」

 

 皆が悩んでいるのを知ってか知らずか、珖代が質問した。

 

 「ああ、まだ名乗っていなかったね。僕は(とおる)、斎藤貫。つらぬくって漢字で書いて貫ね。ランクは登録したてだからF。気軽にトオルって呼んでくれて構わないよ。先輩方」

 

 青年は微笑んでいるけど心から笑っていない気がする。なんでかは分からないけど……これもちーとすきるのおかげなのかな。

 

 「では、自己アピールポイントを教えてください」

 

 お母さんもリズも全然質問しようとしないから、珖代がした。

 

 「同郷の(よしみ)じゃないか、もう少しフランクにいこうよ。うん。僕は女神と名乗る人物から何か欲しいものがあれば一つくれると言うもんだから、ある能力を貰ったんだ。途轍も無く強力な能力の一つらしいんだが、┠ 叡智 ┨って聞いたことないかい? 万物万象を識る智慧の結晶を覗き見る、みたいなモノらしいんだけど……説明するより、見せた方が早いか」

 

 青年は席から立って、珖代を指さした。

 

 「先輩君、君の名前を教えて欲しい。ああ、それ以外の情報はいらないよ。僕は君の名前から君の持つ能力を当ててあげよう。どうだい? 名前だけで能力を当てるってことだけど」

 「きく……ち、太郎です」

 

 珖代は迷って、ウソの名前を伝えた。たぶん┠ 叡智 ┨が本物か確かめようとしてるんだ。

 

 「うーん、そんな名前のギルドカードは登録されていないみたいだけど? ……それは本名、かい?」

 「……いえ、本名は喜久嶺(きくみね)珖代(こうだい)です」

 

 さっきよりもだいぶ珖代が緊張しているように見える。動揺を隠そうとしているのかも。

 この人は珖代の名前を検索にかけてスキルを当てようとしているみたいだ。

 

 「なるほど。貴方の能力は┠ 威圧 ┨ですね。これが、貴方が女神から授かった能力(・・・・・・・・・・)で違いないですね?」

 

 半分合ってて半分間違い。

 

 確かに『珖代、ぎるどかーど』で検索をかけると、珖代のステータスカードがヒットした。能力一覧に┠ 威圧 ┨しか書かれていないことは、かなみもスキルを使って確認できる。

 だけど、珖代のスキルは自前の物。この人は珖代のスキルを女神から貰ったちーとすきるだと勘違いしてるっぽい。

 だから予想の部分は外れているけど、┠ 叡智 ┨としてはしっかりと機能しているから信じてもいい……かもしれない。

 

 一応質問してみる。


 「珖代の他のスキルも分かる?」

 「そうだね、先輩君は他に目立ったスキルは持ち合わせていないようだね」

 「本当にそう?」


 なんだか、ふわっとした回答だったからもう一度聞き返した。


 「無いね……。何も無い。┠ 威圧 ┨以外のスキルは何も持ち合わせていないみたいだね。女神からはそれしか貰えなかったのかい? 身体強化とか言葉のスキルがないと不便じゃあ……ああ、それで日本語を話せる人をパーティーに募集していた訳なんだね」


 確かに間違ってはいないけど、おかしい。珖代のぎるどかーどを見ているなら、状態異常の欄の《不条理叛逆》に目がいくはず。かなみが調べても何も解らなかった状態異常をスルーするなんてどうみても怪しい。


 「まぁ、だいたい合ってます。他にはなにかありますか」

 「他かぁ……女神様から最低限の身体強化とか魔法、標準語のスキルは貰っているよ。でもコレといったモノは生憎持ち合わせていないよ。まぁ、アメリカにいた時期があるから、その時の生活が何かの役に立てば御の字ってくらいかな」

 「その、随分落ち着いているように見えますが、生前のご職業とかは?」

 

 お母さんが聞いた。

 

 「ん? 僕が落ち着いているのと、地球(向こう)での職業は殊更(ことさら)関係ないよ。強いて言うなら、この"異常"を楽しんでいる、かな。前世はしがない公務員だっからね。そう言う意味じゃ関係なくはないか」

 

 青年は笑顔で答えた。質問をはぐらかしてる訳じゃないみたいだ。

 

 「あのー、質問よろしいですか?」

 

 今度はリズが手を挙げた。リズならさっきの怪しい部分を指摘するかも。

 

 「転生の間を預かる女神は、しきたり上、必ず名前を名乗るのですが、あなたに ┠ 叡智 ┨ の能力を授けた女神の名は覚えていますか?」

 

 リズが質問したのは誰から┠ 叡智 ┨(チートスキル)を貰ったのか。だった。

 

 「ああ、何だったかな? あの場所にいた女神は確か────リズニア(・・・・)。そうだよ。そうそう、そんな名前の女神があの場所にはいた筈だよ。居たよね? あの女神なら┠ 叡智 ┨を授けられるし、僕はきっとその女神から貰ったんだよ……この……異能を、ね」

 

 ──え? どういうこと……? もしかして今の質問で、リズが女神だって事に気付いたの……? それとも、同じ名前の女神がいるとか? いや、その前にそもそもどうやってリズの名前を……? たった、あれだけの情報でリズの名前を当てるなんてこと、┠ 叡智 ┨の検索能力をつかったとしても、かなみには出来る気がしない……。

 

 男の人の目がうっすらと開いていて、中の赤い瞳がリズを覗いているのが見えた。

 

 沢山のチートスキルを手に入れてから、だいたいのことは感覚だったり調べたりすれば分かるようになった。

 なのにこの男の人は何も分からない。

 

 方法が。感情が。目的が。考えが。

 

 何も。一つも。

 

 わかるのはなにも分からないことだけ。

 

 お母さんはじっと睨んでいるだけで、何も言わない。

 

 「い、いえ、そんなはずは……だって、その名前は──」


 リズも何か言いたげだけど、言葉に詰まっているみたいで、かなり動揺している。

 

 「それでは、面接の方を終了させていただきます。合否の判定につきましては、二週間後にギルドの受付係にてご確認をお願いいたします。また、合否の判定方法や理由についての質問などは規則上お答え出来ませんので予めご了承ください。今日はわざわざ遠いところからお越しくださいましてありがとうございました」

 

 珖代は誰よりも冷静だった。すらすらと言い終わると立ち上がり、男に握手を求めるくらいに。

 

 「ふふっ、確かに遠いところからだ。君たちと同じ日の本なんだけどね」

 

 珖代が握手をする。

 かなみもリズに続いて手を伸ばす。

 

 さすがに触れていれば何を考えているか、かなみの能力でわかるはず。

 

 そう、思っていた。

 

 でも、実際はそうじゃなかった。

 

 爽やかな笑顔の男の手からは感覚とうっすらとした熱以外何も伝わってこなかった。

 

 ただ握手しているだけなのに、大きくて空っぽの冷蔵庫が、開けっぱなしにされているみたいに足元からゆっくり冷えてくるような感じがする。

 

 握手しているはずなのに、どうして?

 

 これじゃ、鉄に触っているのと変わらない。

 

 そんなものに感情も何もない。

 

 分からない、何を考えているのか。

 

 分からない、分からないよ。怖い、怖いよ……。

 

 

 

 「……かなみ……かなみ……?」

 「あっ、ごめんなさいっ」

 

 色々考えすぎて、お母さんに声をかけてもらうまでずっと手を握っていた。

 

 分からないってこんなに"怖い"ことだと思わなかった……。

 

 「それじゃあ、二週間後、楽しみに待っているよ」

 

 最後にお母さんとも握手をして男は帰っていった。

 

 「こうだい、あれは何だったんです? 加入してもらうかどうかはその場で決めるって話だったじゃないですか?」

 「クズニアさんが、動揺していたから珖代さんは返事を伸ばしたんではないですかね」

 「まぁ、そういう事だ。お前自分で気づいてたか知らないけどかなり動揺してたからな。何か余計なこと言いそうな気がして、取り敢えず先延ばしにした」

 「え、で、でも、お母さんも、珖代も、リズも、仲間にするどうか迷ってたりしてないよね?」

 

 能力が使えたのはかなみだけのはずだから、みんなは怖いと思ってすらいないかもしれない。

 仲間にするかどうかは、多数決で決めるってことになっていたのでもしもの事があったら……。それが一番怖い。

 

 「いや、お兄さんは決まっているよ」

 「右に同じです」

 「私だってねこんなの悩んだりしませんですよ!」

 「みんなそれじゃあ……!」

 「「「無しだっ。(です)」」」

 「うん、かなみも!」

 

 ──良かった……。みんな、あの男の見えない恐怖に何となく気づいてたんだ……! 能力もなしに、スゴイ!

 

 「どこで私の名前を聞いたかは知りませんが、私の事を女神とか、なーに口説いちゃってんですか? あんないやらしい目で見てきてキモすぎです。事前に私の事を調べるとかストーカーですか。もう一回死に戻って、今度は金魚のフンにでも生まれ変わって下さいって感じです」

 

 ──え?

 

 「ああいう、爽やかに笑顔を振りまいて、誰に対してもフレンドリーに接するような優男なんかに、ろくなのはいません。きっと、頭の中は〇〇〇スする事しか考えていない、イヌのエサ以下の人種……。ああ、いえ、イヌのエサと比べるとセバスさんに失礼なのでクズニアさんと同じレベルと言うことにしましょう」

 

 ──あれ?

 

 「イケメンとかマジ要らねぇ……」

 

 ──気づいてないよ!!!




 かなみはこのパーティーがちょこっとだけ心配です。


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