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どんな魔物にも弱点というものは存在する。
ゴブリンの弱点は身体能力の低さ
オークの弱点は持久力
ドラゴンの弱点は個体数の少なさ
そんな弱点だが当然、不死者と蟲にも存在している。
不死者の弱点は単調な命令しか命じれない事と活動時間が限られている点、蟲の弱点は苦手とする気候の多さに強力な個体の少なさである。
ただ死なずの王以上の強力な不死者だと自由意志を持ち昼間でも活動できるがいかんせん個体数が少なすぎる。
いくら強力な魔物が召喚できるといえどその数には限りがある。だがそれを解決する手段が遂に完成してしまった。
その手段とはゴーレム。だがただのゴーレムと思うなかれ、【訪問者達】の作り上げたゴーレムの最たる特徴、それは意思があることだ。そうして意思のあるゴーレムを【訪問者達】はこう呼んだ、自動人形と。
場所は変わりノースシュタイン城から南へ50㎞、そこには見渡す限りの地平線があった。
その広大な平野に4人の人間がいた。
黒い外套に包まれた大柄な青年
ピエロの姿をした長身で細身の年齢不詳の男
ノースシュタイン城で死なずの王達を倒した少年
白衣を着た医者風の老人
彼らは四人ともある一点を見つめていた。その方向から来るのは万を超える自動人形の軍勢
。
「はは、まさか兄さんと共に戦うなんて夢にも思ってなかったよ」
ピエロが大柄な青年にそう話しかける。
「おい、俺はまだお前を許したつもりはないからな。」
青年は怒りの形相で弟にそう返す。
「今更兄さんに許されるなんて烏滸がましいことは思ってないよ。もし僕の罪を兄さんが許すなんて言ったら殺すからね。」
「ふん、お前を許すなんて言葉、口が裂けても言えるか。」
「まぁまぁお二方、兄弟仲がよろしいのは結構ですがそろそろ戦闘です。準備をしてはいかがかな?」
白衣の老人が二人の口論を諫める。年長者の言葉には素直に従うのか二人は武器を装備する。
青年は悪魔の手のような鋭利な小手を、ピエロは巻物を背中に二本背負う。
そして、全員の準備が終わったころ、自動人形の軍勢が彼らの100m先にまで迫ってきていた。
「では、行くか!」
青年の掛け声と共に戦闘が始まった。
◇
豪勢の限りを尽くした部屋でテレビの画面を見る青年。
彼の名藤沢 怜、【訪問者達】の一人で【真言】という能力を持っている。
彼が今見ているのはわずか1㎜の偵察用自動人形メッツェッティーノから送られてくる自動人形の軍勢と4人の戦いの映像である。
「ば、馬鹿な!ありえん!」
彼は映像を見て驚愕した。そこに映し出されていたのは自動人形の蹂躙ではなく、自動人形がたった4人の人間に蹂躙されているにわかには信じ難い光景だった。
自動人形は一体でも死なずの王と互角に戦い3体いれば気高き館の主をも屠る程の強さである。実際あの軍勢は【訪問者達】を裏切ろうとした【訪問者】
を処刑する際に試しに使用し殺したという実績がある。もし自分が奴らと戦うとしたら敗北することはないだろうがそれでも苦戦は免れないだろう。そんな化け物達を彼らは積木の城を壊すかのように破壊していく。
青年の拳が自動人形に触れるたびに自動人形の体が雲丹のように変形し周りの自動人形に突き刺さり爆発する。
ピエロが猫を撫でる様に自動人形の体に手を滑らせるたび自動人形がバラバラになる。
少年の剣は自動人形の体を両断し老人の指が自動人形を切り裂く。
こんな事は【訪問者達】でも上位のメンバーにしかできない御業だ。
「自動人形、グンターを呼んで来い。」
彼はメイド型自動人形にとある人物を呼ぶよう頼んだ、脅威の正体を知るためにこの世界最高峰の頭脳、グンター・ハムンカラビという狂人を。