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緊急路上注意報!

1.緊急路上注意報!


 確か諦めて、目を閉じたはずだったが・・・?

 ここは・・・。天国・・・ではなさそうだ・・・。

 だけど、地獄でもなさそう・・・。

「どこなんだ―――!」

 叫んでみても答えてくれる人はいなかった。

 再度、あたりを見回してみる。

 見えるのは木。

 前も後ろも横もどこもかしこ、木が生えていた。

 そして、先ほどいた道路も住宅街も一切なかった。

 これは、いわずと知れたあの、

「まさか・・・いや?いやいやいや?!異世界トリップ?!ですか・・・???」

 ありえない。そう、ありえないのだ。

 ぬれていたはずの身体も、一切ぬれてなどいない。

 あの時は死んだと、諦めた。心底、絶望?して最後は、もうどうでもよくなった。

 どんなに、上に向かっても、自分は鉛のように重くて、決して、上に進めなかった。

 生きることをあきらめたのだ。

 にもかかわらず、自分は、生きて?いる。

 ありえないけれど、自分の頬をこれでもかというほど、つまんで、引っ張ってみる。

 そうすると、激痛が頬を走った。

「痛い・・・」

 それが現実・・・だった。

 あたりは、鬱蒼とした森が広がっている。

 覆いかぶさったような木々の間からは、確かに青空が存在しているが、鬱蒼とした木々が邪魔をして、光があまり地上まで到達していなく、薄暗く、不気味だ。

 とりあえず、どうしてか分からないが、とりあえず、助かったらしい。とりあえず、喜ぼう。棚ぼた的だが喜ぼう。それに色々と思うところがあるが、それはとりあえず横に置いておこう。

 そして、なんで、誰もいないところに、自分はいるんだろうか?

 いや、みなまで言うな。

 自分が悲しくなるから。

 むしろ、むなしくなりすぎるから。

 誰か、答えてくれ。

 自分はしょせん村人A。いや、それすらなれず、こんな何処ともわからずに、朽ちていくだろう。

 異世界トリップなど、お話の中だけ。しかもオタク用語のような物。

 そんな中で、主人公などと、夢見るなど、おこがましい年齢。

 それに、最後、心底諦めた。生きる事も諦めた。

 主人公にあるまじき、生きることの放棄。

 何が何でも、生き延びてやるって根性もなし。 

 いや、一般に書かれている携帯小説などを見るともしかしたらありえるかも!なんて期待は、しない方が身のためだ。そんな素敵なチートなど、得られる性格などしていない。

 脇役主人公ならもしかして!なんて思うのも、辞めておいた方がいい。だって、しょせん自分だから。私だから。のたれ死なないならいいだろう。

 遠くの空を見る。

 何とも言えない意識のとんだ瞳を空に向ける。

 目から汗が落ちてきそうだった。

 そう、目下の心配事は、死なないよね?という事。

 一応助かったから、これから死を目前になどしたくない。

 そんな死を目のあたりにする根性なんてありません。

「・・・。・・・」

 周りを見回す。

 鬱蒼とした木々が広がっている。

 遠くから不気味な獣の雄叫び聞こえる。

「・・・。・・・」

 私死んじゃうんじゃね?

 誰かに会う前に死ぬんじゃね?

 現代日本に生きてきた。もちろんこんな所に来たことなんてない。

 原始的な火のつけ方も、森の中での遭難の時の対処法など知るよしもない。

 やばくね?やばくね?

 しかも、もし、人間にあったとしよう。それが本当に、大丈夫な人間かどうか。

 人さらいなどという者に出会って、人買いなどに売られたり?

 やばい。心底やばい。

 命もこれから先の生活も色々とやばい。

 夢見て(妄想)していた時はいい。それは現実じゃないから。けれど、それが現実になってみて、目下生きられるか不明だ。

 しかも、惰性で生きてきたような、意志の弱い人間なのだ。

 こんな過酷状況に耐えられるか、疑問だ。

 泣いたってしょうがないが、目からは透明な滴がとめどなく落ちていく。

 どうすることもできない状況に、不安と恐怖とどうしようもない感情が全身を襲い、こみあげてくる。

 人間とは勝手なもので、平坦に毎日を過ごしていると、そのことに不満ができ、生きている気力もなく、ただ、逃げ出したい衝動だけで、どこか遠くに行きたいと切に願っていた。

 けれど、実際こんな状況になると、すぐに、嘆いて、後悔する。しかも理不尽だと。そんな事願ってなどいないなどと、言って。

 普通だったら、ここいらで、こう、イケメン(死語)が、颯爽と現れて?助けてくれたりするが、そんな気配など一切ない。

 しかもイケメン(死語)が、本来なら、異世界に来た先でいるのではないだろうか?

 けど、自分の周りには一切いない。

 というか、人の気配すら一切ない。

 やっぱり自分は主人公ではない。はい、確定。

 もし、こんな状況で、助けが来るのを望んでも多分、無理だろう。自力で脱出しない限り、死亡フラグがなくなることはないだろう。

 大きく嘆息する。

 すると、お腹から盛大に鳴った。

「ああ、おなかすいたー・・・」

 どんな状況でもお腹はすくらしい。

「本当に、勝手ながら、夢なら覚めてほしい・・・」

 ほろりと、涙が流れるとともに、また、お腹が景気のいい音を奏でた。

「・・・。ほんとしまらねーな自分・・・」

 

 

 

 やっと、人里にたどり着いたときは、色々と、いろんなものを、失って、草を食べて、木の幹を食べて、きのこを食べて。とにかく、食べられそうなものは、口に入れてみた。

 あいにくと、森の中だったので、それなりに食料は充実?していた。

 毒キノコもあったけれど、それは、毒々しい色をしていたから、避ける事が出来た。

  何でも最初の一歩は踏み出すのに二の足を踏むけれど、それ以降はどうやら色々と吹っ切ることができるらしく、躊躇することがなくなった。というか、お腹がすきすぎて、かまわなくなったという事の方が多かったかもしれない。

 それに今の季節が、なんだか秋っぽい季節なのも要因だろう。

 食料が豊富でもあった。

 けれど、よくよく考えると、秋の後は、冬が訪れる。

 森で冬を過ごすのは、いささか危険ではないだろうか?

 いや、今の時点でも十分危険だろう。

 今の所野犬に遭遇してはないが、遠くで聞こえる唸り声を聞くと、やはり恐怖が来る。

 いつも、木に登り蔓で木に縛りつけてから眠るのは、熟睡することができない。

「・・・。・・・。やっぱり人里目指さないといけないよな・・・・」

 そんなことを考えながら、森を抜けた。

 果たして、人里に下りて、今より現状が打開するとは、思えない。

 もしかしたら、今以上に危険に遭遇するかもしれない。

 けど、

「もしかしたら、地球の、日本のどこかの森かもって可能性・・・」

 そういって、少し夕日が傾いた空を見上げた。

「やっぱそれはないよねえ・・・」

 空には月と思われるものが三つ存在していた。

「さすがに月は三つなかったよね・・・」

 嘆息しながら苦笑いしか出なかった。

 すでにここに来て、何週間がたったある日だった。

 いままでが、奇跡的に大丈夫だっただけで、これから先も大丈夫だとは限らない。


 やっぱり、人里探さないといけないな・・・。

 そして、途中山賊っぽい人間を見かけ。

 思わず、人間を見たことにうれし泣きしながら、山賊がいなくなるまで隠れていた。

 もちろん、危険そうだったから。

 そんな人間にフレンドリーに話しかけるほど、警戒心が皆無ではない。

 むしろ人間に対して、警戒心バリバリだったりする。

 だから、うれしかったりはしたが、見つからなくてほっとしている。

 一応女だから、色々と怖いし。人身売買とか、我が身が。

 死にそうならまだしも、とりあえず、食料は森の中に宝庫している。

 危険人物たちにかかわらなくても何とか、今の所、何とかなる。

 山賊っぽい人たちが来た方向に的を絞って、慎重にすすむ。何日かすると、人の気配がしてきた。

 そして、たどり着いた町は、森の閑散とした雰囲気とは真逆にとてもにぎわっていた。

 幸いなことに、人々の服装は様々だった。ドレス姿や、西洋風の貴族の姿。それにアラビアンナイトのような、ターバンを巻いた人。胸と腰にしか布を巻いてない人。

 ミニスカートのような民族衣装を着た男性。

 本当にさまざまな恰好をしていた。

「統一性のない人達だ・・・」

 そう言って、町の様子を物陰から見ていた。

「これなら自分が紛れ込んでもそんなに目立ちはしないだろう」

 手元ある。ハンカチを、頭にかぶってみる。

「・・・。まさに滑稽である・・・」

 自分の姿を思い浮かべて、嘆息した。

 やっぱり滑稽だった。


 どうしたものか?

 そういいながら、あたりを見て回った。

 不審にならない程度に、観察しながら、通貨を確認する。

 物を買っている姿の人物を見る。

 物々交換だったり、ここの通貨のような金貨や銅貨などで買っていた。

 人を避けながら、進んでいくと中央に噴水がある開けた広場になっていた。

 そこで、一旦、休憩がてら、噴水の端に腰を下ろした。

 さて、これからどうしようか。

 大体の情報はとりあえず確認できた。

 人々の様子や、食べ物、服装。通貨。

 意外と多種多様な民族が入り乱れて存在しているようだ。

 しかも結構栄えている。

 もしかしたら、王都みたいなところかもしれない。

 人に紛れるのにはちょうどいいだろう。

 ちらほらと、黒髪の人間を見かける。

 そう考えると、はるかにここに来る前よりも前向きに、感じた。

 もしかしたら、人種などの違いで、かなりの差別などにあったりしないだろうかとか。

 不審者扱いを受けてしまって、大事になったりしたりするなどの危険が潜んで行ったりしないか。

 けれど、一応は、さまざまな色合いの髪質や色合い。肌の色。目鼻立ちといった統一のない人々がそこにいた。

 絵美に、微かな安堵した。

 一休みするために、開けた中央広場の噴水の端に腰を下ろした。

 あたりを見回すと人々が、それぞれ、くつろいでいたり、誰かを待っていたり、子供たちが追いかけっこをしていたりと、にぎやかに過ごしている。

 そんな様子をどこか、落ち着かず眺めていた。

「コツンっ」

 ふと、足先に白いチョークのようなものが落ちていた。

 多分子供たちが、地面に落書きしていたのだろうか。

 絵美は、地面に手をついて、思い切って、描きだした。

「気がまぎれればいいなあ・・・」

 ふと、そんなことを無意識のうちに呟いていたけれど、本人は、気づかなかった。

 ずいぶん、絵を描いてなかったような気がする。

 昔は、毎日のように、描いていたが、毎日の生活に追われて、いつの間にか、描く事をやめたような気がする。

 すらすらと勝手に動く。

 今までの事も忘れてなんだか無心になって描いていた。 

 その内、自分が気づかないうちに、一人、二人と絵美の周りを人が囲んできた。


「君の絵、おもしろいね」

 そう言って、いつの間にか人が絵美の周りを囲んで絵美の何気なく描いていた絵を見ていた。

「・・・」

 絵に集中していたからだろうか、人が集まってみていることに気づかなかった。

 一人は興味深そうに、また一人は何のパフォーマンスかと、また一人は、いぶかしそうに見ていた。

 そして、またさっき声をかけてきた人物を再度見る。

 その青年は、深い空色の瞳をしていて、ぱっと見は、地味な印象をしていたが、よくよく見てみると、繊細な作りの顔をしていた。

先ほどから途切れることなく絵美に柔和に微笑み続けている。

「あのー・・・」

「うん、実に面白い絵だね!」

 そう言って、興味深そうに再度、絵を見る。

 そして、自分も再度、自分が描いた絵を見る。

 そこにあるのは、絵というよりも、イラストだ。

 しかも、萌え絵的な物。

 巨乳美少女。巨乳、あこがれるぞ。せめて、でっぱりぐらいはほしいものだ。

 いかせん、まったくのでっぱりがない。

「・・・。・・・。・・・」

 こんな異世界で、こんな絵は描いてはいけなかっただろうか?けれど、夢中で無心に描いていたのは事実。

 今さら、取り消すこともできないだろう。何人かの人の目は見ていたのだから。まあ、その内忘れるだろう。じゃ、今描いた絵は消さないといけないなとそう思って、消そうとしたら

「ねえ、君!聞いてるの?」

「あ、はい・・・」

 思わず、返事をした。

 すると、満足したようにその青年は

「うん、おもしろかったから、これ!」

 面白いですか・・・。何とも微妙な感想だ。上手とか、素晴らしいとかは、まあ、こんな巨乳美少女に求めるものでもないか。

 男性は、絵美の小さな手のひらに金貨を強引に乗せ

「じゃあねー!」

 そう言って、その場を離れて行った。

 遠くでは、その青年を探していたのだろうか、青年よりも長身なしっかりした体つきの男が青年の事を見つけてほっとしていた。

 多分自分の手のひらにあるのは、この世界にある通貨の一つなのかもしれない。

「・・・。・・・」

 少し、棚餅的な気がするが、ちょっとラッキーなんて思ったりした。

 確かに少し悪い気がしたが、勝手に押し付けて行ったのだから、いいかなあと、自分に甘くなってみた。 

 それに、少し考えてみる。

 もしかしたら、路上パフォーマー的な事をやったら、少しは金銭が稼げるかもしれないと、思ったからだった。

 少し先の展望が見えた気がしたとき、周りからは人が消えていた。

 先ほどまで周りで、にぎわっていた、他の路上パフォーマーの人たちもいなくなっていたのだ。

「そこで何をしている!」

 そう言って、絵美の両手を抑えるようにして、とらえたのだった。

 まあ、とっさに逃げようとしたのは、条件反射だと思ってください。

 けど、逃げられなかったけどね!

 絵美は一瞬何が起きたのか分からなかったが、数名の自分を囲んだ人間達の恰好を見て、なんとなくわかった。

 多分ここの治安を取り締まる機関の役人なのだろう。腰に剣を刺して、腕には紋章が描かれてある。

「あのー・・・」

 これって、やばいよね?

「この広場では、路上パフォーマンスは禁止されているはずだが?一緒に来てもらおうか?」

 両手をがっしりと、両方から掴まれて、逃げられないように固められている。

 あれ?これってかなりやばい?

 まさかこのまま、命の危険とかになったり?するの?!

 道理で、さっきまでいた他の路上パフォーマーが、いなくなっているはずだ。

 ぎゃー!

「いえ、私はただ・・・」

「すべこべ言わずに、ついてこい!」

 ドナドナドーナと子牛のように連れていかれました。


 ついた先は・・・。

 


 



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