果の人は
その男の絵は素晴らしかった。
そう、素晴らしかったのだ。
息ができない程の何かに自分の全身は貫かれるほどの衝撃と、せり上がるような切情に似たものが全身を貫いた。
それは紛れもなく、全身で打ちひしがれるような、何かを待ちわびたようなそんな衝撃だった。
そして、空川絵美は、呟く。
「何故、こんな絵を描けるだ・・・!」
それは、全身で、叫んでいた。
「何故・・・っ!」
「何故っ!」
誰もが、その絵を描いたものを称賛した。
あいつは天才だと。
この国の宝だと。
けれど、皆誰もがその絵とともに、その男の姿を見たものは、衝撃を受け息をのんだ。
称賛に値するその人物は容姿も芸術品のように整っていた。
そう、その男が描いた絵のように。
神々しささえまとっていた。
男は天才だった。
それは、絵に関してだけではなく、すべてにおいて天才だった。
皆が天才だと賞賛した。
けれど、絵美は慟哭した。
たとえそれが真実であったとしても、その男は
「奇人、変人、変態なんだよ―――!」
誰もが彼の事を天才だといった。
誰もが彼の事を国の、そして世界の宝といった。
そして、
誰もが彼を、
天才、奇人、変人、変態だと声を大にして言った。