~第五十四話~
新しく三年生として学校生活が始まってから、学校が休みの日
俺には行く場所が、出来ていた。
行く場所というのは、決まっていて、秋葉である。
何故、その秋葉原に行くのかと言うと、その秋葉にあるお店、ラブ喫茶「アイライク」で、バイトしていて、そのバイトの日なので、秋葉に向かうのであった。
山野辺市から、電車に乗り、数十分、目的地、秋葉にたどり着く。
気候は、春なので、風が温かく、薄着でも大丈夫な感じだった。
俺は、その街中を歩いて、目的地を目指す。
数分後、ラブ喫茶「アイライク」に、たどり着いた。
店の中に入って、店長の東雲紫さんに、挨拶をする。
「おはようございます、ゆかりさん」
「あ、まこさん、おはようございます、今日もよろしくおねがいしますね、あ、そうだ……実は、まこさんの服なんですが、今日はいつもと違った服を用意してあるので、それを着てくれますか?」
「いつもと違った服ですか? いつもは、ウエイター服だったけど、今日は違うんですか?」
「ええ、コスプレデーって言う訳じゃないのだけど、まこさんの服、洗濯中で、まだ準備できてないから、かわりの服を用意してありますから、それを着てください」
「わかりました、じゃあ、着替えてきます」
そう言って俺は、控室に入る。
中に入って、自分の服を見てみると、驚いた。
まず、スカートとかそういうのではなく、長ズボンで色が緑色だった。
ジャンバーも緑色なので、はっきり言うと、陸上自衛隊が着るような軍服だったからである。
これを着るのか……? 迷ったが、店長に言っちゃったので、俺は着替えてみる。
胸が小さいからか、サイズがぴったりからか、すんなり袖を通す事が出来て、鏡を見てみる。
そこに映っていたのは、軍服を着た俺が映っていた。
はっきり言うと、なんか……かなり似合っている。
今日は、この格好で接客するのか……頑張ろう……と思い、控室を出て、紫さんに挨拶した。
「紫さん、着替えてきました」
「まこさん、物凄い似合ってますね、着せといてなんですけど、ほんと似合ってますよ?」
「は、はあ……ありがとうございます」
「じゃあ、今日の仕事、よろしくお願いしますね?」
「分かりました」
そう言って、俺は仕事に入る事にした。
俺は、いつもと同じように、接客の仕事をする。
相変わらず、俺に声をかけて来るのは、女性ばかりで、しかも「付き合って下さい!」や「彼女にして下さい!」とか、言ってくる女性が多くなった。
一体彼女達には、俺の姿はどう映っているのだろうか……? と、疑問に思ってしまったのである。
そんな感じに接客を続けて、休憩時間になったので、控室に向かうと
「あ、まこさん、こんにちは~」
控室にいたのは、あっきーこと、秋村真帆さんだった。
「あ、こんにちは」
「今日のまこさん、ほんとに大人気ですよね? お客の皆さんが、皆、まこさんの事、見てましたし?」
「え、そうなの?」
「はい、「あの人、かっこいいよね?」とかお客様で、言ってましたよ?」
「別に、かっこよさをアピールした訳じゃあ、ないんだけどなあ……」
「あ、そうだ、まこさん、このバイトが終わったら、時間あります?」
「バイトが終わったら、家に帰るだけだから、何も予定はないけど?」
「じゃあ、終わったら、私に付き合ってくれますか? 実はですね……行きたいライブがあって、チケットを丁度二枚用意してて、友達と行こうと誘ったんですけど、キャンセルになっちゃったんですよ、まこさん、私と一緒に行きませんか?」
あっきーがそう言ってきたので、俺は、どうしようかと迷ったが
「うん、分かった、一緒に行ってあけるね」
「ありがとうございます、じゃあ、バイトが終わったら、声をかけますね? では私は、休憩が終わりなので、ホールに戻ります」
そう言って、あっきーは、控室から出て行った。
こうして俺は、あっきーとライブに行く事が、決定したのであった。
休憩が終わった後、いつものように仕事をして行き、バイトの終了の時刻になり、俺はと言うと、店長の東雲紫さんに、「お疲れ様です」と、挨拶をして、控え室の中へ入り、着替える事にした。
いつもはウエイター服のようなものだったのだが、今日のは、全く違う服装で、それを脱いで、綺麗に畳んで置く。
そして、私服に着替えて、控え室を出て、外に行こうとすると、秋村真帆こと、あっきーが話しかけてきた。
「まこさん、私も着替えるので、外で待ってて下さいね?」
「分かったよ」
そう言って俺は、店の外で待つ事にした。
店のそとで待つ事、数分後、私服に着替えたあっきーが、やって来た。
「お待たせしました、じゃあ、行きましょうか」
「りょ~かい、ところで……」
「何ですか?」
「そのライブ会場って、ここから結構遠いの?」
「いえ、そんな事ないですよ? まあ、数十分歩く程度ですが、そんなに遠くはないと思います」
「そう」
そう言いながら、ライブ会場を目指す。
ライブ会場は、あっきーの言ったとおりに、数十分歩いた場所にあった。
会場の外に並んでいるのを見つけて、その後ろに並ぶ。
「結構人多いですね、まるでコミックマーケットの列みたいです」
「確かにそうかも……って、あっきーはコミックマーケット、行った事あるの?」
「あ、はい、ありますよ? まあ、毎回行っているようなものですし、サイトにその時の状況を、書き込んだりもしましたよ」
「そうなんだ」
あっきーのやっているサイトと言うのは、あっきーの旅立ち日記と言うサイトである。
そのサイトで、俺の写真とかも使われているので、アクセス数がかなり伸びてますと、前にあっきーに聞いた事があった。
「結構並んでますし、少し時間かかりそうですね」
「確かにそうかも」
客の列を見てみると、ほとんど男ばかりで、女子の姿がまばらにいる程度に見えた。
そして、時間がたち、列が動き始める。
俺達もその列の動きに合わせて移動して、会場の中に入った。
会場の中は、コンサートホールになっていて、結構広々とした空間になっていて、俺達の座る席は、ステージから中央付近の席で、ステージ上に、幕が閉まっている。
これで、ステージにスクリーンがあったら、映画館だな……と、俺は、思ってしまったのだった。
「あ、もうすぐ始まりますよ」
「そういえば……まだ誰のライブか、聞いてないんだけど……一体誰なの?」
「それは、見てからのお楽しみと言う事で、お願いします」
「そう」
そう言って、時間が経過して、開演のブザーが鳴る。
そして、幕があがり、観客が歓声をあげて、大音量になっていき
ステージ場に、現れたのはと言うと……
俺の、会った事のある人物が、現れた。
「みんな~私のライブに来てくれてありがと~!」
そう言って出てきたのは、俺のよく知っている人物だった。
水色の衣装を着てステージ上に立っているのは、前にドラマに一緒に共演した蓮城麗華が、ステージの上にいたのである。
うん……さっき、麗華が「私のライブ」って言ってたから、これ……麗華のライブなのか……と、俺は思ったので、隣にいるあっきーに質問してみた。
「ねえ、あっきー、ライブっ……蓮城麗華のライブ?」
「はい、そうですよ? このライブは「蓮城麗華の~スマイルライブ~と言って、麗華さんがやっているラジオ「麗華のスマイルファンタジー」の放送百回記念ライブなんです、私、麗華さんの曲とか結構好きですから、ライブに来たんですよ、あ、ちなみにまこさんが登場した回も聞きましたよ?」
「あ、そうなんだ……」
そっか~……あっきーもあの放送聞いてたのか……
なんか、ちょっと恥ずかしくなってしまった俺だった。
ステージ上では、麗華がマイクを通して、こう言ってくる。
「は~い、じゃあ、まず最初の一曲目を歌いたいと思います、最初の一曲目は、私のやっているラジオ「麗華のスマイルファンタジー」テーマ曲です、聞いて下さい、「ミラクル・レイン」!」
麗華がそう言って、音楽がスタートする。
曲の感じからして、アップテンポの曲で、麗華がスムーズに歌いだした。
「あの頃から、私を見つけてきた言葉、その思いを風に乗せて、運ぶさざ波の音~」
そんな感じの歌い出しから始まって、観客席が盛り上がってきた。
歌が終わっても、会場内が盛り上がっていて、客席から「麗華ちゃ~ん!」とか、聞こえて来たりしている。
「みんな、ありがとぅ~じゃあ、次の曲、行ってみよ~!」
麗華がそう言うと、観客が再び「うお~!」とか言い始めた。
うん……なんかついていけないな……と、俺はついつい思ってしまったのである。
そんな感じに会場が盛り上がって、数十分が過ぎて、麗華がこう言ってきた。
「じゃあ、次が最後の曲になります、聞いて下さい!「思いはロマンスの風~」」
そう麗華が言って、音楽が始まる。
最初と違って、ピアノ調のメロディが流れて、麗華が歌い出す。
「思いを風に乗せて運ぶ、悠久の調べの中に轟く、新しい息吹~」
そんな感じに歌いだして、歌い終わったら、拍手喝采だった。
そして、麗華がこう言う
「は~い、これで私のライブは終わりですが、また何かの記念に、ライブやれたらいいな……と思います!では、みんな? さよ~なら!」
そう言って、ライブが終わったのであった。
ライブが終わって、客が次々に会場から出て行く。
俺達も出ようと思ったが、一応挨拶しとこうかな……と思い、持っている携帯電話で、麗華に電話した。
「はい、麗華です」
「あ、真琴だけど?」
「真琴? 真琴から電話なんて、初めてじゃない? 一体どうしたのよ?」
「実は、さっき麗華のライブ会場にいたからね、声かけとこうと思って」
「そうなの? なら言ってくれたらよかったのに、とりあえず楽屋に来てくれる? 私が教えるから」
「わ、わかった」
麗華が楽屋の場所を教えてから、電話が切れる。
「あっきー? 麗華が、来てって言ってるから行く?」
「あ、はい! それにしてもまこさん……麗華さんの電話番号知ってたんですね?」
「まあ、前にラジオに参加した時に教えて貰ったかな」
「そうなんですか」
そう言いながら、会場内の楽屋の中に入った。
中に入ると、着替え終わったのか、さっきの衣装とは違う麗華が、そこにいた。
「あ、真琴、会うの久しぶりね~」
「そうだっけ?」
「そうよ? え~っと……そちらの方は?」
「あ、同じバイト仲間のあっきー」
「あ、秋村真帆です、あっきーと呼んで下さい」
「そう、私も麗華でいいわよ? それにしても……真琴、バイトなんかしてたんだ? 何所?」
「何所って……もしかして来るつもり?」
「当たり前じゃない、バイト姿の真琴を見てみたいしね?」
「……ラブ喫茶「アイライク」って所」
「分かったわ、覚えておくわね」
「あ、あの、麗華さん、写真撮っていいですか?」
「いいわよ、あ、どうせなら三人で撮りましょうか? ほら、真琴もこっち来て」
「ま、いいか」
そう言って、三人で写真を撮る。
その写真を、あっきーが「サイトにアップしてみよっと~」とか言っていた。
麗華と話し終わり、別れて、建物の外に出ると、もうすっかり暗くなっているので、帰る事にした。
帰る途中、あっきーがこう言って来た。
「まこさん、ありがとうございますね? 付き合って貰っちゃって」
「いいよ別に、結構楽しめたしね」
「そうですか、よかったです、また何かあったら、一緒に行きましょう?」
「うん、考えとくよ」
「じゃあ、私はこっちなので、さようなら」
「さようなら」
そう言って、あっきーと別れて、家に帰る事にしたのであった。




