~第十九話~
季節もすっかり、秋に突入して夏の、気候と違って、ちょっと涼しく感じる頃、俺は、いつものように、学校へと向かっていた。
俺の通っている、山野辺高校に辿り着く。
上履きに履き替えて、自分のクラスの中に入ると、何やら集まって、話しているのを見かけた。
「あ、南山さん、おはよう」
そう言ってきたのは、このクラスで、委員長をしている、西崎彩香さんであった。
「西崎さん、一体……何の話をしているの?」
「実はね? 今度の学園祭の、出し物を何にしようか、皆で相談しているのよ、今の所、男子の意見がメイド喫茶、女子の意見が劇とお化け屋敷って、言っているの、南山さんは、どれにしたらいいと思う?」
そう言ってきたので、俺は、どれにしようか悩んだが、劇とか面白そうなので
「じゃあ、自分は劇に一票入れるよ」
「解ったわ、南山さんは、劇に一票ね」
そう言って、紙に何かを書いていた。
たぶん、このクラスのアンケート表だと、思われる。
とりあえず、答えたので、俺は、自分の席に座る事にした。
そして、チャイムが鳴り、担任の朝崎翠先生が、やって来て、こう言った。
「あ~、今のHRの時間に話す事があるぞ、来週、学園祭をやるのだが……このクラスでの、出し物を決めたいと思う、委員長、あとは頼む」
「はい、分かりました」
そう言って、西崎さんが、こう言う。
「さっき、クラスで何の出し物をやろうと、アンケートした結果、メイド喫茶と、お化け屋敷と劇が候補にあがって、で、結果はというと、一票差で、劇が多いです、皆さんは、劇でよろしいですか?」
一票差と言う事は……もしかして、俺の票で、決まったのか?
クラスの皆は「異議な~し」とか、言っていたので、これは、決まったな……と、思ったのである。
「じゃあ、劇で問題はないですね、では、何の劇をやるかですけど、何が良いと思います?」
「名作をアレンジしたのが、やってみたいかも?」
そう言ったのは、クラスメイトの有栖川美紀子であった。
「私、演劇部だから、台本は任せて?」
「じゃあ、有栖川さんに、お任せしていいですか?」
「うん、OKだよ」
「じゃあ、台本は有栖川さんが出来たら、言って下さい、出来た台本をやりたいと思います、皆さんは、それでいいですね?」
「問題ないよ~」
そう美鈴が、言っていた。
「先生、劇という事で、決まったのですが、よろしいですか?」
「劇か……じゃあ、体育館のステージを申請しとくよ、それでいいか?」
「分かりました、それで構いません、じゃあ、これでHRを、終わらせてよろしいでしょうか?」
「ああ、じゃあ、授業を始めるぞ」
そう言って、授業が始まるのだった。
こうして、学園祭の出し物は、どうやら、劇に決まったのである。
一体、何をやるのか……まだ分からないままだったが、変な役とかは、やりたくないな……と、思っていたのであった。
学園祭で、出し物を決めた次の日になり、俺は、いつものように学校へと向かった。
俺の通っている山野辺高校に辿り着いて、教室の中に入る。
教室の中は、既に何人かいて、雑談していたりしていた。
俺も、自分の席に座って、鞄から教科書とかノートを机の中に入れる。
しばらくすると、俺の親友の栗谷美鈴がやって来て
こう言ったのであった。
「まこ~おはよう」
「おはよう」
「学園祭さ? 劇する事になったよね?」
「そう見たいだね?」
「一体、何の劇をやるか、楽しみじゃない?」
そうか……? 俺は、少なくとも楽しみとは、思っていなかったりするのである。
「そう?」
「まこは、楽しくないの?」
「いや、まだ何やるかわからないし……」
「まあ、そっか、そうだよね」
そう話していると、チャイムが鳴り、担任の朝崎翠先生がやって来て、こう言う。
「あ~、HRを始めるぞ、で、連絡事項だが……学園祭で劇をやるといったら、駄目とかほざいた奴がいたが、権力を振りかざしたら、Okしてくれたので、使用は問題ないぞ」
一体、何したんだ? この先生……
「それじゃあ、委員長、あとは頼む」
「は、はい、分かりました」
そう言って、このクラスの委員長、西崎彩香が、黒板の前に立つ。
「じゃあ、昨日も言いましたが、このクラスで、劇をする事になりました、それで、有栖川さん? 台本は、出来ましたか?」
そう委員長が言うと
「うん、徹夜して書いたからちょっと、眠いけど、一応は出来たよ、はい、これが台本ね?」
そう言って、有栖川は、彩香に台本を渡す。
「では、拝見します…………じゃ、じゃあ、配役を決めましょう」
……えらく沈黙が長かったんだが、一体何が書いてあったんだ?
「配役は、全部で六人です、これは童話シンデレラをモチーフにした、オリジナル作品みたいなものなので、配役票を書きますね」
そう言って、彩香はチョークで、黒板に文字を書く。
「配役は、全部で6人、王子、シンデレラ、継母、意地悪な姉1、魔法使い、ナレーションとお城の兵隊です、お城の兵隊はセリフが少ないので、ナレーションと一緒にします、じゃあ、この中から平等に、くじ引きで決めましょう」
委員長は、クジを作って、箱の中に入れる。
「では、皆さん、ひとりずつ順番にくじを引いてって下さい、キャストに外れたものは、雑用とか衣装係をやって貰います」
そう言って、くじ引きがスタートした。
最初は男子から引いていく、男子は、ハズレを引いたらしく、がっかりしていたり、嘆いていたりしている者もいる。
どうやら、男子全員、くじを引いて、キャストには当たらなかったみたいである。
次に女子の番になって、くじを引く。
まず最初にキャストを引き当てたのは
「私が、シンデレラ見たいです……」
このクラスの人気者、汐崎美咲だった。
次に引き当てたのが
「私は、継母役だ~」
美鈴だった。
そして、次に引き当てたのが
「王子……私が?」
このクラスで、かなり地味な存在感のある人物、住吉愛子で
「私が魔法使い……ま、いっか~」
そう言ったのが、有栖川美紀子で、俺はというと
「あ、ナレーション役と兵隊役だ……」
俺は、ナレーション役と兵隊役に決まったのであった。
そして、最後に
「……私が、意地悪な姉ですか……むずかしい……というか、出来るの……?」
委員長の、西崎彩香が意地悪な姉を引いたのであった。
こうして、キャスト全て決まったので、委員長は、こう言う。
「キャスト全て、決まったので、練習は、授業が終わってからの、放課後に集まって、やりたいと思います、キャストの皆さん、よろしいですね?」
「私は、OKだよ」
「私もOK~、さ~って、がんばるぞ~」
「……私も」
「自分もOKかな、まあ、遅くなると妹に何言われるかだけど……」
「私も、家族に何言われるか、分かりませんが、まあ大丈夫だと思います」
「じゃあ、決まりですね、先生、決まりましたので、終わりにしていいですか?」
委員長がそう言うと
「そうだな、よし、HRを終わりにして、授業を始めるぞ」
そう言って、授業を始めるのであった。
こうして、放課後、六人で残って、練習する事になった。
学園祭での役が決まって、その日の放課後。
俺は、皆で集まって、劇の練習をする事にした。
教室は、衣装や小道具を作る人で、使うので、別の部屋で、練習する事にしたのである。
使われた場所は、多目的ルームと、呼ばれている場所であった。
「じゃあ、ここで、練習を始めたいと思います」
そう、委員長の西崎彩香が言う。
そう言って委員長は、人数分の台本を、俺たちに配る。
俺は、その台本に目を通してみて、驚いた。
なんせ、タイトルが「シンデレラ~ヤンデル乙女たち~」だったからである。
これを書いたのが、同じクラスの有栖川さんなので、一体何を考えて、これにしたんだ?と、問い詰めたくなったが、まあ、聞くのをやめる事にした。
配役は、朝のHRで決めたので、俺の役は
最初の冒頭を言う、ナレーションと兵隊の二役であった。
ちなみに、他の役はと言うと、王子が、住吉愛子で、継母が、親友の栗谷美鈴、意地悪な姉が委員長の西崎彩香で、魔法使いが、この台本の昨夜の有栖川美紀子で、最後にシンデレラが、汐崎美咲に、決まったのであった
「じゃあ、最初のシーンから、皆で読みましょうか? 南山さんから、お願いします」
委員長が、そう言ってきたので、俺は、台本を読む事にした。
「じゃあ、始めるね、昔、昔、ある所に、シンデレラと言う、少女がいました」
俺が、ナレーションの台詞を言って、台本の読み合わせが、始まった。
ナレーションと言うだけあって、台詞が結構多く、しかも兵隊役もやる事になっているので、これは、覚えるの大変だな……と、思っていた。
そして、数時間の練習が終わり、暗くなってきたので、今日の練習は、終わりにして、帰る事にした。
帰る途中、帰る方向が同じなので、美咲と美鈴との、三人で、歩いていると
「それにしても、まこ?」
「何? 美鈴」
「まこが、王子様だったら、よかったな~って、私、思うかな?」
「あ、それは私もです、まこが王子様だったら、私も、全力でシンデレラやるのに……」
そう言われてもな……俺は、どう答えればいいんだ? そう話しながら、家に着いたので、二人と別れた。
家に入ると、既に妹の亜季は、帰っていて、夕飯の準備をしていた。
「お姉ちゃん、お帰りなさい、今日は、遅かったけど、何してたの?」
「何してたって、来週学園祭だから、それの準備かな?」
「学園祭の準備? お姉ちゃん? 一体何をやる事になったの?」
「自分のクラスは、劇をやる事になったんだ」
「劇? お姉ちゃんは、何の役なの?私、絶対に見に行くね?」
「自分は、ナレーションと兵隊の二役だよ、亜季……来るの?」
「うん、学園祭の日って、確か、休日の日だから、私、お姉ちゃんの学校に行くね? お姉ちゃん、時間が出来たら、一緒に見てまわろう?」
亜季が、そう言ってきたので、俺はと言うと
「まあ……そんな時間が出来たら、そうしようか……」
そう言う事にした。
そして、時間が過ぎて、亜季の夕飯も完成して、二人で食べて、明日の準備をして、寝る事にした
こうして、俺の、劇の練習一日目が、終わりを告げたのである。
学園祭で、劇をする事になって、その練習をして、次の日。
いつもと同じ時間に起きて、そして、いつもと同じ時間に、高校に辿り着き、教室の中へと入る。
教室の中は、学園祭に向けてか、作業している者がいたりしていた。
俺は、劇の役者をする事になっていたので、台本を手元に置いていたりしている。
自分の席に着いて、しばらくぼ~っとしていると
「おっはよ~まこ」
そう話しかけて来たのは、俺の親友の栗谷美鈴だった。
「おはよう」
「まこは、家に帰って、練習とかしたの?」
「そう言う美鈴は、やったの?」
「私? 私は、全然やんなかったかな、見たいアニメに夢中でね~」
「そう……自分も、やらなかったかな」
「何だ、同じなんじゃん」
いや、全く違うと思うのだが……
そう話していると、キーンコーンと、チャイムが鳴ったので、話すのをやめて、先生が来るのを待つ事にした。
数分後、担任の朝崎翠先生がやってきて、こう言う。
「皆、おはよう、今日は、学園祭の準備をする事に決まったので、授業はやらないぞ、まあ、こっちも楽できるから嬉しいけどな、じゃあ、おまえら、しっかりとやるんだぞ~」
そう言って、懐から小型のゲーム機を取り出して、ピコピコ遊んでいるのであった。
うん……てか、遊んでいいのか? 仮にも教師だろと、思うのだが……
まあ、話しかけた男子生徒が、「黙れ!邪魔をするな!」とか言われていたので、黙ってる事にした。
午前中は、劇の準備をする事にした。
そして、午後は、六人で集まって、多目的ルームで、台本の読み合わせをする事にしたのであった。
ちなみに六人と言うのは、俺、美鈴、美咲、実紀子愛子、彩香である。
ちなみに全員、俺も含めて女子なので、気軽に話しながら、台本の読み合わせをしているのであった。
「じゃあ、今日は、途中からのシーンから、言いましょうか」
そう言ったのは、委員長の彩香で、それに皆はうなずいた。
「じゃあ、私から行くね~」
美鈴は継母の役なので、そこから台詞を言う。
「うふふふ、今日もまた一人……餌食になったわ……」
「お母様……いい方が怖いです、それに人じゃなくて、これ魚ですよ……」
「あら、いいじゃない……人も魚も変わらないわよ……うふふふふ」
うん……聞いてて思った事、あきらかに変な台本だとは思う。
というか、怖いぞ……なんか……そんな感じで、進めていって、暗くなって来たので、今日の練習は、やめにするのであった。
練習し終わって、帰り道。
今日も美鈴と美咲の三人で、帰る事にした。
「まこ、今日も疲れたね~」
「何言ってんの、まだ若いでしょ?」
「そりゃそうだけど~、まこは疲れなかったの?」
「まあ、疲れたと言えば、疲れたかな?」
「じゃあさ? ちょっと寄り道していかない?近くのケーキ屋さんとかに、寄って行こうよ?」
「あ、私も、それに賛成です、まこ、行きましょう?」
そう言って俺の手を掴む美咲。いきなり掴まれてびっくりしたが、別に嫌じゃあなかったし、そのままにしといたのだった。
「あ、私もまこと、手をつなぐ~」
そう言って、もう片方の手を勝手に握ってくる美鈴、うん、三人一緒に手を繋ぐなんて、かなり変だろ?と思ったが、ま、いいか……と思い、やっぱりそのまま行く事にしたのであった。
ケーキ屋さんによって、ケーキを食べて、二人と別れて、家に帰ると、誰もいなく、いつもなら妹の亜季がいるのだが、今日はいなかった。
丁度誰もいないようなので、俺はと言うと、一人で台本の読み合わせをする事に決めたのであった
こうして、俺の練習二日目が、終わりを告げたのであった。
次の日、俺は、今日も遅刻する事なく学校へと向かっていた。
俺の通っている山野辺高校に入ると、学園祭が近いからか、他のクラスの生徒が、慌ただしく動いているのが確認できてたりしている。
自分のクラスに向かう途中、声をかけられた。
「あ、先輩」
声をかけてきたのは、俺の後輩で、同じバイト仲間の、東雲玲だった。
「あ、玲? その衣装は……」
玲は、何故かチャイナ服を着てたりしている。
うん、しかも……かなり似合ってる、全く違和感がない、かつらやウィッグもつけていないというのに、ショートの美少女に見えてるから、かなり不思議な感じだった。
「あ、これですか? 実は、僕のクラスの出し物、最初、普通の喫茶店だったんですけど、クラスの皆が、それじゃあ面白くないから、コスプレ喫茶にしようとか言い出して……で、僕の衣装が、これになったんです……」
「そ、そうなんだ……その衣装、どうしたの?」
「クラスの女子が、自作で作ってきたらしくて、しかも……僕のサイズぴったりなんですよ……ちょっと恐怖を感じました……ところで、先輩のクラスは、一体何をするんですか?」
「こっちのクラスは、劇かな」
「そうなんですか、じゃあ、僕、姉さんが来ると言ってるから、姉さんと見に行きますね?じゃあ、僕は、自分のクラスに戻ります」
そう言って、玲は、自分のクラスへと帰って行った。
俺も、自分のクラスの中へと入る。
中に入ると、劇に参加するメンバーが、衣装を着ていた。
「あ、まこ~、どう? 似合う?」
そう言ってきたのは、俺の親友の栗谷美鈴で、美鈴の役は、継母なので、それっぽい衣装を着ていたりする。
「似合うんじゃない?」
「そう? ちょっと太っちゃったと思ったけど、きつくなくて、よかったよ~」
そうなのか? 全然太ったようには、見えないんだが……
そう思っていると、キャーっと、歓声があがった。
何事か? と思うと、王子の衣装を着た
クラスメイトの住吉愛子が、困った顔をしていた。
うん……すげえ似合ってる、というか……かなりのイケメンに見える、化粧のおかげか?とか、思ってしまった。
「あ、南山さん、おはよう」
そう愛子が、話しかけてきたので
「お、おはよう」
「ど、どうかな……この衣装、私に似合ってる?な、なんか、クラスメイトが、凄い騒いでるのがちょっと気にはなるんだけど……」
「ばっちり似合ってるよ? まこもそう思うよね?」
「うん、凄い似合ってる、イケメンに見えるよ」
「そ、そう……、私としては、ちょっと嬉しくないかな……、私、女だし……」
なんか小声でぶつぶつ言っていたが、気にしない事にした。
そう話していると、魔女の恰好をした、有栖川美紀子が、話しかけて来た。
「南山さん~、貴方の衣装も出来たから、着てみてね?はい、これ」
そう言って、俺に衣装を渡してきた。
受け取った衣装を見てみると、RPGとかに出てくる、兵士の衣装だった。
俺は、ナレーションと兵士役なので、その衣装に着替えてくる事にした。
着替え終わって、教室に戻ると
「まこ……似合ってます……」
そう、赤らめて言ってきたのが、継ぎ接ぎだらけの衣装を着た、シンデレラ役の、汐崎美咲だった。
似合ってるって言われてもな……どう、反応していいか、分からないんだが……皆で、劇の衣装を着て、早速台本の読み合わせをする事にした。
そして、時間が過ぎて、放課後。
きりのいい所で、練習を終了して、真っすぐ帰る事にして、家路へと着く。
家に着くと、もう既に妹の亜季がいて、夕飯の支度をしているのであった。
「あ、お姉ちゃん、お帰り、今日は早いんだね?」
「そう言う亜季こそ、早いね?」
「まあね、学校終わったら、直ぐに帰ってるからね?」
「そうなんだ」
「あ、もうそろそろ夕飯出来るから、待ってて? お姉ちゃん」
「分かった、そうするよ」
俺は、そう言って、待つ事にする。
そして、夕食ができて、今日は母親の美鶴母さんが、遅いので
二人で夕飯を取る事にした。
食事が終わって、お風呂に入って、なんかえらく疲れたので、さっさと寝る事にしたのだった。