~第十七話~
夏休みも後半にさしかかり、俺は、親友の栗谷美鈴と、一緒に、とある場所に来ていた。その場所とは……
「まこ~、到着したねーービックドームに」
そう、俺と美鈴は、ビックドームと呼ばれている建物に来ているのであった。
何故、このビックドームに来ているのかと言うと、事の始まりは、こうである……
俺は、朝起きて、いつものように朝食を取っていると、電話が鳴ったので、それに出る。
「はい、南山です」
「あ、まこ? 私だよ?」
「は? 私? そんな人は知りませんが?」
「って、まこ……ちょっと、酷くないかな? 美鈴だよーー声を聞いて、解るでしょ?」
「冗談だ、と言うか何?こんな朝から電話してきて?」
「うん、それなんだけどね? まこ? 今日暇?」
美鈴がそう言ってきたので、俺は、とりあえずこう言った。
「まあ、暇だよ、用事とか、全くないし」
「良かった、じゃあ、今すぐ駅前に来れない?」
「駅前って、山野辺駅?」
「そそ、じゃあ、待ってるね?」
そう言って、電話が切れる。
俺は、一体何なんだ……?と、思い、とりあえず出かける準備をして、家を出たのであった。
数十分歩いて、山野辺駅に着くと、美鈴が、既にいて、大きなボストンバックを持っていた。
「まこ~、待ってたよ」
「一体呼び出して、何なの?」
「これからさ? ビックドーム行かない?」
「ビックドームって、あの大型総合施設だよね? 何で、そこに?」
「実はね?今日、そこで大掛かりなイベントがあるんだ、一人で行くのも何だしね? だから、まこを誘ったんだよ? 今日、暇なんでしょ? じゃあ、行こうよ?」
美鈴が、そう言ってきたので、俺は、どうしようか迷ったが、まあ、ぶっちゃけて言うと、この後の用事とかは全く無いし、それに、何のイベントをやってるか、気にはなったので
「分かったよ、じゃあ、一緒に行くよ」
そう言う事にした。
「じゃあ、決まりね? では、早速出発~」
そう言って、俺と美鈴は、電車に乗る。
電車で、一時間ぐらい乗って、たどり着いた場所が、ビックドームなのであった。
ビックドームを見てみると、物凄い数の人が、並んでいて、ちょっとビックリしたのであった。
「なんか、凄い人、並んでない?」
「まあ、今日は、イベント初日だからね~、人も沢山来るよ、少なくとも十万人は、いるんじゃない?」
うわ、それは、物凄く多くないか?
「じゃあ、私達も並ぼう? まこ」
「あ、ああ……」
そう言って、俺たちも列に並ぶ。
並んでみたはいいが、全く動く気配が無かった。
おまけに炎天下のせいか、汗も噴出して、ちょっときつく感じたりもしている。
「一体、いつになったら、動くんだ? この人の列は……」
「う~ん、開店が十時だから、今、九時五十分だし、あと、十分程度かな? あ、まこ、飲み物、用意してあるから、飲む?」
そう言って、ボストンバックから、スポーツドリンクを取り出したので、俺は、それを受け取って、飲む事にした。
そして、十分過ぎて、十時になり、やっと、人の列が、動き始めた。
さすがに、最後尾のほうだったので、会場に入るまで、物凄い時間がかかり、中に入れたのは、始まってから、三十分以上も過ぎていたのだった。
中に入ると、物凄い数の本と、人が沢山いて、机が沢山あった。
「もしかして、これって……」
「そう、今日は、同人誌即売会、つまり、~コミックマーケット、IN、ビックドーム~だよ?」
「やっぱり……」
俺は、やってる事は知っていたけど、来るのは、初めてだった。
まあ、普通の一般人は、こんな所には、来ないだろ……とは、思う……
こうして俺は、初めての即売会を、体験する事になったみたいである。
「うわ、凄い人……」
会場内に入ると、人が多くいて、数々の本が売られていた。
「まあ、ここは、大きいからね~、人もたくさん集まるよ」
俺の隣にいる、美鈴が、そう言う。
「こんなにたくさんいて、暑くないのかな?」
「暑いと思うよ? 熱気が凄いし、さてと~、とりあえず……ほしい本でも、ゲットしに行くかな~」
そう言って、美鈴は移動する。
俺は、残されるのも何なので、そのあとをついていく事にしたのであった。
そして、たどり着いた場所は、天空カイザーをメインとした同人誌を、売っているスペースだった。
「お、カイザー本発見~、じゃあ、まこ? 買ってくるね? まこの分もいる?」
「い、いや、自分はいいよ……ここで待ってる」
「そう? じゃあ、行ってくるね」
そう言って、美鈴は、本を買うために並んでいた。
そして、数分後、目的の本を買えたからか、笑顔で、戻ってくる。
「うん、こういうのいいね」
「そういうもんなの?」
「うん、まこもせっかく来たんだし、楽しまないとね? まこも色々と見て回る?」
俺は、どうしようかと迷ったが、確かに……何があるのか? と、気にはなったので
「うん、そうする」
「じゃあ、私、ここのスペースで待ってるから、見終わったら、ここにきてね?」
そう言って、俺にこの会場の案内図を見せる。
「うん、わかった、じゃあ行ってくるよ」
そう言って俺は、美鈴から離れて行った。
まず何所に行こうかと悩んで、とりあえず見て回る事にした。
移動していると、知っている人物を見かけたので、声をかけてみた。
「あれ……茜さんと美咲さん?」
そこにいたのは、売り子をしている汐崎茜さんと汐崎美咲であった。
「あ、まこさん、こんな所で会えるなんて、偶然ですね」
「まこ……こういった場所に興味があるんですか?」
「い、いや、美鈴に誘われて、ここに来ただけなんだけど……」
「また、栗谷さんですか……本当に仲がいいですね、羨ましいです、私も、まこといたいのに……」
「あら? 美咲? もしかして……」
「ええ、茜お姉ちゃん、前に言ったと思うけど、そうです」
「ふ~ん、そうなんだ?」
……美咲さん? 貴方は茜さんに、何を言ったんだ……? 物凄い気になるのだが……
いや、聞かなかった方がいいかも知れないよな……
「所で、ここにいるという事は、本を売ってるんですか?」
「ええ、同人誌書いたのよ? あ、そうだわ、まこさん、プレゼントしますよ、せっかく会えた記念にね?」
そう言って、俺に一冊の本を渡す。
「え、いいんですか?」
「ええ、構わないわよ?ね?美咲」
「あ、はい、まこに読んでくれると嬉しいです、私も少し手伝いましたから……」
「そ、そう……じゃあ、ありがたく頂くね……? じゃあ、自分はこれで……美鈴、待たせてるので」
「そうですか……じゃあ、さよならです……」
「まこさん、また、お店に行くから、その時に会いましょうね?」
「あ、はい」
そう言って俺は、移動したのであった。
とりあえず、美鈴の所に戻る事に決めて、戻ると
「お帰り~まこ? どうだった?」
「どうだったって、まあ、知り合いに会ったよ」
「え? 誰?」
「同じクラスの汐崎美咲」
「え、嘘? こんな場所に興味無いと思ったんだけどね?」
「なんか、従姉の茜さんと一緒にいたから、それの手伝いかと」
「ふ~ん、そうなんだ? あ、じゃあ、そろそろ行こうか?」
「行くって、何所に?」
「ふっふっふ、この日のために、用意していた物があるんだよーーとりあえずついてきて?」
「??分かった」
こうして、俺は、美鈴のあとをついていく事にした。
美鈴のあとに、ついていくと、控室に入った。
そこで、美鈴は、ボストンバックを開ける。
中に入っていたのは、何かの衣裳だった。
「さあ、まこ、これに着替えて?」
は? 何でだ?
「ええ? 何で?」
「だって、まこと一緒にコスプレしたくて、持ってきたんだよ~、着てくれないの?」
そう、うるうる顔で言ってきた。
「……解ったよ……着ればいいんでしょ?」
「よかった、じゃあ、着替えよう?」
そう言って、服を脱ぎだす。
俺も、脱いで、用意された衣裳に着替える。
うん、着てみて思った事。なんか恥ずかしいし、それに、何でサイズが合ってるんだ? と、思った。
「ねえ? 何で、サイズ合ってるの……?」
「まこのサイズって、身長以外、私とほとんど同じなんだよ?知らなかった?」
「そうなのか?」
「うん、だから、お揃いだね~」
「……ところで、この衣裳は?」
「これはね? 魔女っ子メイルというアニメのキャラのコスプレだよ? ちなみに私が、魔女メイルのコスで、まこが魔女レイラのコスだよ~」
「そう……」
何のアニメかは、全く知らなかったが、深く追及するのは、やめといた。
着替えたので、コスプレスペースに出ていく。
そこで、いっぱい写真を撮られた。
しかも、ポーズとってくださいとか、メルアド教えて? とか、そう言ってくる奴もいたりして、かなり困ってしまった。一時間ぐらい過ぎて、さすがに疲れたので、私服に着替えて、帰る事にした。
帰る途中。
「ねえ? まこ? 明日も、今日みたいな、イベントやってるけど、行く?」
「いや、行かない!もう、疲れたし、断る」
「ええ~? なんでぇ~?」
そんな会話をしながら、家へと、帰って行ったのであった。