~第十五話~
夏休みの最中、俺は、ある場所に来ていた。
その場所というのは……
「海だ~!」
そう、俺は、海に来ているのである。
何故、海に来ているのかというと、俺の働いている。
バイト先の店長、東雲紫さんが「海で、営業する事になったから、来ない?」と
言ってきたので、それをOkして、俺は、海に来ているのである。
ちなみに、あと誰がいるのかと言うと、店長の紫酸素の、弟の玲、同じ職場で働いている。
桐谷佐奈さん、あと親友の栗谷美鈴で、来ているのであった。
海の近くの、貸店舗に入り、看板に「ラブ喫茶アイライク、~海岸店~」と、書き込んであった。
そこで、俺達は、用意された衣装に着替える。
佐奈さんは、青色をイメージにしたメイド服。玲は、緑色をイメージにしたメイド服
美鈴は、赤色をイメージにしたメイド服を着ていた。
俺もメイド服を着る事になるのか?とか思っていて、用意された服をみると、俺のだけ、Tシャツだった、柄に「アイライク」と、描かれている。
うん、メイド服を着ないだけ、マシかな……と、思っていた。
着替えが終わって、外に出てみると、店長の紫さんが、こう言った。
「皆さん、よく似合ってますよ」
「あの、自分のだけ、違うんですけど……」
「あら、まこさんも、メイド服の方がよかった?」
「い、いえ、これでいいです」
「なら、OKね? さあ、着替えた事だし、お客様を入れて、開店しましょうか、皆さん、今日も、頑張りましょうね」
「了解」
「分かりました」
そう言って、お店を開店させた。
最初は、全くと言っていいほど、人が入ってなかったが、一人、また一人と入ってきて、すぐに大繁盛した。
主に男性の客が多く、俺以外、メイド服っぽい衣装を着ているので、お客から「萌え~」とか、聞こえてきた。
うん……大丈夫か? こいつら……と、思ってしまった。
そして、時間が過ぎて、休憩時間になり、控室で休んでいると
「まこ~」
美鈴も、休みになったのか、俺に話しかけてきた。
「何?」
「見たよ!」
「何が?」
「二時間ドラマ、天空カイザー、カイザーVSデルウイングだよ、まさか、まこが出演してるなんて、どうして、言ってくれなかったの!?」
「いや……言う必要あるかな?ってね……」
「まこ、物凄いかっこ良かったよ……」
そう、赤らめて言ってきた、うん……なんか、照れるな……
「ところで、また、なんかドラマとか出るの?」
「いや、それは無いんじゃないかな……たまたまやってって、言われて、やっただけだし」
「そうなんだ……まあ、もし他のに出てたら、私、絶対に見るからね?」
何で、見る必要が? と、思っていた。
そう、言っていると、休憩時間が終わったので、仕事に戻った。
店内は、いつの間にか男性客から、女性客の方が、多くいた。
そして、俺の姿を見つけて、こう叫びだす
「あ、あの!」
「は、はい?」
「まことさんですよね? 天空カイザーのレキやってた」
「は……はあ、まあ、一応……」
そう言うと、周りからキャー!とか、悲鳴じみた歓声が聞こえてきた。
「私、ドラマを見て、ファンになりました!握手して下さい!」
「ま、まあ、そのぐらいなら……」
そう言って、俺はお客に握手する。
他の客も「写真撮っていいですか?」とか「私の事好きって言って下さい!」とか、言っていた。
うん……なんか、怖いぞ……そんな感じな事があって、時間が過ぎて、閉店時間になり、店長の紫さんが、こう言った。
「皆さん、お疲れ様、もうこんな時間だけど、これから戻るのもなんだし、泊って行きましょう?皆さんは、それでよろしいですか?」
「私は、OKです」
「私もOkだよー、わ~い、御泊りーー」
「自分は……ま、いいかな、あとで家族に連絡すればいいし」
「じゃあ、決まりですね」
こうして、俺達は、海の貸店舗に、泊る事になったのであった。
泊まる事になり、そこで一泊過ごして、次の日。
俺は、朝早くに目が覚めたので、海に行って見る事にした。
朝、早いせいか、人が全くいなく、海から来る風が、結構気持ちよくて、う~んと伸びをしていると
「まこさん、朝、早いですね」
そう話しかけて来る者がいた。
俺に話しかけてきたのは、俺の働いている店の店長、東雲紫さんだった。
「あ、店長」
「紫さんって、呼んでくれないかしら?」
「あ、分かりました、紫さんも、朝、早いですね?」
「ええ、何故か知らないけど、ぐっすり眠れたからね、あ、ちなみに玲は、まだ寝ているわ」
玲と言うのは、紫さんの弟である。
「そうですか」
「それにしても……やっぱり、まこさんもメイド服着て、接客する?」
そう言ってきたので、俺はと言うと
「いえ、結構です、似合いませんし」
「そう? 貴方に合わせて、黒色のメイド服、用意したんだけど、まあ、貴方がそう言うなら、強制はしないわよ?」
「そうしてくれると、助かります」
「そう? そうだわ、今日は、午前中だけ営業して、午後は皆で遊びましょうか?」
「それ、いいですね、自分は賛成です」
「じゃあ、決まりね、そろそろ戻りましょう」
「あ、はい」
そう言って、俺と紫さんは、貸し店舗へと戻って行った。
そして時間が過ぎて、営業時間になり、俺達は、用意された制服に着替えて、ホールに出る。
ホールに出ると、事務服を着た紫さんが、こう言う。
「今日は、午前中だけの営業にしますね? 午後は、自由時間とします、では、皆さん、今日も、頑張りましょう~」
「りょ~かい」
「分かりました」
こうして、お店がスタートした。
季節が夏だと言うだけあって、お客も水着を着た客がやって来ていた。
俺達は、注文を聞いて、品物をお客様に、出す作業をしていた。
そして、時間が過ぎて、午後になり
お店を閉めて、自由時間になったので、服を着替える事にした。
「じゃ~ん、見て?まこ~似合う~?」
そう言ってきたのは、俺の親友の栗谷美鈴で、青色の水着を着ていて、俺に見せてきた。
「似合うんじゃない?」
「そう? ありがと、これ新しく買ったんだ、まこに見せようと思ってね~」
何故、俺に見せようと? そう思っていると
「あ、あの、私も似合いますか?」
そう言ってきたのは、バイト仲間である。
桐谷佐奈さんだった。
佐奈さんは、赤色の色っぽい水着を着ている。
「それ、ちょっと大胆かと?」
「佐奈? ナンパとかするから、そういう水着選んだの?」
「い、いえ!違います、母さんが、勝手にこの水着を荷物に紛れ込ませてたので……」
「そうなんだ」
「はい……ちょっと、恥ずかしいです……」
「でも、似合ってるよ~、私ももうちょっと胸あったら……似合いそうかな?まこも、そう思わない?」
何故、俺にふる?
「いや、俺が言うことじゃ、ないかと……」
「そう?」
「そうだよ」
「ところで、まこさんは、着替えないんですか?」
そう、佐奈さんが聞いてきたので
「いや、俺はいいよ、泳ごうと思ってないし」
「え~、まこの水着姿、見たかったのに~」
「美鈴、そう言うな」
「はあ、そうですが……ちょっと残念です」
そう話していると、紫さんがやってきた。
「皆、着替えた? じゃあ、遊びに行きましょう」
「わ~い、泳ぐぞ~!」
「わかりました」
こうして、俺達は海へと、遊びに行ったのであった。
何故か玲の姿が、見えなかったが気にしないで、おくことにした。
まあ、男だし、女子の着替えの中には、入れないな……と、思っていたのである。
「海風が気持ちいい~」
そう言ったのは、俺の親友の栗谷美鈴だった。
夏というだけあって、皆、海水浴や日焼けをしていたりしている。
俺の姿はというと、水着ではなく、普通のTシャツを着ていた。
他の皆は、水着を着ていたりする。
「ねえ? まこは、やっぱり泳がないの?」
「うん、泳がないよ」
「何で? 気持ちよいと思うんだけどな~?」
そうか? まあ、確かに、こんな暑い日差しなので、泳ぐと気持ちいいかもしれないな?
でも俺は、泳ぐ事はしない事にした。
「自分はいいよ、美鈴は、泳いできたら?」
「うん、そうする~」
そう言って美鈴は、海へと入っていく。
そんな美鈴を見ていると、俺に話しかけて来る者がいた。
「まこ先輩、こんにちは」
そう言ったのは、紫さんの弟の玲であった。
玲も、俺と同じくTシャツを着ていたりする。
「玲は、水着着ないの?」
「僕が着れるわけ無いじゃないですか……まあ、姉さんが水着を僕に渡しましたよ?でも……あきらかに女物の水着だったんですよ……しかも「大丈夫、貴方なら似合うわ!」とか言ってくるし……」
「そ、そう」
うん、イロイロ大変なんだな……なんか、ちょっと同情してしまった。
「で、さっきから男からしつこく話しかけて来るんですよ……なんでなんだろ……」
ちなみに、今の玲の格好は、Tシャツにウイッグをつけているので、全く男に見えない。
と言うか、かなりの美少女? にみえたりしている。
なんか……分かるような気がするな……男どもの動機が不純だとは思うけど
「じゃあ、そのウイッグ取ったら?」
「姉さんが、「それ取ったら、罰ゲームよ?」と言ってきたので、取れないんですよ……」
「そうなんだ……」
うん、完全に遊ばれてる感じがするな……
そう話していると、俺達に声をかけて来る者がいた。
「お~可愛いね?俺と、一緒に遊ばないかい?」
いかにもチャラ男? みたいな、感じのヤツが俺達に話しかける。
それにしても……どっちに向かって言ってるんだ? こいつは?
「え~っと……僕に言ってるの?」
「おお、ボクっ娘か!萌えるね~!こんな奴ほっといて、行こうぜ?」
どうやら、玲に話しかけてるみたいだった、おい……俺の事を、こんな奴呼ばわりか?
玲は、それを聞いて、こう言った。
「僕、連れがいるので、お断りします」
「そんな事言うなよ? ほら、行こうぜ?」
そう言って、玲の手を取ろうとする。
玲は、それを素早くかわして、俺の後ろに隠れるように、男から離れた。
これって、普通、逆じゃないか?
「あん?お前、こいつの何なんだ? 彼氏?」
「……とりあえず、殴る!」
俺は、チャラ男に向かって、鉄拳制裁を食らわす。
あきらかに馬鹿にした態度だったので、むかついたからだった。
男は、俺の攻撃をまともに食らって、伸びてしまった。
「あ、ありがとうございます、まこ先輩」
「まこ~かっこいい!」
「なんか哀れですね、でも、まこさん、よくやりました」
いつの間にか、美鈴と紫さんがいた。
「い、いや、こいつがむかついたから」
「そうですね、こんな奴、そのままにしましょう」
「賛成~」
そう言って、伸びている男を、ほっとく事にした
そして、時間が過ぎて、山野辺市に帰る事にした
家へ帰ると、妹の亜季が、何故か怒っていた。
「お姉ちゃん!」
「な、何?」
「どうして、勝手に泊まったの!?私も連れてって欲しかったよ!?」
「ご、ごめん」
「今度は、私をおいてけぼりにしないでね?」
「分かったよ、亜季」
これが俺の、海の出来事だった。