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健康のようなもの

作者: TOMMY
掲載日:2026/07/17

サラダ味と聞けば、野菜を思い浮かべても不思議ではない。


けれど、袋を開けて広がるのは、サラダ油の旨味と塩味だった。


もちろん、嘘ではない。

サラダ油を使っているから、サラダ味。


間違ってはいない。

でも、僕は勘違いしていた。


その違和感は、小さな棘のように頭の片隅へ刺さったまま抜けなかった。


お菓子のパッケージには、「食物繊維たっぷり」「ビタミン豊富」と、健康を思わせる言葉が並ぶ。


飲み物には、「カロリーゼロ」「レモン十個分」「一日分の野菜」。


どれも嘘ではない。

だから身体にいいものなのだと信じていた。


コンビニへ寄るたびに買い込み、食べるたび、飲むたび、自分は健康へ近づいているのだと思っていた。


その気分まで含めて、僕は買っていた。


けれど、積み重なった先にあったのは、健康とはほど遠い身体だった。


少しずつ太り、少しずつ悲鳴を上げ始める身体を見て、ようやくあの違和感が姿を現した。


僕はそっと目を閉じた。


どのパッケージにも、健康を思わせる言葉が並んでいる。


僕はさっと耳を塞いだ。


どのお店も、「おいしく健康」と笑いかけてくる。


僕はぎゅっと鼻をつまんだ。


それでも香ばしい匂いは鼻の奥まで入り込み、脳は静かに「食べろ」と囁き続ける。


そのとき、やっと分かった。

この世界は、嘘を売っているわけじゃない。


勘違いを売っているのだ。


誰も騙していない。

だから、誰も責任を負わない。


あの日から、僕は言葉をそのまま信じなくなった。


書かれていることより、書かれていないことを見るようになった。


「身体にいい」と書いてあれば、「どれくらい身体にいいのだろう」と考える。


「ゼロ」と書いてあれば、「何がゼロなのだろう」と考える。


言葉は、真実を伝えるためだけにあるものではなかった。


人を動かすためにも使われる。


そのことを知ってしまってから、僕は世界を少しだけ理解した。


そして、その理解を、少しも好きになれなかった。

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