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一枚の絵

作者: だるお
掲載日:2026/04/14

怪盗には悩みがあった。


数々の宝を盗み出してきたが、その置き場所がもうなかったのだ。

屋敷は宝で溢れ返り、足の踏み場もない。


手放そうにも、どれも表には出せない代物ばかり。

売ることもできない。


そこで怪盗は、ある方法を思いついた。




大富豪は絶望していた。


成功の果てに、あらゆる贅沢を手に入れた。

だが、満たされることはなかった。


ある日、車の中で子供たちの歌声を耳にした。


「停めてくれ」


そこは孤児院だった。


彼は中に入り、子供たちと過ごした。

帰り際、一人の少女が一枚の絵を渡してきた。


何が描かれているのか分からない。

チラシの裏に描かれた、幼い絵だった。


だが、それを見たとき、胸の奥が静かに満たされた。


屋敷に戻ると、彼は高価な絵をすべて外し、

その一枚だけを飾った。


初めて、満ち足りた気がした。



数日後、その絵は消えた。


盗まれたのだ。


大富豪は泣いた。

どんな宝を失った時よりも、深く傷ついた。


だが警察は相手にしなかった。

「価値のない絵でしょう」


探偵も首を振った。

手がかりは何もない。


大富豪は、再び空っぽになった。




怪盗は盗んだ宝を返し始めていた。


溢れた宝を処分するために。


なぜかその方がしっくりきた。


最後に残ったのは、一枚の絵だった。


豪邸の広間に、ぽつんと飾られていたもの。

名画だと思って盗んだが、落書きだったようだ。


だが奇妙なことに、見ていると心が落ち着く。


怪盗は、しばらくその絵を眺めた。


そして、元の場所へ静かに戻した。






大富豪は、壁に戻ってきた絵を見つめていた。


彼は何も言わず、その前に立ち尽くした。

そして、ゆっくりと息をした。


その夜、怪盗の屋敷からは、

最後の宝が消えていた。



壁にあの絵の写真を貼りながら



怪盗は、少しだけ心が軽くなった気がした。

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― 新着の感想 ―
その少女の絵はどんな高価な絵画より、心を満たしてくれる秘宝だったなんて素敵な話ですね❀
大富豪がふたたび絵を見つけたときの反応がいいですね。
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