一途に想ってくれるのは嬉しいですが、そろそろ嫌いにならない?
「だ~か~ら、嫌なんだよ!もうこれで三回目じゃないか!」
警邏隊の隊員、二十五歳になるハナは、同僚の隊員にきっぱり断られた。
「フリでいいから、本当。フリで。この通り、バイト料は弾むから」
「お金の問題じゃないだよ。彼女に見られたらどうするんだよ。っていう、絶対噂になる。絶対に嫌だからな!」
「私から彼女に説明するから、お願い!」
「嫌だ。それ以上しつこいとセザール隊長に言いつけるぞ!」
「それはやめて」
「じゃあ、諦めるんだな!」
同僚の隊員はきっぱりそう言うと、彼女の前から消えた。
「ああ、どうしたらいいんだ?」
「あ、私が代役しましょうか?男装でもして?」
「いや、それはいい。っていうか、もう、これは女好きって思われた方が……」
「先輩!私はそれ嫌です。その案には巻き込まないでください。本当に。もう一生恋人ができなくなるから」
「いや、男装はいいんでしょ?」
「冗談に決まってるでしょう?」
「だったら、提案しないでよ!」
ハナは逆切れして後輩を怒鳴りつける。
すると、噂のセザール隊長が現れた。
「ハナ。お前、またしつこく偽装デートしているのか?隊員を巻き込むなって何度も言ってるだろ?」
「セザール隊長。今度が最後だから、本当に。あ、そうだ。あなたがつきあってよ。年齢も釣り合うよね?」
「あほか?前回お前、どんな目にあったか覚えてるか?俺もとばっちり喰って最悪だったんだそ」
「……そうだった。思い出した」
ハナはぶり切れしたセザールの恋人に、彼女の権力を使って王宮の警護に回され、毎日礼儀やなんやで胃がキリキリしたことを思い出した。一週間ほどだったが、げっそり体重を減らしたくらいだった。
「そんなに嫌だったら、嫌いって一言いえばいいだろう?」
「言えるわけないでしょ?あんな可愛い子を傷つけたくない」
「気持ち悪い。可愛いって、だったら、素直にデートに付き合えばいいだろうが!」
「だって、私は二十五だよ。相手は十六歳の男の子。犯罪でしょ?」
「十六歳なら大丈夫だろ?何迷ってるんだ。長年、告白されまくっていたくせに」
「いや、そうだけど」
「なんで迷うのかさっぱりわからん。とりあえず腹を括ってデートするんだな」
「……いや、九歳年下だよ。だめだよ」
「まあ、歳の差は大きいな。だが、お前の見た目はまだ二十そこそこに見えるから、二人並んでもそこまでおかしな図にはならなんぞ。なんたって、相手は十六歳だ。やっと十六だな。待っていたんだろ?」
「気持ち悪いこと言わないでよ。待つわけないでしょ!」
「どうだか。とりあえず本当に隊員を巻き込むな」
「わかった」
セザールはそう言い、部下を連れていなくなった。
残れされたハナは途方に暮れていた。
今、断ろうとしているデートの相手は、ガルトという十六歳の男の子だ。
彼が八歳の時、攫われそうになっている彼を助け、一目ぼれされた。
それ以来、彼から結婚してくれと何度も告白を受けている。
彼が十二歳になるまでは、戯言だと聞き流していた。
しかしある時、ふとハナは彼がカッコいいと思って、きゅんとしてしまったのだ。
そこからハナの悩みは始まり、邪険になってしまった。
居留守をつかったり、デートがあるから忙しいといったり。
ハナはガルトが自分のことに飽きる、または嫌いになると思っていた。
ぜひ、そうしてほしいと思ったのだ。
そうじゃないと、自分が犯罪者になった気分がして気持ち悪かった。
しかし、十六歳になるまで彼のアプローチは変わらなかった。
彼のことは好きだ。
だが、歳の差は大きい。
そこで、彼女は考えた。
自分が若返ったらどうかと。
同じ歳ならば、いいのではないかと。
今まで貯めた給金を持って、彼女は休みをとって若返りの薬を求めて旅に出かけた。
しかし、そんな薬はなく、諦めて帰ろうとしたとき、彼女は事故に巻き込まれた。
記憶を失った彼女は、助けてくれた人の家でしばらく厄介になることになった。
怪我は治ったが、記憶がない彼女は、村の人の好意でその村で暮らすことになった。
男手が少ない村で、力持ちの彼女は重宝した。
そうして一か月が過ぎた時、村に男性が訪ねてきた。
それはガルトで彼女を見ると涙を流した。
ハナはもちろんガルトを覚えておらず、困惑した。
ガルトは彼女が年齢を気にしていることを知っているので、年齢のことを話すことはなかった。
ただ婚約している仲だと伝え、帰る場所もないので、この村で一緒に暮らしていいかと聞いた。
ハナは戸惑っていたが、村の人たちは歓迎し、婚約していたのだからと空き家になっていた一軒家を彼女らに貸した。
そうして、二人は一緒に暮らし始め、結婚式まで上げてしまった。
四年後、子供が生まれた。
ガルトに似た男の子だった。
ある時、うっかり転んでしまって、ハナは記憶を思い出してしまった。
彼女は悩みまくった。
あれほどガルトに手を出さないと決めていて、若返る薬まで探していたくらいなのに、彼女はガルトと結婚し、子どもまでもうけていた。
「…ハナ。思い出してしまったのですか?」
「……」
ガルトはハナの変化に気が付きやすい。
「私のこと、嫌いでしたか?」
「そうじゃない。ただ。私は歳がかなり上でまずいでしょ?」
「もう私は二十歳ですよ。あなたは二十九歳。同じ二十代でしょ?」
「そうだけど」
「私のことが嫌いなんですか?」
「そんなことない。むしろ好きだ。本当はすっごく好きだったんだ。気持ち悪いよね」
「全然、嬉しいです!だったら大家族作りましょうね!」
「は?」
こうして相思相愛であることを確認した二人は、街に帰らず、村で暮らし続け、村一番の大家族になった。
(おしまい)




