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結婚初日、夫から「義理の姉を愛している」と打ち明けられました  作者: 風見ゆうみ


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9   それなら良かったわ!

「お義父様に、もう少し質問してもよろしいでしょうか」

「聞きたいことがあるなら、確認せずに聞けばいい。身分のことを気にしているんだろうが、お前は娘だからな」

「ありがとうございます。では、遠慮なくお聞きします。お義父様は側近のことを信用しておられたのですか?」

「信用していたつもりだが、何かがおかしいとは思っていた」


 ラゲクはため息を吐いて、彼らを雇った経緯をミアーナに話してくれた。単純なもので、全員が前妻の親戚や知り合いであり、前妻の紹介で雇ったとのことだった。皆、悪い人間ではないが、ラゲクに忠誠を誓っているわけではないらしい。


(まあ、雇用主と労働者の関係性と思えば、忠誠心は必要ないかもしれないわね)


 仕事を誠実にこなすことは、人として当たり前のことだとミアーナは考えている。現在のラゲク側近たちは、雇い主に伝えなければいけない事柄を、意図的に伝えていないという不誠実な行動をしている。この点はミアーナにとって許せないことだった。


「帰ったら徹底的に追及するつもりだ。新たに人を探さないと駄目だろうな」


 ラゲクはこめかみを押さえて言ったあと、ミアーナに願い事をする。


「君がここに来たことは、私たちが帰るまで黙っていてもらえないだろうか」

「かまいませんが、何か問題でもあるのですか?」

「側近たちに私に打ち明けるチャンスをやろうと思っている。もちろん、ロコッドとルイティーの件は別だ。彼らにチャンスなどない」

「お義父様が帰るとわかった時点で、自分のしたことを自ら話して反省するようなら許して差し上げるということでしょうか?」

「甘いと思うか?」


 ラゲクに問いかけられたミアーナは、表情を和らげて答える。


「いいえ。更生するチャンスを与えても良い人はいるでしょう。一度間違えたら人生が終わりでは可哀想です」


 ミアーナにとっては、ロコッドたちは止めたにも関わらず不倫を続けているので論外だ。


「ロコッドたちの件だが、戻るまでに証拠を押さえたい。協力してもらえるかな」


 今度はマーベリックに尋ねられたミアーナはにっこりと微笑んだ。慰謝料についての話は、マーベリックたちが帰ってから一緒に話すことに決まった。二時間ほど話をして、ミアーナはマーベリックたちと別れ、今日は近くの宿屋に泊まった。

 ラゲクとマーベリックはあと三十日程で家に帰ることができるらしい。ヨーカやロコッド、ルイティーたちには五日前に、その他の人たちは十日前に伝えることになっている。

 本当ならば二人に会ったことを日記に書こうとしていたミアーナだったが、内緒にしてくれと言われたので、この日から、絵日記に変更することにした。


「上手く描けたわ!」


 ミアーナは一時間かけて今日の話し合いの場面の絵を描き上げた。


「どんな絵か見せていただいても良いですか?」

「下手くそだけど許してね」


 あまり似ていると、相手が誰だかわかってしまうのではと心配したメイドたちが頼むと、ミアーナは恥ずかしそうにしながら、彼女たちに日記帳を手渡した。

 タイトルは「旅先で出会った素敵な方々」だったが、そこに描かれてあるものは、メイドたちにとっては素敵な方々ではなかった。


「えっと、これはなんでしょう?」


 二つの液体のようなものを指差してメイドが尋ねると、ミアーナは胸を張って答える。


「お義父様とお義兄様よ。それから、これが私」


 ミアーナが指差したのは、液体状の丸い何かに目と口がある謎の物体が二つと、一本の棒の上部に葉っぱのようなものが生えている何かだった。


「……最近お会いできていないから、記憶が薄れているだけかもしれないけれど、当主様とマーベリック様はアメーバだったかしら」

「あ、あめーば?」


 アメーバとは形を自由に変えること能力を持つ真核生物のことである。

 ミアーナ自身は、そんなものを描いた気が全くなかったので、素っ頓狂な声を上げて聞き返した。


「それを言ったら、この絵の中のミアーナ様はただの枝よ」

「アメーバと枝が向かい合っている様子かしら」

「し、失礼ね! わかりにくいように書いたのよ!」


 メイドの話を聞いたミアーナは、顔を真っ赤にして言った。すると、メイドたちが優しい笑みを浮かべる。


「ミアーナ様、とても素敵な絵だと思います。これなら、ロコッド様たちもわかりません」

「とても素晴らしいです!」

「そ、そう? それなら良かったわ!」


 ミアーナは無邪気に喜び、メイドたちの生温かい視線には気がつかないふりをした。



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