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結婚初日、夫から「義理の姉を愛している」と打ち明けられました  作者: 風見ゆうみ


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7   誉め言葉でしかありませんわね

 旅行の間、ミアーナはロコッドに読ませるための日記をつけた。どんな所に行って、どんなものを食べたかなど、当たり障りのないことばかりだ。内容ががらりと変わることになるのは、四日目の日記からだった。


『お義父様たちがいる辺境伯領に近い土地に来たわ。せっかくなので、旅程を変更してご挨拶に行こうかしら』


 ロコッドがこの日記を読むかどうかはわからない。読んだ時はどんな顔をするのだろうか。

 そんなことを思いながら、ミアーナは義理の父たちがいる辺境伯領に入った。

 ミアーナが作戦司令部のある場所に向かうと、検問所があった。

 この頃にはミアーナが訪ねることは、メイドが送ってくれた手紙で知らされていたため、すんなりと敷地内に入ることができた。

 戦況はかなり落ち着き、和平交渉も進んでいることもあって、応接に案内してくれた兵士の表情も穏やかだった。


(ご迷惑であることは確かなのでしょうけれど、公爵家内部で起こっていることをお知らせするのも大事だと思うのよね。でも、思った以上に穏やかな様子なのはありがたいわ)


 案内された部屋で、ミアーナが大人しく待っていると、ノックの後に、ミュークド公爵とミアーナにとって義理の兄に当たる、マーベリックが入ってきた。 

 義父のラゲクは漆黒の髪に青色の瞳を持つ大柄な体格の美丈夫で、公爵というよりかは傭兵に見える。義兄のマーベリックは髪と瞳の色は父と同じだが、顔立ちはまったく似ておらず、長身痩躯の美青年だ。


(マーベリック様はお母様似なのかしら。男性にしては綺麗すぎるでしょう)


 ミアーナは一瞬、そんなことを考えたあと、立ち上がってカーテシーをする。


「ご挨拶が遅れまして大変申し訳ございません。この度、ロコッド様の元に嫁がせていただきました、ミアーナと申します」

「こちらこそ、挨拶もできずに済まなかったな。私がロコッドの父のラゲクだ」

「はじめまして、マーベリックだ。足を運んでくれてありがとう」

「お会いできて光栄にございます。お忙しい中、お時間をいただき誠にありがとうございます」

「気にするな。とりあえず座ってくれ」


 ラゲクに促され、ミアーナはソファに腰を下ろすと、マーベリックが尋ねる。


「ロコッドと一緒に来なかったんだな」

「はい。ロコッド様はとてもお優しい方ですので、ルイティー様を残して新婚旅行に出かけるわけにはいかなかったようです。そのことについて、ルイティー様もお義母様も喜んでおられましたわ」


 ミアーナの話にラゲクとマーベリックは難しい表情で顔を見合わせた。


(驚いている様子ではないから、もしかして薄々気がついていたのかしら)


 何も言わずにいると、マーベリックが質問を続ける。


「ということは、君1人で旅行に来たのか?」

「ええ、そうです。ロコッド様は新婚旅行というタイトルの旅程表まで作ってくださったのです! 変更は自由にしても良いとおっしゃってくださったので、やはり、お二人にご挨拶したいと思い、本日は伺わせていただきました」


 ミアーナは満面の笑みを浮かべていたが、ラゲクたちは状況を察したらしく「「本当にすまない」」と言って頭を下げた。


「あの、私は何も言っておりませんが?」

「口止めされたのか?」


 義父からの問いかけに、ミアーナは一瞬だけ真顔に戻り、にこりと微笑んで続ける。


「私は今、ロコッド様とルイティー様についての話は、はいもいいえも言えない病気にかかっておりまして、はいの場合は笑顔に、いいえの場合は真顔になります」

「クソがつくくらい真面目なんだな」


 義父が苦笑すると、ミアーナは言葉遣いの悪さに気を悪くした様子もなく答える。


「融通が利かないと言われる私にしてみましたら、クソがついていても真面目だなんて褒め言葉でしかありませんわね」


 彼女の返答はラゲクとマーベリックには、良い印象を与えたらしい。


「父は公爵なのに言葉遣いが悪くて申し訳ない。嫌な言い方だが、君の言う通り真面目だと褒めている」

「まあ、そうでしたか。それはありがたいお言葉ですわ」


 ミアーナが手を合わせて満足そうに微笑むと、マーベリックは苦笑する。


「君は噂通りのようだな」

「私のことを調べてくださったのですか?」

「次男とはいえ、公爵家の嫁に来てもらうんだ。問題のある女性に嫁いでもらうわけにはいかない。悪いが調べさせてもらった」

「かまいませんわ。マーベリック様がそう思うことは当然のことです。逆に調べていないほうが心配になります」


 笑みを絶やさないミアーナに、普通の令嬢とは違うものを感じながら、マーベリックは話しかける。


「君にいくつか質問したいことがある」

「どんなことでしょうか。ああ、乙女の秘密については答えられませんので、それ以外でお願いできますでしょうか」

「安心してくれ。知りたいのは、現在のミュークド公爵家内部のことだ」


(空けている家のことは任せっきりかと思っていたけれど、そうでもないみたいね)


 ミアーナは頷き、マーベリックに尋ねる。


「答えられるものは口で、そうでないものは表情でお伝えすることになりますが、よろしいでしょうか」

「かまわない。まずは、答えにくいと思われるロコッドとルイティーについての質問をさせてもらう。あの二人は義姉と義弟という関係を保てているだろうか」


(保てていないわね)


 マーベリックの質問に、ミアーナは笑顔を消し、スンとした顔になった。

 ミアーナの表情があまりにもわかりやすくて、マーベリックは吹き出しそうになる。しかし、質問の内容が笑い事ではないので何とか堪えたのだった。


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