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結婚初日、夫から「義理の姉を愛している」と打ち明けられました  作者: 風見ゆうみ


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5   なんて好都合なの!

 契約書を渡し終え、部屋に戻ったミアーナは冷静になって考えた。


(昼間から二人で仲良くしているということは、仕事はどうしているのかしら。当主や嫡男が家にいないのだから、次男が代わりに仕事をしているのが一般的じゃないのかしら)


 気になったミアーナが執事に確認してみると、仕事は公爵の側近がしていて、ロコッドはたまに様子を見に来るくらいだということだった。


「どうしてそんなことが許されているのかしら。それに、その事実を公爵閣下はご存知なの?」

「……連絡は取れるのですが、使用人からの連絡は奥様に許可をいただかないと駄目なのです」

「ヨーカ様が許してくれないということね。でも、仕事のことで連絡が必要になる時もあるでしょう。側近に嘘を吐かせているの?」

「実は……」


 二人が話しているのはミアーナの部屋なので、周りに誰もいないことはわかっていたが、執事は小声で答える。


「奥様が旦那様の側近全てを買収しておられるのです」

「そういうことだったのね」


(公爵閣下だって家の様子が気になるから確認を入れているはずだと思ったけれど、頼りにしている側近がこれじゃあ駄目ね。この話は公にして、新たに選び直してもらわなくちゃ)


 そう考えていた時、部屋の扉がノックされた。相手はロコッドを見張っているメイドで、ロコッドたちがミアーナの部屋に向かってきていることを知らせてくれた。出迎えるためにミアーナが執事と共に部屋を出たところで、ロコッドが話しかけてくる。


「署名をしたよ。一応、確認しておいてくれ」

「まあ、ありがとうございます!」


 ミアーナがほくほくした顔で書類を受け取ると、ロコッドは眉尻を下げた。


「ミアーナ、カムフラージュのために新婚旅行の手配をしているんだけど、僕は仕事で忙しくて行けなくなったことにして一人で行ってくれるかな」


(なんて好都合なの!)


 ミアーナは心の中で拍手喝采して、笑顔で答える。


「もちろんですわ! ありがとうございます! 夫婦仲をアピールしますし、どこへ行ったか日記をつけるようにいたしますので、行先は私が決めてもよろしいでしょうか?」

「あ、ああ。でも、宿の手配はしているから、キャンセルするなら早めに頼むよ」

「承知いたしました!」


 笑顔のミアーナの後ろについていたメイドは『普段は日記をつけないと仰っていたのに、旅行の時だけどうして日記をつけるのかしら』と不思議に思っていたが、この意味がわかるのは、ミアーナがある場所へ向かうと言った時だった。


******


 旅行の出発日は5日後だった。それまでの間にミアーナはロコッドからもらった旅程表を確認し、ある目的地に行くことが不自然にならないように予定を変更していった。ロコッドはミアーナがどこへ行こうが気にならない様子で「旅程表を少し変更しましたが、確認されますか?」と尋ねても「必要ない」で終わっていた。


 出発の三日前の新聞には、戦況が落ち着いてきたと書かれている記事を見つけた。それを読んだミアーナは、仕事中の側近たちの所に行き、さりげなく公爵たちの様子を探ってみた。


「新聞には戦況が落ち着いてきたとあったんだけど、当主様たちが戻られる予定はないのかしら」

「戻られる予定については、わたくし共のほうには何も連絡は入っていませんが、和平交渉に入る段階であるという連絡はありました」

「今までのように一触即発な展開というわけではないのね」

「そうです。和平交渉のテーブルについたとしても簡単に決着するものではないでしょうから、かなりの日数がかかるのではないでしょうか」


(新聞の記事通り、戦況が落ち着いてきたのは間違いなさそうね)


「教えてくれてありがとう」


 ミアーナは満足気に微笑み、話題を変える。


「ところで公爵閣下やマーベリック様はどのようなお方なの?」

「お二人共に普段は温和な方たちですが、悪事にはとても厳しい方たちです。ロコッド様たちのやっていることを知ったら、決して許すことはないでしょう」

「そうなのね。家族なら二人の性格はわかっているはずなのに、あんな馬鹿なことをしているの?」


 ミアーナが意味深な話を投げかけると、側近たちは苦笑して答える。


「僕たちは命令されたことを一生懸命やっているだけです」

「あら? 別に私はあなたたちの話をしたんじゃないのよ。ロコッド様とルイティー様のことを言ったつもりだったんだけど、あなたたち、何か後ろめたいことでもあるの?」

「そ、それは失礼しました。忘れてください」


 焦る側近の様子を見たミアーナは、その反応に満足し、仕事の邪魔をしたことを詫びて部屋を出た。


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