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結婚初日、夫から「義理の姉を愛している」と打ち明けられました  作者: 風見ゆうみ


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3   まっぴらごめんよ

 話を終えたミアーナは、3人をその場に残し、メイドに連れられて、ようやく自室に入ることができた。

 2階の奥にあるミアーナの部屋は、公爵邸の一室とあって一人用の部屋にしては驚くほど広く、ベッドもキングサイズだ。

 本棚や書き物机、ドレッサーにウォーキングクローゼット。暖炉の近くには三人掛けのソファとローテーブル。窓際には安楽椅子が置かれており、その向こうにはバルコニーが見える。窓からは美しい庭園を眺めることができ、ガーデニングが好きなミアーナには大満足の部屋だった。


「素敵なお部屋を用意してくれてありがとう」

「気に入っていただけたのであれば光栄です。家具など必要なものがございましたら、何なりとお申し付けください」

「必要なものは持ってきているつもりだけど、補充が必要になったら少し早めにお願いするわね」


(今は物よりも情報がほしいわ。やはり、屋敷内部の色恋沙汰ならメイドたちのほうが詳しいでしょう。二人の関係にみんなが気づいているから、私との結婚を決めたのでしょうからね)


 ミアーナは目の前に立っている、中年のメイド長に笑顔で話しかける。


「いくつか聞きたいことがあるの。今、手すきなメイドをできるだけ多く、この部屋に呼んでもらえないかしら」

「承知いたしました」


 メイド長は頷くと、一礼して部屋を出て行った。そして、十分もかからないうちにミアーナが予想していたよりも多くのメイドを引き連れて戻って来た。ミアーナはメイド長に礼を言ったあと、当主が出征してからの邸内の状況や、自分たちが感じていることを正直に話してほしいと頼んだのだった。


 ******


 その日の夜、自分の部屋に食事を運んでもらったミアーナは、食事をしながら、メイドたちから聞いた話を頭の中でまとめていた。


 屋敷に入った際、使用人たちが二つのグループに分かれていたのは、二人の仲を見守る派とそうでない派だった。笑顔で近づいてきたほうが見守る派だが、二人の関係を応援しているわけではなく、どうせいつか終わりがくる火遊びのようなものだと割り切っているような形だった。


 そして、もう一つは二人の行動がどうしても許せない派だ。ミアーナが優しいという噂を聞いた許せない派の使用人たちは、彼女が二人の浮気を許すのではないかと恐れ、あんな態度を取ってしまっていたのだと詫びた。


『そういうことだったのね。その件についてはやってはいけないことだと思うけど、今回は許すわ。それから、二人の浮気の件だけど、私は協力する気はないの。どちらかというと、浮気したことを死ぬほど後悔させようと思っているのよ』


 メイドたちの前でミアーナが『ふふふ』と笑ってみせると、皆、安堵の表情を浮かべていた。その時のことを思い出したミアーナは、使用人たちにとってロコッドたちの問題は仕事に支障をきたしているのではないかと感じた。


(せめて、公爵家で働いている間は、自分の仕事にだけ集中できるような環境を整えなくちゃ駄目ね)


 ミアーナは公爵夫人でも公爵家の長男の嫁でもないが、弱い立場である使用人たちを放っておくことができなかった。

 当主たちが帰って来るまでは、使用人に優先的に命令できる権限を自分に持たせてほしいと考えた。そして、犯罪や人道を外れた行為でなければ、ミアーナのやることに決して口を出さないし、責任を求めないと約束させたかった。


(私は優しくなんかない。ただ、少しでも傷つかなくていい人が傷つかないようにしたいだけ。浮気をやめられないから悩んでいるから助けてくれというならまだしも、利用されるなんてまっぴらごめんよ。こんな夫はいらないわ! 自分たちは悲劇の主人公だと思っているみたいだけど、そうではないことを教えて差し上げましょう)


 ミアーナはそう決心すると、すっかり冷めてしまったスープを飲み干し、出された食事を全て平らげた。


「少し多めに用意しておいたのですが、完食されたのですね」


 食器を下げてもらおうと呼んだメイドは、食べ残しのない皿を見て目を輝かせた。


「ええ。これからの毎日、私にとっては戦のようなものだもの。力をつけないとね。それにとても美味しかったわ」

「ロコッド様たちは小食なのですが、料理が少ないとお怒りになりますし、美味しいとは言ってくださいませんので、ミアーナ様からの言葉を聞いたら、とても喜ぶと思います」

「お義父様たちが邸にいた時もそんな感じだったの?」

「いいえ。ロコッド様は当主様やマーベリック様のことを怖いと思っていらっしゃるようですから」

「そうなのね」


(普段、兄に逆らえないから兄の妻を奪おうとしたとか、そんな馬鹿な理由ではありませんように!)


 ミアーナはそう心の中で願ったあと、気を取り直してメイドに頼んだ。


「片付けたあとでいいからお願いがあるの。契約書を作りたいから、ペンとインク、それから正式な文書を作る紙をもらえないかしら」

「承知いたしました」


 メイドは元気よく返事をすると、サービングカートを押して部屋から出て行った。そして、5分も経たないうちに別のメイドが頼んだ一式を持ってきてくれた。

 必要なものが揃ったミアーナは、早速ロコッドたちに署名をしてもらうための契約書の作成を始めた。



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