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結婚初日、夫から「義理の姉を愛している」と打ち明けられました  作者: 風見ゆうみ


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13  手遅れです

 夫婦仲が悪いわけではないアピールに成功した帰りの馬車の中で、ロコッドはミアーナに文句を言い始めた。


「おい、ミアーナ! どういうことだ? 和平交渉が始まっているなんてそんな大事な話を、どうして教えてくれなかったんだ!」

「私とロコッド様が顔を合わせる機会は、ホームパーティーへ一緒に行くと言いに来られた時以外ありません。それ以外は、ルイティー様との仲を邪魔するなと言われましたので近づいていないではありませんか」

「だ、大事な話なんだから、相談をしに足を運んでくれたっていいだろう?」


(どうして私がそこまでしてあげないといけないのよ)


 ミアーナはこれ見よがしに大きなため息を吐いて尋ねる。


「念のためにお尋ねしますが、ロコッド様は文字が読めないのですか?」

「そんなわけないだろ!」

「では、新聞は読まれないのですか?」

「読んでるよ!」

「和平交渉が始まった話は、新聞の一面を飾ったことがあります。なら、私が教える必要はありますか?」

「そ、それは……」


 毎日読んでいるわけではないとは言えず、ロコッドは言葉を詰まらせた。

 ヨーカもルイティーも新聞は、政治に携わらない女性が読むものではないと思い込んでいた。ビエンテ王国の多くの女性がこの考えで、娯楽要素の強いファッション雑誌などが、貴族女性が読むものとされている。

 ラゲクの側近たちはロコッドに伝えようとしたが、ルイティーといちゃつくことに忙しく、彼らの話を聞こうともしなかった。


 ロコッドは頭を抱えて、ミアーナに尋ねる。


「ど、ど、どうしよう。いつ帰ってくるんだ?」

「私に聞かれても困ります」


 ミアーナは冷たく答えたあと、微笑んで話を続ける。


「戦争の終結まで、まだ1年近くかかると思っていらしたのかもしれませんが残念でしたわね。ちょうどいい機会ですので、ロコッド様に忠告しておきます」

「な、なんだよ」

「お義父様やお義兄様が戻られたあと、浮気がバレて窮地に陥っても、私に助けを求めてこないでくださいね」


 ミアーナの自分を見つめる目が恐ろしいくらいに冷たいことに気づき、ロコッドは恐怖で体を震わせた。


「そ、そんな冷たいことを言わないでくれよ」

「初日に言いましたが、浮気の片棒を担ぐのは嫌なんです」

「黙って何も言わないのは承認していることと同じじゃないか」


 ミアーナがラゲクたちの所に行っていると知らないロコッドは、自分たちを止めない時点で共犯だと訴えたかった。


「すでに、不倫は良くないことだとお伝えしています。大体、あなた方は私に言われて浮気をやめるような方々なのですか? そうではないですよね?」

「そ、そういうわけじゃ」

「なら、今すぐにでもやめればいかがです?」

「そんなの無理だ!」

「ロコッド様」


 ミアーナはにこりと微笑んで彼の名を呼んだが、すぐに笑みを消した。


「不倫をやめるのは嫌だ。だけどバレたくない。何とかしろなんて、自分の言っていることがおかしいとは思わないのですか?」

「うう。勝手だということくらいわかっているよ」

「不倫を続けた時点で手遅れです。追い出されてもいいように、二人で今のうちに準備をしておいたらいかがでしょうか」

「そ、そんなぁ」


 ロコッドは情けない声を上げて、その後もミアーナに助けを求めた。しかし、彼女は相手にせず、持参していた本を読み始めたのだった。


*****


 和平交渉が進んでいると知ってからのロコッドたちは、大人しくなるかと思いきや、残りの日にちを楽しむかのように、四六時中、一緒にいるようになった。

 今まではどの部屋で眠るにしても、別々のベッドで眠っていたのだが、一つのベッドで眠るようにまでなっていた。

 手を出してしまえば、マーベリックとの初夜を迎える際に、ルイティーが誰かと関係を持ったことがバレてしまう。そのため、ロコッドには辛い日々が続いた。

 そうしているうちに、使用人たちにはラゲクたちの帰還日が知らされた。ロコッドたちや側近には知らせるなという命令だったこともあり、使用人たちはこれで屋敷内が正常化すると喜んだ。当たり前のことだが、使用人たちは秘密を守り、帰還日五日前になり、やっとロコッドたちの耳に入ることになった。

 その日の夜、湯あみを終えたミアーナが自室に向かっていた時だった。前方の廊下にロコッドとルイティー、そして執事の姿が見えた。


「五日前なんて連絡が遅すぎる!」

「そうよ! 普通はもっと早くに教えてくれるものじゃないの?」

「わたくしに言われましても……」


(ぎりぎりに知らされたことに文句を言っているのね)


「当日まで知らされないよりも良心的ではありませんか。大体、執事にそのことを責めるのはおかしいでしょう。お義父様たちが帰ってきたら、本人に訴えてはいかがです?」


 ロコッドと執事の会話に割って入って、ミアーナは言った。すると、ロコッドは悔しそうにしながらも、言い返すことなくルイティーを連れてその場を離れていく。


「ありがとうございました」

「いいえ。あなたも大変ね」


 頭を下げる執事に微笑み、自室に向かって歩き出した。


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