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宝石の精霊が異空間で宝石クイズをする話


【ストーンアテナ(Stone Athena)】

 宝石に宿る精霊が、地球を守る為に人の姿となった状態。


 世界は、地球侵略を目論む宇宙人一族の脅威にさらされていた。

 人間たちが応戦し戦況は有利ではあるものの、いたちごっこが続いており、敵を掃討しきれずにいる。

 そこで人々は、地球が作り上げた神秘の存在である宝石に力を借りることにした。


 各国それぞれにストーンアテナを召喚していたが、ここ日本では、国産宝石の代表ロッククリスタル(無色透明の水晶)の精霊と交渉をし、様々な国産宝石たちが援護してくれる運びとなった。


 日本国産のストーンアテナは、瞳の光彩に桜の模様があるのが特徴である。



 僕の仕事は神和(かんなぎ)

 ストーンアテナの主として政府から拠点用の屋敷を与えられ、要請に応じてアテナたちを戦場等に派遣するのがその役目。

 元々鉱物や宝石が好きで志願し、無事にストーンアテナを召喚できたという訳だ。


「今日の新しい出動要請は一件だけか。誰に行ってもらおうかなあ」

「主様、お茶をお持ち致しましたわ」

「ありがとう、ロードナイト」


 ロードナイトか。

 昨日は別の宝石に行ってもらった所だし、彼女に頼もうかな。


「ロードナイト、今日出動できそう? 場所はちょっと遠いけど、宇宙人の数は少ない案件で出動要請が来てるんだ」

「勿論、大丈夫ですわ。お任せくださいませ」

「じゃあ、お願いするよ。ペアの希望はある?」

「わたくしが決めて宜しいのでしたら、ディアちゃんが良いですわ」

「オブシディアンね、分かった。君たち、仲良いよね」


 そこでふと、僕はあることを思い出す。


「……寄り道しないで、まっすぐ帰って来るんだよ?」

「まあ、主様ったら。そんなこと致しませんわ」

「いや、この間したでしょ。たまたま別のストーンアテナ部隊と遭遇したからって、写真撮りまくってきたじゃん……」

「あれは本当に幸運でした。まさか他所属の、日本産ストーンアテナにおける四大宝石アテナちゃんに逢えるなんて……念の為に一眼レフを持参していて正解でしたわ」

「出動の際に、念の為持っていくものじゃないよね? それに、よそ様のアテナの邪魔しちゃ駄目だよ」

「双方ともに宇宙人討伐の任務が済んだ後、出逢いましたのよ。先方に撮影の許可はちゃんと取りましたし」

「君だってストーンアテナなのに、何だってそうストーンアテナオタクなの……」

「それは、アテナちゃんたちが強くて美しくて最高に素敵だからですわ!!」

「そっかあ……」


 僕も宝石たちは大好きだし大切だから、気持ちは分かるけれども。


「主さん、頑張って」

「オブシディアン!」

「まあでも、主さんだって一眼レフ買ってあげたりしてるんですから、これくらいは想定範囲内じゃないですか?」

「いやいやいや……! オブシディアンにもソーラーマスコットの玩具あげたけど、持ち歩かないでしょ」

「あれは眺めて楽しむ置き物なので……」

「ではそろそろ、わたくしたちは出動致しますわ。ディアちゃん、参りましょう」

「はあい」

「オブシディアン。ロードナイトが寄り道しそうになったら、ちゃんと止めてね! あと無事に帰ってきてね!」

「善処します」


 こうして二人は出動していった。

 戦力的には何も問題ないのに、僕は何を心配しているんだろう……?



 ロードナイトとオブシディアンの前に、宇宙人たちが現れた。


「行きますわよ! サーペント・ローズ!!」


 ロードナイトの操る薔薇の蔓が宇宙人を捕らえて粉砕し、


「レプス・アロー!」


 オブシディアンの放つ黒い硝子の矢が宇宙人を突き刺せば、宇宙人たちは塵となって消える。


「絶好調ですわ!」

「終わったから帰る……」


 この二人は実のところ、『日本産アテナイレブン』と呼ばれるくくりに入る程度には強いストーンアテナたちだった。


「あっ、あそこにいるのはもしや……」


 そんな折。

 声を上げるロードナイトに、オブシディアンが振り返る。


「どうしたの?」

「日本産四大宝石のガーネットさん、サファイアさん、トルマリンさん、トパーズさんですわ! また会えるなんて、わたくしは何て運がいいのかしら……!」

「この間会ったアテナたち……じゃないよね。勿論ウチの屋敷の皆さんでもないし」

「ええ、また別の個体のようですわね。尚更、ラッキーですわ」


 ロードナイトはそう言って、新たに出会った四大宝石たちに近づいていく。


「もー……私、ここで待ってるよ?」

「分かりましたわ! すぐ戻ります!!」

「足はや……って、あれ?」


 その時オブシディアンは、妙な引っかかりを覚えた。


(何かあのアテナたち、エネルギーが変? この間の他所属の四大宝石は、凄く綺麗なエネルギーだった。あんな風に淀むほど疲れてるとか……?)


 オブシディアンが見つめる先で、ロードナイトが件のアテナたちに声をかけようとしている。


「お待ちになって、皆様。突然失礼致しま……」


 その瞬間、不意に四大宝石のストーンアテナの姿が消えて。

 禍々しい時空の歪みが口を開ける。


「え」

「ドナちゃん!」


 オブシディアンが急いで駆け寄り、ロードナイトの腕を引っ張るが……


「きゃあーっ!!」

「わあっ!」


 力及ばず、二人は時空の歪みに吸い込まれていった。


 ――そうして目の前に現れたのは、人気がないのに騒がしい煌びやかなステージ。


『美しい宝石が欲しいかえ?』

『宝石を手にするには、相応の知識がなければのう』

『お前たちに宝石を持つ資格があるのかどうか、見定めてやろうぞ』


 こじんまりとしたドクロがふよふよ浮かんできて、そんなことを言ってくる。


「……うっざ」

「何ですの、これは?」

「コレは知らないけど、さっき時空の歪みに落ちたから、変な所に来ちゃったんじゃないかな」

「あのアテナちゃんたち、罠だったんですのね……ごめんなさい、ディアちゃん」

「いいよ、私も気づかなかったから。とりあえず、早く帰りたいからやってみる?」


 オブシディアンに促されてロードナイトが顔を上げると、ドクロは消えてステージには大きなボードが出現していた。ボードには次のように書かれている。


 ――宝石クイズに挑戦しよう! 正解すると素敵な扉が開くぞよ。


「素敵な扉……?」

「元の場所に帰れるかなと思って。出口よく分かんないし」

「なるほど、そうですわね。やってみましょう。アテナちゃんに関することで、わたくしに答えられないことなんてありませんわ!」

「さすが」


 そんな訳で何故か二人は、異空間で宝石クイズをすることになった。


【第一問】

 薔薇が名前の由来になっている宝石は、次のうちどれ?

1.メノウ

2.ロードナイト

3.ムーンストーン


「本人を前にしてよく言う」

「全くですわね。この三択なら、わたくししかおりませんわ」


 正解:ロードナイト


【第二問】

 ガーネットの和名は何と言う?

1.柘榴石

2.紅玉

3.桜石


「ガーネットさんが自作するザクロジュースは、絶品ですのよ!」

「美味しいよね」


 正解:柘榴石


【第三問】

 西瓜のような色をした『ウォーターメロン』は、次のうちどの宝石?

1.トパーズ

2.サファイア

3.トルマリン


「スイカ電池ってあった気がする」

「電気を起こせるなんて、トルマリンさんは本当に凄い宝石ですわ」


 正解:トルマリン(ウォーターメロントルマリン)


【第四問】

 トパーズの名前の由来と言われている言葉は、次のうちどれ?

1.探求

2.羅針盤

3.安定


「トパーズさんの好奇心旺盛さって大好きですの」

「安全靴履いてるし、探し求める為の装備が完璧だよね」


 正解:探求


【第五問】

 ダイヤモンドの次に硬い『硬度9』の宝石は、次のうちどれ?

1.トルマリン

2.サファイア

3.ガーネット


「秘めたる強靭な能力。はあ、尊い……」

「サファイアさんは耐久性を表す靭性なら、ダイヤさんより上なのが凄いと思う」


 正解:サファイア


【第六問】

 刃物としても使われていた宝石は、次のうちどれ?

1.黒水晶

2.黒玉

3.黒曜石


「この選択肢の、黒いの集めました感」

「ディアちゃんは、かっこいい宝石ですわ!」


 正解:黒曜石 (オブシディアン)


【第七問】

 次のうち、水晶にないものはどれ?

1.幻影水晶

2.玉鋼水晶

3.松茸水晶


「水晶はバリエーション豊かで、奥深い宝石なのですわ」

「形とか模様とか、覚えきれない……」


 正解:玉鋼水晶(幻影と松茸は存在します)


 ――そこで問題は途切れ、周囲の景色は一変した。


「わ、出れた。清々しい空気」

「はー、ホッとしますわあ……」

「時空の歪みが消えてるね」

「長く同じ場所には留まらないらしいですし、出られて本当に良かったですわ」


 二人が安堵のため息を吐いていると、背後から声がかけられる。


「よく頑張ったな、君たち」

「「クリスタルさん!」」


 そこにいたのは、日本産宝石代表のロッククリスタルだった。


「引っ張り上げようと思ったが、自力で出られそうだったから見ていたんだ。今後は気をつけるんだぞ。歪み自体は自然現象だが、中に落ちた悪意が餌を見せておびき寄せようとすることもある。今回のように」

「はーい……」

「肝に銘じますわ……」

「ふふ。では君たちの屋敷まで送ろう」


 ロッククリスタルはそう言うと、二人を屋敷の玄関まで送ってくれた。



「ただいま戻りましたわ、主様」

「ただいまです」

「お帰り。二人とも、お疲れ様。怪我とかない?」

「大丈夫ですわ」

「大丈夫です」

「そっか、無事で良かった」


 玄関先でそんな会話をしていると、後ろから賑やかな足音が聞こえてくる。


「ロードナイトもオブシディアンも、お帰り」

「やっと帰ってきたね!」

「遅くまでお疲れ様です」

「だいぶ疲労が溜まっていますね。ヒーリング致しましょう」


 別の任務で各地へ行っていたトパーズ、ガーネット、サファイア、トルマリンが、口々に帰宅した二人を迎えた。


「えっ皆様、お集まりになって……何かあったんですの!?」

「皆さんより遅くなっちゃったんですねえ、すみません」

「ガーネットたちの戻りが思いのほか早かったからね。皆で待ってたんだよ」


 僕が応えていると、トルマリンが素早く二人にヒーリングを施してくれる。


「何と……有難き幸せですわ! 是非この幸福を十枚程には収めたいので、一眼レフを取って参ります!」

「写真もいいけど、おやつ食べない? フルーツサンド美味しいよ!」

「そうそう。出動の後は美味しいものを食べるのが一番さ」


 ガーネットとトパーズに引き止められると、流石のロードナイトも動きが停止する。


「ドナさんの好きなコーヒーゼリーもありますよ」

「オブシディアンさん御用達のカステラも、勿論用意しています」

「えっ、『コトノハ』のカステラですか?」


 そしてサファイアとトルマリンが続ければ、今度はオブシディアンが先に反応した。その様子を見てやってきたのは、優雅な仕草のネフライト。


「そうだよ。美味しそうだったから、僕にもお裾分けしてくれると嬉しいな」


 更にネフライトの後ろからは、メノウ、アメジスト、スピネルも顔を覗かせる。


「私はドナちゃんと一緒にコーヒーゼリー食べます!」

「ふふ、今日はおやつが沢山で迷っちゃうわね」

「ショートケーキも、美味しそうでした……」


 そんなこんなで、僕らは全員でおやつタイムにすることになった。

 満足そうな皆を眺めていると、僕も心が温かくなる。


 こうして今日も、僕の神和としての日々は過ぎていくのだった。



 ―おわり―



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