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からくり競艇 ~黄金の波切り、魂のフルスロットル  作者: 水前寺鯉太郎
第8章:黄金の波切り編

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第191話:黄金の戴冠、讃岐の夜を統べよ ― グランプリ・高松ナイター ―

2031年12月24日。クリスマスイブ。

香川県、高松競艇場。瀬戸内海の東端に位置するこの場所は、冬になると「重い海風」が牙を剥く難所として知られている。ナイター照明に照らされた水面は、漆黒のベルベットのように深く、冷たく沈み込んでいた。

「誠。冬の高松の風は、湿気を含んで『重い』。マブイを冷やしすぎたら、出力の芯が凍りついて落ちる。気をつけてね」

出走直前のピット。防寒着に身を包んだ守屋あおいが、速水誠の首元に厚手のマフラーを丁寧に巻き直した。彼女の瞳には、恋人としての慈しみと、同じ優勝戦を戦うライバルとしての鋭い光が同居している。

「わかってる、あおい。でも、俺の39号機は、もう寒さを怖がるようなタマじゃないよ」

誠が視線を向けた先では、メカニックの野田あかりが、文字通り「不眠不休の結晶」であるエンジンを最終調整していた。備前の激闘で粉砕したシリンダーブロックをベースに、彼女が導き出した答えは、からくり工学の常識を覆すものだった。

「師匠! 見てほしいっす。壊れたシリンダーの内壁を、人工ダイヤモンドでコーティングして補強したっす。さらに、シロの属性を解析して見つけた『サイベリアン冷却技術』を応用したっすよ。このエンジンは、ナイターの冷気を吸い込めば吸い込むほど、それを『圧縮エネルギー』に変換して爆発力を高める……究極の寒冷地仕様**『ダイヤモンド・スカイ』**っす!!」

誠の足元では、すっかり黄金の毛並みが定着し、神々しい威厳を放つようになったシロが、寒風の中でも一点の曇りなく輝いていた。シロのマブイは、凍てつく高松の夜気を逆に糧とし、39号機の心臓部へと熱い命を送り込み続けている。


電光掲示板に映し出された優勝戦のメンバー表に、高松に集った数万の群衆、そして全世界30億の視聴者が息を呑んだ。そこに並ぶのは、誠が一年間かけて切り拓いてきた「時代」の象徴たちだ。

* 1号艇:新武 友哉(長崎) ―― 「大村の龍」。誠に勝負の厳しさと「地力」の差を叩き込んだ生ける伝説。

* 2号艇:大内 胤賢(山口) ―― 「蒼い閃光」。備前での屈辱を胸に、最新の演算装置を積み込みリベンジを誓う。

* 3号艇:石田 健太郎(東京) ―― 「ナイトサイレンサー」。無音の加速、ナイター勝率日本一。この闇夜は彼の領土だ。

* 4号艇:速水 誠(山口) ―― 「五冠の主」。年間全冠制覇「六冠」へ王手をかけた、黄金の挑戦者。

* 5号艇:平野 菜奈(山口) ―― 「讃岐の暴風」。地元・香川の海を前に、封印していた讃岐弁を解禁。「誠くん、地元の海は渡さんけんね!」

* 6号艇:守屋 あおい(山口) ―― 「氷の女王」。誠のすべてを知り、愛ゆえにその歩みを止めようとする最強の守護者。

「まさにオールスター。からくり競艇の歴史そのものが、この高松の1マークに集結しました!」

実況の絶叫が、冷たい夜気を震わせる。


「第12R、グランプリ優勝戦! 潮は満潮へ向かい、海面が不規則にうねり始める! 進入隊形……4号艇・誠、あえて4カドを選択! ダッシュ勝負だ!!」

漆黒の水面に、ナイター照明が何本もの光の剣となって突き刺さる。

3号艇の石田健太郎が、独自のマブイ消音技術で気配を消し、忍び寄る影のように加速を開始した。その「無音の加速」が先頭を捉えようとした瞬間、誠はあかりが組み上げたエンジンのリミッターを解除した。

「シロ、高松の冷たい風を全部飲み込む。俺たちの旅、ここで最高のゴールにするよ!!」

(フゴォォォォォォォォォン!!)

シロが咆哮し、ダイヤモンドコーティングされたシリンダーが超高圧の爆発を繰り返す。冬の重い空気が過給機に吸い込まれ、純白の閃光となって排気口から噴き出した。「ダイヤモンド・ブースト」。39号機は物理的な重力を無視し、漆黒の水面を跳ねる黄金の光球となった。


「スタートしました!! 全艇、命を削るようなゼロ台スタート!! 4号艇・誠、コンマ01! 3号艇・石田、驚愕のコンマ00!!」

石田健太郎の「ナイトサイレンサー」が、闇に紛れて1マークへ最短距離で突き刺さる。その静かな加速は、観客の目さえ欺くほどの鋭さだ。

しかし、誠の39号機は、冬の冷気を吸い込むほどにパワーが増す異常なまでの「伸び」を見せた。1マーク直前、誠はハンドルをこれまでにない「深い角度」――機体が転覆寸前まで傾く極限の角度で切り込んだ。

からくり競艇公式YouTube『カササギ』PV最終報告

> 【伝説の最終決戦】速水誠、石田の静寂をダイヤモンドの咆哮でブチ抜くか!? 讃岐の夜が黄金に染まり、高松の水面が熱気で蒸発を始める! 累計PVは驚天動地の30億を突破!! サーバーは誠の放つ『ダイヤモンド・マブイ』の干渉により物理的に結晶化中!!

>

【グランプリ優勝戦:1マーク進入時の情勢】

| 艇番 | レーサー | 状態 | 属性 |

| 3 | 石田 健太郎 | 無音の先制。1マークを支配。 | 静寂・闇 |

| 4 | 速水 誠 | ダイヤモンドの強襲。外から並ぶ。 | 黄金・結晶 |

| 6 | 守屋 あおい | 誠の動きを読み、さらに外から被せる! | 愛・氷結 |

| 1 | 新武 友哉 | 懐を締めて誠の捲りをブロック! | 龍・土 |

第五章:真・奥義の胎動

「石田のインを、誠の黄金が削り取る!! しかし外からは守屋あおい! 誠の進路を封じるための『愛の鉄槌』が飛ぶ!!」

あおいの機体から放たれた氷のマブイが、誠の視界を白く染める。誠がこれまでに見せてきた「捲り」も「空中旋回」も、彼女にはすべて読まれている。

「あおいさんまで……! でも、俺は止まれないっす!! 全てを、この一瞬に!!」

誠は1マーク、満潮に向かって盛り上がる潮の頂点、その「うねり」のエネルギーを逆に利用した。

ダイヤモンドのプロペラが潮の壁を砕き、六つのSG(栄光)を象徴する六色の光が39号機を包み込む。


誠の五冠に、あおいとの絆、そして宿敵たちの想いが混ざり合い、六冠目の光が讃岐の夜空へと昇りゆく。

いま、からくり競艇史の頂点が、黄金の輝きの中に書き換えられようとしていた。


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