第42話
ゲーム……俺が絶対勝つやつ……はあ。
よく考えたらさ、俺、ゲームもめっちゃダメなんだった。
まあ、対戦ゲームはやる相手もいなかったけどね。
謎解きとかならまだいいんだけど……あ!
そうだ。なぞなぞにするか。俺が作ったなぞなぞなら、スレンダーマンが回答できるわけないし。だいたいあいつ確か、外国生まれなんだろ。
あれ? なら、なんで日本語しゃべってるの?
ああ、生成AIならそんなこと朝飯前か。
しょうがない。とにかくやるしかないんだから。
「なぞなぞで勝負しようぜ」
「ほう。なぞなぞですか?」
「そう。俺が出すなぞなぞに正解したらお前の勝ち」
「おや? それだと正解を君が持っているのですから、私になかなか勝ち目はない気がしますが」
う……まずい。
「まあいいでしょう。どちらにしても君は手に入るのですから。まあ、不利とはいえ私が勝ったら、そのお連れ様もいただくことになりますよ」
そんなわけいくか!
でも、こいつ、約束守るのかなあ……怪異だし。
でも! やるしかない。一か八かだ!
◆
「オオカミを出せる?」
アプリが改めてユイナに確認した。
「うん。こないだ学校の屋上でね、なんとなく呼んでみたんだ。そしたらあいつ、出て来ちゃってさ」
「そんなことあり得ないんだけどなあ」
「でも出て来ちゃったの。中学校、スマホ禁止だからアプリもいなかったのにね。まあ、いたら逆に出て来なかったかもね。ルール違反なんでしょ?」
「あ、まあ……そうだね。バグデーモンが出現しないと魔法少女には変身できないはずなんだけど……あ、そうか! あいつ、ボクらの書きだしたプログラムの一部のくせに、君自身に隷属しちゃったってことか! 君にメロメロだったしね。でも、プログラムから飛び出して現実世界で実体化するなんて……」
「まあ、原理なんてなんでもいいから。とにかくオオカミを呼んでみてくれるかな、ユイナ」
アイリが言った。
「わかった。オオカミ! 出て来て!」
「お呼びでやんすか、赤ずきん様」
音もなくオオカミが出現した。
「うわ。でもここ、駅前だよ。オオカミはちょっとまずくない?」
エミリがそう言って周囲を見回した。
「でもさ、貧相だからやせた大型犬にしか見えないでしょ。大丈夫じゃない?」
ユイナがそう言って笑った。
「相変わらずきついっすなあ、赤ずきん様は。まあ、あっしはかまやしませんよ。犬でもなんでも」
「でもさ、しゃべる犬はまずいんじゃ」
ミウが困惑した顔をした。
「とにかくそんなこと言ってる場合じゃないから。ユートの痕跡を追えるかな? オオカミ君?」
「ああ、アイリさん。あっしは鼻が利きますからねえ。やってみますか」
「ちょっと待って。犬は駅には入れないんじゃないの?」
エミリが首をかしげた。
「うわ! そうだった……」
ユイナが声を上げた。
「ああ、あっしは小さくなれますよ。ネズミぐらいの大きさになって、改札を抜けましょうか?」
「え? マジ? すごい! オオカミのこと見直しちゃった」
ユイナが感嘆した。
「ああ、赤ずきん様に褒められるなんて。無上の喜びでやんす」
「そんなお世辞言って、隙を見つけて私を食べるつもりなんでしょ」
「え! あ、ああ、滅相もございません。もうそんなこと、考えもしませんぜ。ま、とにかくユート様を探す……ああ、あの方、先日は勇敢に闘いなさってましたね。で、どうかしたんですか?」
「バグデーモンにさらわれちゃったの」
「ええ! それは一大事で! あっしにできることならなんでもしますぜ。あの方の勇気、あっしは感動してたんですから」
「そうだね。お願い、オオカミ。じゃあ、ホームに行ってみよう」
ユイナはそう言い、駅の入り口を見た。
オオカミはすうーっと小さくなっていった。
◆
「じゃあ出すぞ、なぞなぞ」
「どうぞ」
「畑に大根が10本。2本抜いたらあとはいくつ?」
ふふ。答えは二つあるからな。どっちを答えてもお前の負けだぞ。
「おやおや。私はこれまで機械学習を深く深く進めてきましたが、そんな簡単な問題を解くのは初めてですよ」
スレンダーマンは不敵な笑みを浮かべ……られるわけないんだよな、のっぺらぼうなんだから。
「ふーん。それなら答えてみなよ」
俺の勝ちだぜ。
「よろしいんですか」
「当てられるものならね」
「それでは回答を生成します。抜いた**『あと』の残りの大根なら8本です。**『あと』が抜いた痕だということなら二つです」
無機質な早口でスレンダーマンはそう言った。
「え?」
まずい。両方の答えを言われちゃったよ。
「どうしました? 生成AIらしくきわめて論理的に回答差し上げましたが?」
「あ……うーん……」
「私の勝ちでよろしいですか?」
「二つ答えるなんてずるいぞ!」
「おやおや。答えは一つとはおっしゃってませんでしたが」
「それはそうだけど……」
「それでは、あなたは私のコレクションになっていただいて、お連れの方はくねくねの女王の貢物ということでよろしいですね?」
いいわけないだろ!
「今のなし! 回答二つは違反なんだからな!」
「おや、そうだったのですか?」
「そうだよ。次やろうぜ、次!」
うう……ちょっと無理筋か……乗ってくれればいいんだけど。
「まあいいでしょう。かわいい君の頼みですから。君との時間は楽しいですしね」
うわあ……キモい……けど乗って来た!
最後のチャンスかもしれないけど、池谷君まで犠牲にするわけにはいかないからな! 俺、ヘタれてる場合じゃないぞ!




