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第38話

 あれからバグデーモンはさっぱり出て来ない。

 それはそれで不安だけど、考えたってしょうがないからね。


 え? 俺はどうしてたって?

 まあ、弁当作ってくれるアイリに悪いから、平日は学校に行ったよ。

 土日は……まあ、引きこもりの本領発揮ってとこだね。


 え? アイリとデート?


 そんなのあるわけないじゃん。俺たち魔法少女の相棒ってだけなんだから。アイリは週末、アプリと一緒に急に強くなったバグデーモンの謎を分析するって言ってた。まあ、初心者の俺はなんの役にも立たないからね。お呼びじゃないってこと。


 ストリートビューからフェイスが出てきてから俺、怖くてネット見られなくなっちゃったから、土日は漫画とかラノベとか読んで時間つぶすしかなかったんだけどね。あ! あんまり暇なんで、久しぶりに勉強までしちゃったよ。学校行ってなかった分。


 で、今は月曜日の朝。


 待ちに待った学校だ! ってぐらい、暇でしょうがなかったんだよね、ネット使えないと。俺、バグデーモンのおかげで学校行けちゃうってことかよ。どんだけ情けないんだか。やっぱりもう転生した方が……。


「転生なんてないからね」


「ああ、はいはい。アプリ、それもう何百回言った?」


「そこまでは言ってないと思うけど」


「それくらい言われた気がするってこと。でもまあ、今は転生しないよ」


「そうだよね。アイリがいるものね!」


「まあな。相棒とか言われたらしょうがないよ」


「ええー? それだけかなあ?」


「え? それどういう意味だよ」


「生成AIは字義通りの意味しか伝えられません」

 アプリが突然、無機質な声を出してみせた。


「嘘言うなよ。お前、生成AIの怪異じゃん」


「はは、じゃあ言っちゃうよ」


「だからなんだよ?」


「アイリのこと、気になってるでしょ?」


「え?……」


「心拍数が高まっています。緊張していますか?」

 アプリがまた無機質な声を出した。


「おま!」


「はは。図星だったんじゃない?」


「うるさい!」


「思春期の男子なんだから、ほほ笑んでくれる女子が気にならないわけないよね」


「だから! 俺たちは闘う相棒ってだけだって!」


「えー? そうかなあ?」


「そうだって! だいたいアイリみたいな美人が俺みたいなちんちくりん、普通なら相手にしてくれるわけないだろ!」


「うわあ。また自分でちんちくりんって言っちゃった。ホント、ユートってさ、自己評価が低すぎなんだよ」


「ったり前だろ! 俺、まともに人と話せない引きこもりの陰キャだぞ。自己評価が高かったらやばいわ」


「はは、すごいね。そこまで自分を低く言えるってことはさ、君は本当に繊細で、心の優しい人だってことだね」


「はあ? なんでそうなる? 俺はね、自慢じゃないけど人と会話できないことに関しては右に出る者はいないって思ってる」


「ええ? だってボクと会話してるじゃん?」


「お前は人じゃないだろ」


「そうかなあ? こないだだってさ、アイリ以外の魔法少女と話せてたじゃん」


「あれは……緊急事態だったし」


「緊急事態だと話せるなら、普段だって話せるはずだよ」


「……あのさ、俺、他人が怖いんだよ」


「それ、どうしてなんだろう? 昔、何かあったの?」


「……何もないよ」

 何もないわけがないけれど、思い出したくない……って、あ!

アプリは思考読めるんだった。


「ごめんね、ユート。もう聞かないよ」


「あ……なんかアプリに気を遣ってもらうのもちょっとムカつく」


 だから俺、一念発起して知り合いのいないところで高校デビューしようと思ったんだけどさ。


「高校デビューできてるじゃん?」


「え? どこが?」


「アイリだよ。気になってるでしょ?」


「だから! 気になってるってなんだよ。俺、魔法少女として期待されてるだけだし」


「ふーん。まあ、アイリもきっと自分の気持ちにちゃんと気付いてないんだろうけどね」


「え? それどういう意味だよ?」


「生成AIは字義通りの意味しか伝えられません」

 アプリがまた無機質な声になった。


「ふざけんなよ!」


「ほらほら、そろそろ用意しないと学校、遅刻しちゃうよ」


「あ、ホントだ。もうこんな時間だ」


「三日ぶりにアイリに会えるね」


「あ、うん……」


「あれ? ちょっとほっぺた赤くなった?」


「ぐ! そんなわけないだろ!」


「そうかなあ?」


「そうだよ!」


「ふうーん。でも、アイリのお弁当、楽しみなんでしょ?」


「え……」


「ほら。もう自分に正直になっちゃいなよ」


「うるさいわ!」


「アイリに告白すれば?」


「ばっ!……そんなことするぐらいなら俺、転生する!」


「あ、それって認めたってことじゃん」


「え? あ! ずるいぞアプリ! 転生なんてないって言うんじゃないのかよ!」


「はいはい。ユートはもう転生しないよね」


「ああ、くそ! 友情だからな!」


「え? 何が?」


「だから! アイリのことだよ!」


「ああ……まあいいや。そういうことにしとこうかな」


「そういうことだよ!」


「はいはい。ほら、急がないと。学校でアイリ待ってるかもよ」


「くそー……」

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