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第36話

 まあ、飼い主に命令された犬……どころか蛇ににらまれたカエルみたいに俺は硬直するしかなかった。

 アイリは俺のぼさぼさ頭をくしで軽く全体をとかしてから、前髪を持ち上げて額を出した。

 うう……ハズいからやめてほしいんだけど……。


「おお、イケメン……じゃないけど」


  アイリ、俺だっていい加減傷つくんだけど。


「うん! 確かにけっこうかわいいかもね」


 えええ……。


「よく見たら、色も白いし」


 それ、引きこもりで外に出てないからなんですけど……。


「まあ、ちっちゃくて細くて、男としてはちんちくりんなことには変わりないけどね」


 やっぱりディスるんじゃないか……。


「でも、魔法少女の時は確かに、私たちの中にいてもぜんぜん違和感ないくらいかわいかったですよね」

 カノンさんが言った。


「そりゃあそうだよ。ユートは魔法少女の適性がすごいんだから」

 俺のアプリが口を挟んできた。


 お前まで……いい加減にしろよ……。


「まあ、ごつい体育会系よりはぜんぜんいいよね」


  ユイナさん、そんな体してたら陰キャしてませんから。


「私のライバルなんだから、かわいくなきゃね」


 ミウさん、それ、褒めてくれてるんですよね……。


「なんだかガラスの靴がぴったりはまっちゃいそうですよね」


 カノンさん、それはシンデレラ……俺が男だって知ったら王子様、卒倒しちゃいますって。

 それにあなたの設定は白雪姫じゃないんですか。


 はあ……俺、小学校の時、女の子みたいっていじめられて、それからみんなとしゃべれなくなっちゃったんだよなあ。トラウマだったはずなのに……今、みんなにいじられてるのに、なぜか嫌な気がしないんだけど……どういうことなんだ、これ?


「ほら、ユートさんで遊んでないで、みんなも変身を解いて!」

 エミリが呆れた声で言った。


「はは、ユート、ごめんね。私は君のこと、ちんちくりんでも好きだから!」


 えええ!?  

 ってまあ、相棒としてだよね。なんか頼られてるみたいなのは素直にうれしいけどね。


「さあ、変身解除しようか」

 アイリがみんなに言った。それぞれ呪文を唱えたりして変身が解けていった。ユイナさんは赤ずきんを取っただけで変身解けるんですね、ちょっとうらやましい……。


「あれ? み、皆さん、制服着てるんですけど……」

 寝巻のジャージ姿は俺だけだ。


「闘い終わったら学校行かなきゃならないからね。まさかユートがジャージで来ちゃうとは思わなかったけど」


 アイリ、聞いてないよそれ……。


「じゃあ私も結界と変身を解くね。私はきのうに戻っちゃうから、みんな、またね!」

 エミリがそう言って何やら唱えると、ゴスロリの衣装が学校の制服に変り始め、すうーっと消えていった。

 俺たちは大きな道路の脇の歩道に立っていた。車が行き交ってるから現実に戻ったんだろうけど、ここ、見覚えないなあ。


「私はもっかい変身して二人を送り届けてから学校いくね。アイリ、ユート君、またね」

 そう言ってミウさんはまた魔法少女に変身し、ユイナとカノンをほうきの後ろに乗せ、あっという間にその場を去ってしまった。



「さて、私たちも学校行きましょうかね」


「え? て俺、ジャージなんだけど……」


「ああ、まあ、それでもいいんじゃない?」


「学校のジャージじゃないし……」


「うーん、そうかあ」


「それに、ここどこ?」


「ああ、ここから学校まで5キロぐらいあるね」


「うええ……」


「あ、そうだ! じゃあさ、きょうは学校サボっちゃおうか。ユートの弁当も家に置いてきちゃったし」


「え……」


「あ、ユートの出席日数がまた減っちゃうかな」


「まあそれは別に……」


「それならいいじゃん。きょうは私とデートする?」


「え……」


 またとんでもないことを。心臓がバクバクし始めちゃったよ。


「あ、しまった」


「え?」


「私、鞄ないから財布もないや」


「俺もないけど……」


「あはは。じゃあさ、まずはうちに行こうか」


「え……」


「うちはここから歩いて10分ぐらいかな」


「そうなんだ……」


「今、家に誰もいないしね」


「え?」


「うちに行けば二人っきりってこと」


「え? それはちょっと……」


「あ、ユート今、いけないこと考えたでしょ?」


「あ、いや、そんなことは……」


「ふーん、ホントかなあ?」


「ホントだよ、俺、そんなこと考えるわけないだろ!」


「そんなこと? あはは。やっぱり考えたんじゃない」


「う……」


「それよりユート?」


「え?」


「なんか私と普通に話してるね」


「え? ああ……」


「寡黙な孤高の男はやめたのかな?」


「あ、いや……」


「はは。うそうそ。やっと私とちゃんと相棒になってくれたのかなって今、ちょっと安心したんだよね」


「あ、まあ……」


「だからさ、うち行こうよ!」


「え……でも……」


「変なことしないからさ」


 いやそれ、女の子が男子に言うことじゃないような……。


「うち行ったらトレーニングできるから」


「は?」


「ベンチプレスとかあるから。ユート、もっと鍛えようよ」


「え? うえええ……」


「じゃあ決まりだね」


「あ、いや俺、返事してないけど」


「走るのは無理かな。まあゆっくり歩いて行こ!」


 またイエスかはいで答えなさいだよ……ああ、俺、やっぱり死んだ方がましかも……。

 あ、アプリ、なんにも言うなよ。もっと面倒なことになるから。


 俺は仕方なく、アイリの後をとぼとぼとついて行った。



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