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第34話

「アプリ。俺が願えばなんでも出せるんだよな」


「え? ああ、たいていのものはね。ただし、君の勇気の強さによるけどね」


「だからさ、その勇気っての、なんだかわかんないんだけどさ……ああ、そんなこと言ってらんない。アイリさんを助けなきゃ!」


「そうだぞユート、フルパワーで勇気を示すんだ!」


「はいはい。いいこと言ったってか……とにかく!」


「ん?」


「いくぞ、アプリ!」


「おう!」


「早太郎!」


「……」


「おい、アプリ!」


「何それ?」


「昔話があるんだよ。村の娘をさらう怪物のヒヒをさ、早太郎っていう犬が退治したんだって」


「ヒヒ? ヒサルキはヒヒじゃなくてネット怪異のバグデーモンなんだけど」


「似たようなもんじゃんか、猿っぽいんだから。村の娘じゃなくて助けるのはアイリさんだけどね。いいから出せって」


「うーん。わかったよ。じゃあもう一回、掛け声やってみて」


「うん。来い! 早太郎!」


「ワオオーン!!」


 大きな咆哮と共に、巨大な白い犬が現れた。


「うわあ、もふもふの霊獣じゃない。すごいねユート」


「ほう! あっしの仲間でやんすね。まあ、犬コロのようですが」


 ペロン!


 オオカミの3倍ぐらいの大きさの白い犬がオオカミの顔をなめた。

「おやおや。愛想のいい犬コロでやんすね。かわいいもんだ」


「早太郎、あいつをやっつけろ!」

 俺は大声を振り絞って命じた。


 って、え? 俺、大声だしちゃったよ。

 どうなってるの?

 俺、引きこもりの陰キャなのに。

 自分でもびっくりだよ。


 アイリは必死に白兵戦を続けている。


「早太郎、アイリを助けて!」


「ワッオオオオオオオオーン」

 残響を残す大きな咆哮を上げて巨大な白い犬、早太郎はヒサルキに突進した。


「アイリさん、避けて!」

 俺はまた、力いっぱいの声を飛ばした。

 恥ずかしがってる場合じゃないからな。


「キイイイイイ」

 ヒサルキは三角飛びで逃げ回る。


 その隙にアイリさんは俺の近くに退避した。


「ごめん、ユート」


 え? 俺のこと呼び捨て? アイリさん?


「私、さっき死ぬって思って一瞬、動けなくなっちゃって」

「あ……うん」

「助けてくれてうれしかった」

「あ……はい」

「でさ。さっき私のこと、呼び捨てにしたよね?」

「あ……はあ……すいません」


「あ、そういう意味じゃないから。あれで私、反撃の武器を出そうと思って気を取り直したんだけど、ユートがあいつ、ぶっ壊しちゃったからさ。ちょっと落ち込んじゃったけど、やっぱり私が闘わなきゃって自分を奮い立たせたんだ」

「あ……はい」


 ああ、よかった。やっぱり最強の軍人さんだよね、アイリさんは。


「でね、私もユートって呼び捨てにすることにしたから」

「え……あ、いやその」

「相棒なんだから、いいじゃない。ね、ユート」


 そう言ってアイリさんは俺に向き合った。

 うわあ、目をそらせないじゃん……。


「あ……でも俺は……」

「これからはさ、アイリって呼んでね」

「え……えええ……」


「あのさ、ラブコメは後にしようね」


 俺のアプリが水を差した。っていうか、ナイスアシストだよ。

 心臓バクバクし始めてたからね。


「ラブコメじゃないよ。私たち、パートナーなんだから!」


「はは、アイリは面白いね。でもほら、あれ見てよ。霊獣がヒサルキを追い詰めてるから」


 巨大な白い犬、早太郎はその大きさからは考えられないすばしっこさでヒサルキを追い掛け、ヒサルキの逃げ場をオオカミがうまくふさいでいる。行けそうだ!


「あれ、ユートが出したんだよね?」


 うわあ、すっかり呼び捨てだよ。


「あ、はあ……まあ」

「すごいなあ、霊獣出しちゃうなんてね、さすがユート」

「え? い、いやあれ……早太郎なんですけど」

「もふもふは霊獣って決まってるから」

「はあ……そ、そうなんですか……」


 早太郎とオオカミに挟まれて最初のヒサルキは一瞬、動きを止めた。


「ガブリ!」


 早太郎は大きな口を開け、ヒサルキに噛みついた。


「キイイイイイイイイイイイ!」

 ヒサルキはまたガラスをひっかくような気持の悪い悲鳴を上げた。


「ガブリ!」


 オオカミもヒサルキに噛みついた。

 うわあ、ちょっとスプラッタかも。


「キイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!」


 異常な悲鳴を上げると同時にヒサルキの体は引き裂かれ、あっという間に二匹の口の中に飲み込まれていった。

 ちょっと絵面がやっぱり怖い。

 と同時に向こうで4人の魔法少女が闘っていた巨大ヒサルキもすうっと消えていった。


「やったねユート。デバッグ成功だ!」


「はあああああああ」

 俺は力が抜け、その場にへたり込んだ。

 あ、まずい。

 俺、女の子みたいに内またで座り込んじゃったよ……。


「かわいいいい!」


 やっぱり来たよ。

 アイリが俺の首を上から抱き締めた。

 まあ、やっぱりぜんぜんラブコメじゃないけどね。

 アイリ、俺のこと男だと思ってないんだよな、魔法少女の時は。

 なんだか達観してきちゃって、もう心臓バクバクしないや。

 いいんだか悪いんだか……。


 あ、それにもういいや。

 頭の中も全部アイリで統一しちゃうからな。

 「さん」はつけないからな!


 口には出せそうもないけど。


「アイリ! ユート君!」

 ミウさんを先頭に、4人の魔法少女がこちらに駆けつけてきた。

「やったね! 今回はきつかったけど」


「うん。ユートのおかげだよ」

 アイリが答えた。


「なんか二人、ラブラブなんですけど……」

 ユイナさんが不審そうな顔で俺を一瞥した。


「ええ? 私たちの絆はラブどころじゃないよ。ね、ユート」

 そう言ってアイリは俺の頭に頬を付けた。


 あの……また誤解されるからやめてほしいんですけど……。

すいません。これからの続きの公開頻度、ちょっと落ちます。

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