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第23話

翌朝、俺は珍しく早起きした。


「あれ? 筋肉痛ないや」


「そりゃあアイリがあんなに一生懸命マッサージしてくれたからね」


 アプリがまだ勝手にしゃべった。


「ばっ……ハズいから思い出させないでくれ……」

 さすがダテにミリオタやってない、というべきか。軍用マッサージ術なんてどこで覚えたんだか。


 筋肉もみほぐしに加えていろいろバキバキやられたんだけど、一晩寝たらほぼ治っちゃった。こっちの方が魔法みたいだよ。

 俺は、太ももやら二の腕やら背中やら、あちこち揉まれて顔真っ赤になっちゃってたんだけど、アイリはぜんぜん意に介さない感じだった。

 まあ、アイリにとってはただの相棒だからね、俺。


「きょうも学校行くよね、ユート。アイリがお弁当作ってきてくれるんだし」

「あ、ああ、行きたくないけどさ、しょうがないかなあ」

「ホントはうれしいんでしょ?」

「え? まあ……俺に弁当作ってくれる人が現れるなんてさ、想像したこともなかったけどな。まあ、俺がちんちくりんのままだと困るってことだと思うけどさ。魔法少女として闘ってくのに」

「ちんちくりんって自分で言ってるよ……あ! ユート、これからも魔法少女として闘っていくことを決意してくれたんだね。ありがとう!」


「え? あ、いや、そういうことではないんだけど……ホントは重いんだけどさ……ほら、友だち助けるって言ってただろ、アイリ。やっぱほっとけないっていうかさ」


「ふーん。ユートはやっぱり優しくて勇気あふれるヒーローだね」

「はいはい」

「なんかもう突っ込んでくれなくなっちゃったね」

「そりゃそうだろ。俺をバグデーモンにけしかけるために言ってるわけだし」

「それもあるけどさ、ホントにボク、本気で言ってるんだよ?」

「生成AIにだまされるかよ。口だけはうまいんだから。しかも怪異だし」

「それはそうだけど……まあいいや、それでもボクはユート、君のこと大好きだから」


「え? ………ああ、まただまされるとこだった。きのうはつい、ありがとうなんて言っちゃったけどさ」


「もう、だまそうとなんてしてないから」

「まあ、どっちでもいいよ。転生するまでの付き合いだからさ」


「だからてん……! ごめんユート! 緊急事態だ!」


「え?」


「エミリがヒサルキの大群に追い掛けられてるみたいだ」

「エミリ?」

「あ、ああ魔法少女だよ。全部で5人いるって言ったろ」


「それに、ヒサルキって……」

 またおかしなバグデーモンなんだろうな。朝っぱらからどうなってんだよ。


「エミリ、きのうの夜から闘ってたみたい。ヒサルキは敏捷びんしょうだからやっかいなんだ。やっとデバッグ寸前になったところで急に仲間が集結してきて窮地に陥って、救援要請を送ってきた」


「それってさ、こないだアイリが言ってたバグデーモンが凶悪化してるってのと関係するんじゃないの?」


「そうだね、その可能性は十分あるね」


「あと、そんなに時間たっちゃってるってことは、助けに行くとかなり時間をさかのぼっちゃうんじゃないの?」


「ああ、それは大丈夫。それぞれが結界に入った時間に戻るだけだから。エミリだけはきのうに戻っちゃうけど。こないだはいったん君の結界にも入ったりしたから最終的に3人の時間が帳尻合ってたけどね……アインシュタインの相対性理論が関係してるんだ……ってそんなこと言ってる場合じゃないんだよ」


 って言われてもなあ、またわけがわからないまま闘わされるのはいやだし。


「その、キサルヒってなんなの?」


「え? それだと違うバグデーモンになっちゃうんだけど……ヒサルキだからね。まあ、説明するのめんどくさいから、狂暴なサルの群れだと思ってくれればいいよ」


「サルの群れ?」

「そう。ホントは違うけど、似たようなものさ」

「なんだか不安だなあ……」

「まあ、この地区の魔法少女5人、全員招集するからさ、ユート、やっとみんなに会えるよ」


「え?」


 いやそれ、一番きついんですけど。

 アイリとミウはともかく、知らない女の子があと3人も……コミュ障の俺に死ねと……。

 ああ、死ねばいいのか。そうだった、そして転生すればいいんだよな。3人も女の子と話そうとしたら俺、きっと心臓止まっちゃうよ。でもああ、ついに俺の願いがかなうんだ……。


「なに一人でテンパってるのさ。落ち着いてよ」


「え? あ、ああ。はは、いや……5人もいるならさ、俺、行かなくてもいいんじゃないの?」


「そういうわけにはいかないんだ。ヒサルキの群れ、100匹以上いるみたいなんだ。全員で闘わないとデバッグできそうもない」

「100匹……はあ……しょうがないなあ。で、どこに行くんだよ。俺、アイリみたいな魔法使えないよ」

「ああ、あれは君も使えるよ。瞬間移動魔法だよね。ボクをタップすれば魔法陣出すから」


「そうなんだ。でもそうすると俺、変身しちゃうんじゃ?」

「変身すると同時に転送するから。じゃないと今回は危ないからね」

「そうなんだ。わかったよ」


 俺はスマホをタップした。

 ポン、ポンと音がするたびに寝巻のジャージが魔法少女のかわいい衣装に変っていった。


 ああ、また下半身がスースーする。その下半身を魔法陣が下から飲み込んでいった。



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