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第21話

「君、きのうも来てたよね」

 イケメンの池谷君がにっこり笑顔でそう言った。


「え? あ、ああ……まあ」

「きょうも来てくれてよかった。俺、心配してたんだよね。こないだから学校に来てなかったからさ」


 え? 俺のこと心配してた? マジか? なんで?


「俺、学級委員してるからさ」


 あ、ああやっぱり。そんなとこか。そりゃあ、不登校の引きこもりがクラスにいたら迷惑だよね。そうだよな、学級委員の責任にもなりかねないもんね。


 俺やっぱ、死んじゃったほうがいいんだろうな。そうすれば、誰にも迷惑かけないし。もともといないみたいなもんだからな。


 「転生なんてないんだよ」っていうアプリの声は聞こえてこなかった。ここで言うわけには行かないから当たり前だけど、なんだかちょっと寂しかった。


「ちょっと君、何が言いたいの?」

 アイリが後ろから口を出した。


「あ、いや、ほら、石狩くん、クラスになじめてないみたいだから、まずは話しかけてみないと始まらないかなーって思って……」


 ああ、こいつはこいつで優しいんだな。女の子の人気があるのも当然か。コミュ障の俺なんかに気にかけてくれるんだもんな。


「ユート君は私のパートナーだから大丈夫」


 え? なんですかそれ、大丈夫って? ってか、そんなこと言ったら変な誤解されちゃうと思うんですけど、アイリさん……。


「パ、パートナー?」


 ほら、池谷君びっくりしちゃったよ。


「そう。相棒ってこと」


 まあそりゃあカップルじゃありませんけどね。


「相棒!?」


 困っちゃってるよ、池谷君。


「そう、それ以上は言えないけどね」


 アイリさん、話がますますこんがらがっちゃいます……。


「あ、ああそうなんだ。なんか特別な関係なんだね」


 いや池谷君、どんな誤解しちゃったの?


「そうね、特別と言えば特別かな」


 アイリさん……ますます墓穴掘ってます……。


「でもそれならよかった。星置さんもちょっと近寄り難い感じだったけど、石狩君とそういう関係なら安心した」


 そういう関係ってなんですか? 池谷君……。


「それに俺、石狩君に言おうとしてたこともあったからさ」


「え?」

 なんだろう。まさかきのうのことがバレてるとか……。


「きのう俺、ここでちょっとおかしくなっちゃったでしょ?」


 うわ、やっぱそれか。


「なんか変な動きしちゃった後、倒れちゃったみたいで」


「ええ、確かに見てたけど。そう言えば、きょうは大丈夫なの?」

 アイリが聞いた。


「あ、ああ、もうぜんぜん大丈夫。でもさ、俺、意識としてた中でさ、すごくかわいい女の子が俺のこと助けてくれた記憶があるんだよね。幻覚だったのかもしれないけど、けっこうちゃんと覚えてるんだ」


 うわ、やばいって。


「どういうわけかその子、石狩君にちょっと似てるような気がしてね。不思議なこともあるなあって思って」


 わあああ! まじやばい!


「まあ、それだけだけどね。似てる気がするんだけどほら、どう見ても似てないしさ。変だよね。どう思う? 石狩君」


 いやそれ、俺に聞くなって……。


「ど、どうって聞かれても……」


「まあ、どう考えてもこのちんちくりんがかわいい魔……じゃなかった、かわいい女の子なわけないでしょ?」


 だから何か余計な表現が入ってます、アイリさん。


「そうだよね。俺、やっぱきのう、相当変になっちゃってたんだなあ。きのうは保健室で軽い熱中症じゃないかって言われたけどね。最近暑くなってきてるしね」


「そ、そうだよ。えーと……い、池谷くんだっけ?」

 俺は何とか言葉を絞り出した。目を見てはしゃべれなかったけど。


「あ! 俺の名前、憶えてくれてたんだ。うっれしいなあ」


 まあそれはきのうのことがあったからだけどね。他のクラスメートの名前は誰も知らないよ。アイリ以外は。


「ま、変なこと言っちゃって申し訳なかったけど、これからもよろしくね、石狩君。俺に免じてさ、これからも学校来てくれるとうれしいな」

「あ……はあ」


 やっぱいいやつなんだな。陰キャの俺なんかと違って。


「ああ、それは大丈夫。私がいるから!」


 後からアイリがまた口を出した。


「ああ、そうだったね。相棒だっけ? 君たち面白いね。それじゃまた!」

 そう言って池谷君は自分の席に戻って行った。


 そしてアイリは俺にまた、小さな付箋を手渡した。


「昼休み 校舎の屋上」


 今度はなんですか……まさかブートキャンプじゃないだろうな……俺、筋肉痛で死にそうなのに……。

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