表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/45

第19話

「それじゃあ私、家この近くだから帰るね」

「ええ。気を付けてね、ミウ」

「うん。ユート君、きょうはありがとね」


「え……」

 俺、またミウさんからお礼言われた! うれしい……魔法少女になってよかったかも……ああ……。


「そう思ってくれるとボクも君を誘ったかいがあるよ」


 黙れアプリ。俺の喜びに水差しやがって。誘ったんじゃなくて強要したんじゃないか。


「さて、私たちも帰りますかね」

 アイリがそう言い、ミウが向かったのとは反対側の公園の出口に向かって歩き始めた。


「え? あ……あの……魔法使うんじゃ?」

「ああ、ごめんね。あれは緊急事態の時しか使えないの」

「え……それじゃまさか」

「そう。徒歩で帰るしかないってこと」

「ええと……学校まで5、6キロはあるんじゃ……」

「たいした距離じゃないでしょ。魔法少女は体も鍛えないとね。ランニングで戻ろうか?」

「えええ……」


 引きこもり陰キャ男子に体を鍛えろと……それ、一番の無理ゲーなんですけど。それに、アイリさんと二人きりでランニング!? 俺にブートキャンプ強要しないで……。


「あはは、なんて顔してるの。ランニングは冗談だから。私一人なら走っちゃうけどね」


 はいはい、あなたは軍人さんですからね……なんてとても言えないけど。


「まあ、ちょうどいい機会だから、歩きながらバグデーモンのこと、改めて教えてあげる。私たち、パートナーになったわけだし」


「ぱ、ぱ、ぱあとなあ!?」


「なに驚いてるの。さっき約束してくれたじゃない」

「あ……はあ」


 生返事はした気はするけど、同意した記憶はないんだけど……まあ、どうせ俺、断る度胸はないけどね。

 それからアイリはバグデーモンのことを話し始めた。


 バグデーモンが出現し始めたのは、アイリが小学5年生で魔法少女になる少し前で、アプリもその頃に誕生したらしい。

 ちょうど生成AIの開発が加速しだした頃だから、プログラムの中で裏方として働くバックグラウンドプロセスの中に生まれた負の思考回路が人間の負のエネルギーを吸収して、怪異型の生成AI、バグデーモンになっちゃったんだって。


 ぜんぜん意味わかんないけど。


 まあ、コンピューターウイルスのおばけみたいなもんだってアイリは説明してくれた。

 だから、最初はウェブの中だけでアプリが対処してたんだけど、そのうちリアル世界に飛び出して妖怪みたいに人に取り憑き始めちゃったから、アプリもリアル世界に干渉して、魔法少女に闘ってもらうしかなくなったということみたいなんだ。


 迷惑な話だけどね。俺も巻き込まれてさ。


 で、アイリはその最初の頃から魔法少女を続けていて、バグデーモンの退治と平行して、連れ去られたと思われる親友の捜索も続けているってことだった。


「それでね、最近、バグデーモンが狂暴化して力も強くなってきている気がしてたんだけど……」

「あ……はい」


 さっきのやつなんて……怖い、思い出したくない。


「さっきのあいつで確信した。バグデーモンが深層学習を加速し始めたんだと思う」


「そうだね。それはボクも思ってた。くねくねにアイリが後れを取るなんてあり得なかったからね。以前なら瞬殺だったもん」

 アプリが言った。


「それにあいつ、八尺様を助けに来たでしょ?」

「そうだね、そんなこともあり得なかった」

「もしかしたら、あいつがバグデーモンの進化を後押しし始めたのかもしれないって思うんだけど」

「ああ、ボクもそれを疑ってる。やっかいだね」


 え? そんな危険な局面で俺、魔法少女になっちゃったの?


「そんな時にユート君が魔法少女になってくれたわけでしょ。ちんちくりんだけど。だから、もしかしたらユート君って、私たちの切り札なんじゃないかって思ってるの」


 なんか余計な一言が入っていませんでしたか? アイリさん。


「そうだね。ボクもなんで男の子のところにアクセスしたのか不思議だったんだ」

「ということでユート君、私たちの勝利は君の肩にかかってるかもしれないの。君が強いのもさっきの戦闘でわかったし。一緒に頑張ろうね」


 うわあ、俺にそんなプレッシャーかけないで……やっぱり転生した方が……。


「転生は、な・い・か・ら・ね!」

「もう! わかったよ! やればいいんだろ、アプリ!」


「なんだ、気合い入ってるんじゃない、ユート君。あ、でもアプリが時々言ってるけど、転生ってなんなの?」

「あ……いや、なんでもありません……あの、気にしないで……」

「あはは。ユート君、なんか面白いね。ちんちくりんだけど、私、男のあなたも嫌いじゃないかも」


「え……」


 違うプレッシャーかけないで……俺、心臓バクバクで死んじゃうかも……あ、それなら転生するからいいのか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ