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第15話

「うりゃああああああ!」


 遠のく意識の中でアイリの大声が聞こえた。と同時に俺は地面に放り投げられた。


「いってててて」

 と言おうと思ったが痛くないや。魔法少女になってるからかな。


「私をただの兵器オタだと思ってたら大間違い。ミリオタは格闘術だってお手の物なんだから」

 おいおいアイリさん、ミリオタって自分で言ってますよ。



 それにしても、うわあ……初めて見たけどスレンダーマンって言ったっけ? またまた気持ち悪いバグデーモンだなあ。


 まじスレンダーだけど背の高さ、俺の倍ぐらいあるよ。手足が異常に長いし。なんか黒いスーツを一応ピシッと着てるけど、どこで仕立てたんだよそれ。それに顔ないじゃん。白いのっぺらぼう!? よく見たら顔だけじゃなくて手も真っ白だよ。


 俺、あれに羽交い絞めにされてたの? うう、キモい……。


 それをアイリ、後ろ手に縛りあげちゃってる。さすが最強を自称するだけあるよな。俺、結局助けられちゃったじゃん。


 まあ、それが実力ってことだよな。さっきも助ける必要なかったって言われたし。俺なんかやっぱいらないよな。


「何勝手にすねてるのさ、ユート」

 あ、アプリまた心読みやがって。しょうがないだろ、俺、ただのひきこもり陰キャなんだから。


「だからさ、そうじゃないって。君の勇気は本物さ!」


 またかっこいいこと言われてもなあ……。


「ほう。格闘術とはなかなかですね。いやいや、私もだいぶいろいろ学習してきたのですが、実は魔法少女に遭遇しないように気を付けていましたので、物理攻撃を受けるのは初めてでしてね。この瞬間、しっかりラーニングさせていただいてますよ」


「ぐだぐだしゃべるな! ユート、今のうちにあの仏像でこいつをデバッグしちゃって!」


「ああ、あれはデバッグ装置なのですね。私たちを折伏して成仏させていただけるありがたい装置といったところですか。ああ、ありがたやありたがや? あれ? 舌が絡みましたね」


 くそー、怪異のくせに毘沙門天をバカにしやがったな。俺の数少ない拠り所なのに。


「オンベイシラマンダヤソワカ! 行け! 毘沙門天様!」


「マ゛」


 え? その声はちょっとまずいんじゃないの、毘沙門天様……そんなふうなセリフを俺、言っちゃったけどさ。まあ、特撮オタしか知らないからいいか。


 毘沙門天はものすごいスピードで三又の槍をスレンダーマンに突き刺した……けど、体が細いから一本しか刺さってないじゃん。


「ほう、これまた美味な法具ですな。仏教というのも学べば学ぶほど奥が深いものですからね。ディープラーニング冥利に尽きるというものですよ。われわれ生成AIにとってはね」

 あ、まずい。アプリが生成したものは吸収されちゃうんだっけ。

 槍はすうーっとスレンダーマンの体の中に吸い込まれていった。


「さて。今度は私の番ですかね」


 そう言ってスレンダーマンはねじられていた後ろ手をくるりとねじった。


「うわああああああ!」


 アイリの体が一回転して宙を舞ったが、ミウがほうきに乗って駆けつけて後ろに救い上げた。


「大丈夫、アイリ?」

「あ、うん。ごめんなさい」

「謝んなくていいよ。私もぜんぜん歯が立ちそうもないし」

「あいつ、相当手強いな」

「そうね。どうする?」


「ぽぽぽぽ。ぽぽ。ぽぽ。ぼぼぼっぼぼ!」


 毘沙門天がスレンダーマンに攻撃の手を向けたためか、トイレの壁にめり込んでピクピクしていた八尺様とかいう背の高い女も立ち上がって歩き始めた。ますますマズいじゃん、この状況。


「さあユート、今度こそ君の勇気を示すんだ!」


 アプリ……またかっこいいこと言って。まあでも、俺は死んでもいいしね。


「だからさ、転生なんてないからね。君は勝つしかないんだ!」


 はいはい、わかりましたよ。やればいいんでしょ。

 俺は仕方なく、杖を強く握り締めた。



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