第31話 合流
「さあ、車に乗ってください」
「素敵です」
有江が、船越川の巫女姿に見とれている。
「今のところ、野々村さんに異常はないようです。しかし、これ以上、足止めを食らっては準備もできません。早く行きましょう」
船越川に急かされ、常磐道は助手席に乗り込んだ。
有江と陽人は後部座席に座る。
救助班のバンを先導に、車は走り出した。
常磐道が、顛末を船越川に話している。
「素敵です」
有江が、また口にした。
「わたしは、この迷彩柄の帽子です」
常磐道は、正面を向いたまま振り返らない。
船越川は、運転しながら段取りを説明する。
「今日のうちに野々村さんのマンションに入り、明日を待ちます。ネットを接続しても、敵は素直に現れはしないでしょう。しかし、悪霊は野々村さんを狙っているはずです」
先導のバンは本部へと戻るために左折した。
「悪霊は、必ず現れます。私がエネルギー量を測定しますので、部長はエネルギー照射をお願いします。下根田さんは野々村さんの保護とデータの記録をお願いします。栃辺さんには、隙をみて姉乃さんを救出してもらいます」
まとめれば「悪霊の出方次第」の一言で済んでしまうが、船越川は想定されるパターンをできるだけ多く説明した。
「素敵です」
有江がそう答えたとき、車はマンション前の駐車場に入った。
陽はとうに高くなり、街を焦がし始めている。
駐車場に住人の車はない。
野々村以外の住人は、何かしらの理由を告げられ、一時的に退避させられている。電源・ガスの供給は、止められているはずだ。
暗いマンションのエントランスに、船越川を先頭に立ち入った。
階段で四階まで上がり、野々村の部屋のチャイムを鳴らす。
ガチャリと鍵を外す音が聞こえ、野々村が顔を出した。
「梶沢出版の船越川です。遅くなりました」
野々村は、銀色に輝く巫女姿を見ても驚かなかった。
彼も銀色の全身タイツを身に着けている。
昨日のうちに張り巡らせたセンサーは、物理的な形状と空間のエネルギー量とを照合し、肉体か霊体かを識別している。四人が室内に入った際にセンサーは反応しなかった。
まだ、霊体は入り込んでいない。
リビングの中央には、戦艦に取り付けられた機銃のような巨大なエネルギー照射装置が運び込まれていた。クローゼットに置かれた発電機のゴゴゴという低音が、リビングに響いている。
陽人が録画の準備をしている中、他の四人はソファーに座った。
「事故死することなく二十三日が過ぎれば、問題は解決するのですか」
野々村は、明日の目標を探っているようだ。
「わたしも、その部分は疑問に感じています。明日ではない日であっても、その霊が過去に戻り姉乃さんを攫えば、目的は達せられることになります。そこまで、二十三日にこだわる必要はないと思うのです」
有江も疑問を口にし、野々村に対してぺこりと頭を下げた。
「歴史が多重化するのですよね」
船越川は、常磐道に確認する。




