第30話 警察署
鎌田警察署の取調室に通された船越川は、部屋の中央に置かれた事務デスクを前に、パイプ椅子に座っている。
三時間は経過しているはずだが、誰も入って来ず、何も聞かれない。
銀色の巫女姿についても聞かれていない。
船越川は、ただ座っていた。
見張りの警官もなく、このまま逃げ出すこともできそうだが、真の手配者になっては、今後の影響が大きい。
ここは日本宗教調世会の影響力を持ってして、円満に警察を後にするべきだろう。
船越川は、大きくため息をつき、椅子に掛け直した。
廊下を歩く足音が聞こえてきた。
取調室の前で止まる。
ガチャリとノブが回り、ドアが開いた。
「おお、これは麗しい。船越川さん、お迎えにあがりましたよ」
銀色のタイツに身を包んだ神楽が立っていた。
廊下に立つ二名の警官が睨んでいる。
「さあ、仕事に戻りましょう。その素敵な巫女姿を警察に説明するのは、それは難儀しました」
神楽は笑っているが、自分の身なりを説明する方が難しいだろう。
さあさあと急かされて、船越川は立ち上がる。
「警察は常磐道くんの業務範囲なんですけどね……」とブツブツ言う神楽の後を船越川は着いていく。
朝早くから相談か何かしらの手続きに来ているのだろう。ロビーで順番待ちをする人々は、あまりにも目立つふたりを凝視している。
船越川は。警察署を出た。
午前八時になっていた。
「それじゃ戻るよ」と言う神楽に「一緒に行かないのですか」と船越川は尋ねる。
「こんな格好で外を歩けないよ。それに、ぼくには大切な仕事が残っているんでね。常磐道部長によろしく伝えておいてね」
そう答えると、神楽は車に乗り込み、走り去っていった。
神楽の言葉からすると、常磐道たちは無事なのだろうが、四時間ほどの時間と深夜から出動しての体力を奪われてしまった。
船越川は、建物脇に停めた車に乗り込む。
本部からのメッセージが、ナビに表示された。
「救助班は到着。電源消失のためゲート開閉できず。作業車を向かわせます」
時間は掛かったが、救出はできそうだ。
警察署を出て、東へと走る。
第一京浜を過ぎ、程なくして左折し、京急空港線を渡った。
センターラインのない狭い道の前方に、バンとユニック車が停まっている。
船越川は、ユニック車の後ろに付ける。
発電機にケーブルを接続している職員に状況を尋ねた。
電源を得たゲートが、ガラ、ガラと上がり始めた。
ボンネットを潰された車が見えてくる。
その後ろに三人の足が見えた。
常磐道たち三人の顔が見えるのを待って、船越川は言葉を発した。
「おはようございます」




