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恐怖はAIから始まる  作者: ことぶき神楽
第一章 禍の連鎖
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第3話 事故

 土曜日の朝、マンション前の道路が騒がしい。

 野々村の自宅マンションの住所がネット上に晒され、一週間前から反対派が集まっては抗議行動を起こしている。

 野々村は、カーテンを開けベランダに出た。

 三人の男と二人の女が路上に陣取っている。拡声器を使い「AIの暴走を許すな!」「すぐさまAIを消去せよ!」と喚き散らしている。それぞれがプラカードを手にしているが、四階の高さと角度からでは、辛うじて「AI開発を規制せよ!」の文字だけが読み取れる。

 不法侵入を咎められぬようマンションの敷地には入らず、路上に広がり騒ぎ続けている。メンバーの一人が乗り付けたであろう自転車は、向かいの塀に立て掛けてあった。


 その時、視界の左、南東の交差点から、朝の空気を切り裂くような急ブレーキ音が聞こえてきた。続けて、クラクション音がけたたましく鳴り続ける。

 接触事故でも起こしたのか、交差点に差し掛かった白色のセダンは、こちらを向いて停まっている。

 クラクションを無視し、ダンプトラックが逃げるように交差点から離れていく。荷台に緑色の幌を被せたダンプは、スピードを上げ、道幅いっぱいに走っている。


 ダンプは、活動家たちに向かっていた。

 路上で叫んでいた左端の女は迫りくるダンプに気が付き、プラカードを投げ捨て、マンション敷地に向かって走る。

 よろめきながらも走り、あと一歩というところで、女の姿は車体の下へと消えた。

 ダンプは、大きくバウンドする。

 野々村は、呆然と見続けた。


 ダンプは、立て掛けられた自転車を引っ掛け、なおも進む。塀を自転車で擦りながら、男女四人に向かって進んでいく。

 塀を削る音が、響き渡った。

 リーダー格の男は、塀に身を寄せかわそうとするが、僅かな隙間もなく、自転車と塀に挟まれる。

 拡声器を通さぬ悲鳴が聞こえてきた。

 続けて、どすん、どすん、と鈍い音が二度聞こえ、男女の姿が消えていく。

 逃げ道を失った右端の男は、道路とマンション敷地を仕切るフェンスによじ登り、難を逃れようとしている。

 しかし、男の身体は、ダンプのサイドミラーに払い除けられ、後輪のダブルタイヤに沈んでいった。


 ダンプが走った後には、赤い線が幾重にも引かれている。自転車のスポークで切り裂かれた身体、異常な方向に手足が折れ曲がる身体、頭部が潰れピクリとも動かぬ身体、それらが、五線譜に書かれた音符のように路上に残されていた。

 ダンプは走り続け、ゆるく右にカーブする先の電柱に正面から衝突した。根元から折れた電柱を押しながら塀に乗り上げ、ようやく停止する。

 電柱は、向かいの母屋を直撃し、青白い火花を散らした。

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